「バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅」第9弾 鹿嶋~鬼怒川温泉を分析する。勝負を分けたタクシー代

カレー以外全部食べてる

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鉄道チームの検証

次に、鉄道チームの検証をしてみましょう。

冒頭、鉄道チームは、鹿島神宮駅で、9時17分発の列車を数分差で乗り逃します。仮に、これに乗れていたらどうなっていたでしょうか。

▽1日目
鹿島神宮駅09:17→09:42大洋駅→徒歩3km→10:20深作農園→徒歩3km→大洋駅13:05→14:06水戸駅14:31→14:45友部駅15:18→15:58下館駅16:04→17:22茂木駅

鹿島神宮駅を実際ルートより1時間半早く出発できますので、深作農園には10時20分頃に到着できていたでしょう。実際ルートで鹿島神宮駅を出る頃には、メロンスイーツを食べ始められていた、ということです。

ミッションの所要時間にもよりますが、順調にいけば、大洋駅を実際より約2時間早い列車に乗車することも可能でした。

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茂木に早く着いたら

その後、上記のように乗り継いで、茂木駅に着くのは17時22分着。実際ルートより約2時間早く到着できていたでしょう。

最速でツインリンクもてぎのミッションを終わらせれば、次のように乗り継いで、宇都宮まで行くこともできます。

▽1日目
茂木駅21:07→22:16下館駅22:21→22:43小山駅22:48→23:20宇都宮駅

要するに、鹿島神宮駅09時17分発の列車に乗り、深作農園とツインリンクもてぎのミッションに手こずらなければ、鉄道チームは1日目に宇都宮駅まで行くことができた、ということです。

宇都宮に泊まって、翌朝6時頃の列車に乗れば、西那須野駅に7時頃に到着でき、実際ルートをたどった場合、なかがわ水遊園に10時頃に着くことも可能です。その場合、もっと早くゴールすることができたかもしれません。

ただ、人間の体力には限界がありますので、1日目の23時すぎに宇都宮まで行き、翌朝6時発というのは、厳し過ぎる前提です。現実的に考えれば、茂木駅21時過ぎの列車に乗って宇都宮に向かうことすら体力的に難しかったと思われます。したがって、宇都宮泊の可能性については、これ以上、検証しないこととします。

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茂木まで歩いた意味

実際ルートに戻ります。鬼軍曹は、第1チェックポイント深作農園で大苦戦。メロンのメニューの人気1位を当てるというミッションでなかなか当てられず、10個のうち、カレー以外の9個を食べる羽目になりました。このミッションで2時間くらいは費やしたとみられます。

ただ、その後は順調に乗り継いで、第2チェックポイントのツインリンクもてぎでは、バスチームが手こずったモトレーサーのミッションを短時間でクリア。挽回します。

特筆すべきは、このミッション終了後、夜遅い時間帯にもかかわらず、茂木市街地のホテルまで6km以上を歩いたこと。一行の疲労度を考えると、バスチーム同様にホテルツインリンクに泊まるという判断もあり得たでしょうし、市街地に泊まるにしてもタクシーを使うという選択肢もあり得ました。

しかし、鬼軍曹は、歩いて市街地に向かい、タクシー代を温存します。このタクシー代が、2日目に大きな意味を持ちましたが、それについては後述します。

烏山ルート

さて、今回の対決旅で、勝敗を大きく左右したのは、鉄道チームのなかがわ水遊園へのアプローチです。

水遊園はどの駅からも遠い立地ですが、最も近いのが烏山線烏山駅の17.7km。次いで、東北本線西那須野駅の18.6kmです。大差ありませんが、烏山駅を使えば、往復で約2km、歩く距離を減らせます。


そのため、鬼軍曹は、当初、烏山駅からのアプローチを考えていたようです。仮に一行が「烏山ルート」を選択していたら、以下のようになっていました。

▽2日目
茂木駅05:23→06:31下館駅06:34→06:56小山駅07:02→07:29宇都宮駅08:08→08:59烏山駅→タクシー約5.5km、2,500円+徒歩約12km→12:00なかがわ水遊園

実際ルートの西那須野駅到着が08時20分。烏山ルートの烏山駅到着が08時59分なので、約40分遅くなります。なかがわ水遊園まで1km短かったとしても、到着は30分ほど遅れる計算なので、12時頃になっていたでしょう。

その後、仮に、1時間でミッションを終えたとして、烏山に折り返すと以下のようになります。

▽2日目
なかがわ水遊園13:00→タクシー約14km、5,000円+徒歩約3.5km→烏山駅15:38→16:19宝積寺駅16:23→16:35宇都宮駅17:13→17:48今市駅/下今市駅18:53→19:15鬼怒川温泉駅

烏山駅を発着する烏山線の運転本数は少なく、烏山駅発13時39分の次が15時38分です。烏山駅13時39分発に乗るのは困難なので、上記乗り継ぎは15時38分発に乗ったと仮定して、鬼怒川温泉駅到着は19時15分。となると、鉄道チームは敗北していたでしょう。

このように、烏山ルートで宇都宮に向かう場合、13時39分発の烏山線に乗り遅れたら2時間待ちという大きなリスクがあります。一方で、西那須野駅は東北本線ですので、毎時2本程度の列車本数があります。

乗り遅れリスクやトータルの所要時間を考えると、鬼軍曹が烏山ルートを選択せず、西那須野ルートを選んだのは、好判断といえそうです。

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西那須野で乗り遅れたら

実際ルートに戻ります。鬼軍曹一行は、なかがわ水遊園のミッションを終えて、タクシーで西那須野駅を目指します。タクシー代を途中で使い切り、最後は走って西那須野駅13時58分の列車に飛び乗りました。

鬼軍曹一行は、当初、西那須野駅14時32分発を狙っていたのですが、1本早い列車に乗れたわけです。仮に、この当初目標の列車に乗っていたら、どうなっていたでしょうか。

▽2日目
西那須野駅14:32→15:12宇都宮駅15:23→15:57今市駅/下今市駅16:15→16:48鬼怒川温泉駅

このように、宇都宮駅15時23分発の列車で、実際ルートに収斂します。実際ルートは宇都宮駅の待ち時間が長いためです。つまり、西那須野駅での最後の力走には、残念ながら大きな意味はありませんでした。

小さな意味があったとすれば、宇都宮で餃子を味わう時間を捻出できたことでしょうか。

下今市で乗り遅れたら

最後に、今市と下今市の乗り継ぎを見てみましょう。鬼軍曹一行は、15時57分にJR今市駅に到着。700m離れた下今市駅16時15分発の列車に乗ろうと急ぎます。例によってメンバーの腹具合が悪くなり、危うく乗り遅れそうになったのですが、間一髪で間に合いました。

この16時15分発の列車は、特急「リバティ会津129号」です。「バスVS鉄道対決旅」のルールにおいて、鉄道チームは普通・快速列車などの料金不要の列車しか乗れません。

「リバティ会津」は特急ですが、特例で、下今市~会津田島間を乗る場合に限り、料金が不要です。そのため、鉄道チームは利用可能ということです。バスチームにおける「高速バスの下道利用」に相当するルールと考えればいいでしょう。

話を戻して、仮に16時15分の列車に乗り遅れていた場合、次は16時47分発の「AIZUマウントエクスプレス3号」になります。

▽2日目
下今市駅16:47→17:19鬼怒川温泉駅

実際ルートより、約30分遅くなります。これでも、楯岩展望台まで迷わずに行ければ、18時までにはゴールできますので、バスチームに負けることはありません。(バスチームのバイパス十字路着は17時55分)。

実際の鬼軍曹一行は、楯岩展望台までの道のりで迷いましたので、下今市で乗り遅れて、鬼怒川温泉に17時19分に着いた場合、鉄道チームが敗北していた可能性もありますが、よほどの迷子でなければ、下今市で乗り遅れても、勝敗に影響はなかったでしょう。

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乗り継ぎ比較

ここで、ゴール直前の乗り継ぎを、バスチームと鉄道チームで、それぞれまとめて比較してみましょう。

()のアルファベットは到着時間帯です。「’」が着くと同時間帯の到着ながら、やや不利、という意味です。

■バスチーム
[氏家ルート]
栄町13:08→15:42バイパス十字路(SS)
[塩原ルート]
西那須野駅西口13:33→17:30鬼怒川温泉駅(B’)
[矢板ルート]
矢板駅16:30→17:55バイパス十字路(C)
矢板駅17:30→19:11バイパス十字路(D)

■鉄道チーム
[西那須野ルート]
西那須野13:33→16:19鬼怒川温泉(S)
西那須野13:58→16:48鬼怒川温泉(A)
西那須野14:32→16:48鬼怒川温泉(A)
西那須野14:32→17:19鬼怒川温泉(B)
西那須野15:26→18:10鬼怒川温泉(C’)
西那須野16:28→19:15鬼怒川温泉(D’)
西那須野17:00→19:15鬼怒川温泉(D’)
[烏山ルート]
烏山13:39→16:19鬼怒川温泉(S)
烏山15:38→19:15鬼怒川温泉(D’)

眺めてみると、バスチームが氏家ルートを採れば、文句なく勝利できたことがわかります。ただ、前出したように、氏家ルートの難易度は高く、実現は難しかったでしょう。

バスチームの氏家ルートを机上論として退け、鉄道チームが西那須野13時33分発に乗るのも難しいとみなすと、現実的な最速ゴールは鉄道チームが西那須野14時32分発までの列車に乗車した場合です(AまたはB。Bは下今市でリバティ乗り遅れ)。この場合、バスチームには勝ち目がありません。

バスチームが矢板ルートの最適解をたどったとして(C)、勝ち目が出てくるのは、鉄道チームが西那須野駅14時32分発に乗り遅れる場合(C’)か、烏山駅13時39分発に乗り遅れる場合(D’)です。

なかがわマラソン

鬼軍曹は烏山ルートを選択しなかったので、以後は西那須野ルートに限って検証を進めます。

ポイントとなったのは、西那須野駅~なかがわ水遊園間の往復です。距離は往復で37km。鉄道チームによるこの37kmを「なかがわマラソン」と呼んでみましょう。

なかがわマラソンに残されていたタクシー代は7,500円。VTRによると、タクシーに乗れたのは20km弱で、実際に歩いた距離は、往復で17.5kmに達します。

一般に徒歩を4km/hと考えて、17.5kmを歩くには休憩なしで4時間半はかかります。タクシーの乗車時間も含めると、37kmの往復には、少なくとも5時間はかかるでしょう。

実際の鬼軍曹一行は、08時20分に西那須野駅に到着し、13時58分の列車で出発していますので、この間5時間38分です。ミッションでは鮎を獲って焼いて食べるので、少なくとも40分程度は必要でしょう。となると、鉄道チームが実現した「なかがわマラソン」の所要時間は、常人が実現可能な範囲で最短といっていいでしょう。

実際には、西那須野駅を13時58分発ではなく、一本後の14時32分発でもゴール時刻は同じですが、それでも到着から出発まで6時間12分しかありません。これが鉄道チームの「勝利への持ち時間」で、難易度は高いです。

何が言いたいかというと、上表を見ると鉄道チームが有利に見えますが、(A)または(B)を実現するのは容易ではありません。つまり、「なかがわマラソン」において、驚異の早足で歩き通したことが、鉄道チームの勝因だったといえます。

さらにいえば、前夜にツインリンクから茂木市街地まで夜道を歩き、タクシー代を2日目まで温存したことが、「なかがわマラソン」で大きな効果を発揮しています。前夜にタクシーを使っていたら、6時間切りは不可能だったに違いありません。

6時間12分以内に往復できなければ、(C’)になってしまいます。鉄道チームがなかがわ水遊園のミッションに手こずったり、徒歩区間でへばったり、タクシー代が少なかったりしたら(C’)となり、僅差で敗退していた可能性が高いでしょう。

というよりは、制作側の想定は、バスチーム(C)、鉄道チーム(C’)で、18時前後に鬼怒川温泉に両チームが到着し、互角の勝負を演じることを期待していたような気がします。

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鉄道チームの勝因

両チームが最善手で乗り継いだ場合、勝利するのはバスチームなので、今回のお題は、本質的にはバスチームが有利だったといえます。とはいえ、バスチームの最善手は机上論に近く、これを以てバスチーム有利と表現するのには躊躇します。

が、鉄道チーム有利かというと、そうとも言えません。これまで書いてきたように、2日目の徒歩区間が非常に長く、3人のメンバーがトラブルなく乗り切るのは容易でないからです。

そう考えると、今回はどちらか一方のチームが有利だったとはいえず、ゲームバランスとしてはよくできていました。勝負を分けた伏線は両チームの初日夜にあり、バスチームがくつろぐなか、鉄道チームが夜更けの道を歩いたことが、終盤の差となって表れたといえそうです。

要は、撮影するスタッフも音を上げそうな鉄道チームの粘りが、勝利を呼び寄せたということです。

「ゆる軍曹」を封印

前回の鬼軍曹は、「ゆる軍曹」へのキャラ変を試みたところ、虎の子のタクシー代をフェリーにつぎ込んでしまい、勝負どころでタクシーを使えない事態に陥りました。「ゆる軍曹」は資金管理まで緩くなってしまい、敗退に終わってしまったわけです。

その反省があったのか、今回の鬼軍曹は、初日から爪に火をもとすようにタクシー代を節約し、資金管理がしっかりしていました。

その象徴は、前述したとおり、ツインリンクもてぎでのミッション終了後、ホテルまで歩いたことでしょう。ここでタクシー代を温存したことが、「なかがわマラソン」での6時間切りにつながり、勝利を引き寄せました。

ルイルイも最適解をたどって、熟練の乗り継ぎの技を見せました。しかし、今回に関しては、「ゆる」を封印した軍曹の執念が、それを上回ったといえそうです。(鎌倉淳)

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