NTTドコモは、海外旅行者向け新しい定額通信サービスとして、「海外1dayパケ」を2013年12月2日から開始しました。これは、海外旅行先で1日980円からの定額料でパケット通信を利用でき、利用開始操作をしてから24時間通信できるのが特徴です。定額料は国・地域別で3種類に分かれ、980円、1,280円、1,580円のいずれかです。サービス開始時点で94の国・地域に対応しています。
ドコモの海外パケット定額サービスとしては、これまで「海外パケ・ホーダイ」がありました。海外パケ・ホーダイでは、1日単位の2段階定額制で1日最大2,980円という価格設定。海外1dayパケは1日最大1,580円ですから、海外パケ・ホーダイに比べて割安な価格設定が特徴です。
また、海外パケ・ホーダイでは、日本時間の0時から23時59分59秒を1日として計算しますが、海外1dayパケでは利用開始から24時間でカウントします。海外1dayパケのほうが、日本時間を気にせず利用できるというメリットがあります。
と、ここまで書くと、海外1dayパケが圧倒的に有利のように思えますが、詳細に内容を検討しますと、必ずしもそうではありません。海外1dayパケでは、24時間のデータ送信料が最大30MBに設定されていて、それを超えた場合、通信速度が送受信時最大16kbpsに制限されます。この速度制限は利用開始操作を再度行うことで解除可能ですが、新たに定額料が発生しますので、現実的な選択肢とはいえません。つまり、30MBという定量でどの程度役に立つか、がサービス選択のポイントになるといえます。
ドコモによりますと、「30MBの利用の目安」として、以下を挙げています。
・spモードメールで、2MBの写真を添付して20文字程度のテキストメールを送付(2回の利用で9.57MB)
・Google Mapで目的地までの経路を表示(5回の利用で4.015MB)
・facebookでチェックインして、2MBの写真を投稿(5回の利用で2.25MB)
・LINEのトークルームで20文字程度のコメントをやりとりする(30回の利用で0.6MB)
・明日の天気などをネットで検索する(20回の利用で12.2MB)
この「目安」を見ると、「30MBあれば十分そう」とお感じの方も多いでしょう。実際、ドコモとしては、海外パケ・ホーダイの利用者の多くが30MB以下の利用だったことから、海外1dayパケのサービスを開始したようです。
30MBでどのくらい使えるか?
ただ、上記の事例を見てみると、「ウェブ閲覧」がありません。海外でパケットをもっとも使うのは、「ウェブを使った調べもの」です。たとえば、現地でレストランに行こうとしたときに、ネットで口コミを調べるとします。このとき、インターネットで10ページくらいは見ないとうまく調べられないでしょう。一概にいえませんが、画像の含まれたスマホページを1ページ見るのにだいたい0.2~0.5MB程度のデータ量がかかるといわれます。スマホ向けに最適化されていないページなら、1ページで1MBを越えることもあります。ですので、「レストラン探し」にちょっと熱を入れて、数軒を調べたら、30MBにすぐ到達してしまうかもしれません。
また、言うまでもありませんが、動画を見たりしたら、ものの数分で30MBを超えてしまいます。日本のニュースを見ようとテレビ局をチェックしたら、あっという間に30MBに達してしまうでしょう。
筆者が実際に海外パケ・ホーダイを利用した経験でも、1,980円(24.4MB)以下に収まったことはありません。つまりウェブ閲覧をするつもりなら、30MBまでに制限されている海外1dayパケの使い勝手がいいとはいえません。むしろ、「いくら使っても2,980円」の海外パケ・ホーダイのほうが、安心感があるといえます。
しかし、1日2,980円はいかにも高額ですし、「海外でウェブ閲覧はしない」と決めれば、海外1dayパケは有用です。メールのやりとりくらいなら30MBあれば十分ですし、Google Mapも意外と軽いので、GPSを利用したナビゲーションを時折使う分にも役立ちます。ウェブ閲覧が必要なときは、マクドナルドなどにある公衆Wi-fiなどを利用すればいいでしょう。無料の公衆Wi-fiでのメール送受信には安全性で不安があるという人も、ウェブ閲覧だけなら気にしなくていいといえます。
現実には、海外1dayパケのライバルは、いわゆる「モバイルWi-Fiルーター」でしょう。モバイルwi-fiルーターのレンタルは1日1000円程度が相場。海外パケ・ホーダイでは価格的に勝負になりませんでしたが、海外1dayパケなら大きな価格差はなくなります。モバイルwi-fiルーターと海外1dayパケを比べると、モバイルwi-fiルーターのほうが、利用できるデータ量のアドバンテージは大きいですが、荷物が一つ増えることは大きなデメリットです。
海外1dayパケと海外パケ・ホーダイの使いこなしのまとめ
これらのサービスのうち、どれがお得かを検討すると、以下のようにまとめられるでしょう。
・海外でネットはあまり見ないけれど、メールやLINEのやりとりが必要→海外1dayパケ+現地無料wi-fi
・海外でネットもメールも存分に使いたいけれど、荷物が増えるのはイヤだ→海外パケ・ホーダイ
・海外でネットもメールも存分に使いたいし、荷物が増えてもいいから節約したい→モバイルwi-fiルーター
海外でネットもメールも存分に使いたいし、節約もしたいけれど荷物が増えるのはイヤだ、という人は、現地SIMを利用するのがいいと思いますが、長くなるので、ここでは説明しません。
ということで、ドコモの新サービス「海外1dayパケ」は、万能ではありませんが、旅行者の選択肢を増やすという意味では歓迎すべき新サービスといえるでしょう。
落とし穴としては、定額料金が1,580円の国についてです。海外1dayパケは、980円、1,280円、1,580円の3種類の定額制になっていて、国によって異なります。980円と1,280円に関しては、海外パケ・ホーダイに対して価格優位性が高いと思いますが、1,580円になると微妙です。
1,580円で海外1dayパケにするなら、「いざ」というときに2,980円で容量無制限に切替られる海外パケ・ホーダイのほうが使い勝手はいいかもしれません。欧米主要国は1,580円になっている国が多いので、出発前にご確認を。