E4系が引退へ。2018年から更新開始。「2階建て新幹線」は歴史的使命を終えた

JR東日本の新幹線車両E4系が引退する方針が固まりました。代替となる2階建て新幹線は製造されず、100系登場以来30年以上続いてきた「2階建て新幹線」が、国内から姿を消す見込みです。

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世界最大の高速列車定員

E4系は、JR東日本が開発した車両で、1997年に東北新幹線でデビューしました。2001年には上越新幹線にも投入され、最新鋭の2階建て新幹線として活躍してきました。

16両編成の定員は1634人で、高速列車としては世界最大です。この収容力を活かし、首都圏の新幹線通勤需要に対応してきました。

共同通信によりますと、JR東日本は2018年度以降、E4系の更新を進め、E7系に置き換えていくことを決めたとのこと。最終的なE4系の引退時期はわかりませんが、新幹線の場合、置き換えが開始されると早いので、2020年頃には定期運用から外れる可能性もあります。

e4max

新幹線定期利用者も頭打ちで

E4系は、その収容力が特徴ですが、人が大勢乗れば車両の重量が大きくなるのは避けられません。そのため最高速度が240km/hと低いという欠点があり、近年の新幹線高速化の波に乗り遅れていました。高速化を進める東北新幹線からは、2012年に撤退しています。

JR東日本の関係者に聞いてみると、「近年の新幹線定期券利用者数は頭打ちで、都心回帰が始まっていることからも、収容力の高い新幹線を維持する必要がなくなってきた」とのこと。

JR東日本の2階建て新幹線はE1系が最初で、当初から通勤対応で導入されたのですが、その必要性も薄れてきたのでしょう。

最初の「2階建て」は食堂車とグリーン車

振り返ってみると、日本における2階建て新幹線は、東海道・山陽新幹線の100系に始まっています。登場は国鉄時代の1985年。世界初の2階建て高速列車でした。このときは16両編成中の2両、食堂車とグリーン車だけが2階建てでした。

佐藤芳彦『図解 TGVvs.新幹線』によりますと、このときの2階建ては、食堂車の通路と食事室を分離し、厨房を1階にすることで、レストランの座席数を増やすことが目的だったそうです。

グリーン車も快適な展望を提供することが目的で、座席数増を意図して作られたわけではありませんでした。

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フランスでもオール2階建て

一方、JR東日本が開発したE1系新幹線は、前述したように首都圏の通勤需要に対応したもので、100系の2階建てとは思想が異なりました。E1系は1991年に登場し、世界初のオール2階建て新幹線となっています。

同時期、フランスのTGVでもオール2階建て新幹線の構想は立てられていて、モックアップも制作されていたそうです。佐藤氏によると、TGVは技術的には先行していたものの、営業的に理解が得られずに実用化が遅れ、E1系がオール2階建て高速列車で「世界初」の冠を得たとのことです。

ちなみに、TGVの2階建て車両「TGV Duplex」は1995年に登場し、2012年まで製造されました。最高速度は320km/hで、いまも現役でフランスの大地を走っています。

2階建てTGV

3×3シートも不評

2階建て新幹線が日本から姿を消すことは、残念といえば残念です。

ただ、デッキから階段を使わなければ主客室内に入れない構造はバリアフリーではありませんし、少し不便でもありました。定員確保のために作られた、自由席の3×3の6列シートも不評でした。

社会環境の変化として、新幹線を使った長距離通勤が時代に合わなくなってきているのかもしれません。2階建て新幹線は歴史的使命を終えた、ということでしょうか。(鎌倉淳)

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