「バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅」第7弾 京都~姫路を分析する。ルイルイがちょっと心配に

全部使って大丈夫ですか?

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御室仁和寺駅で乗車していたら

次に鉄道チームの検証をしてみましょう。最初に気になったのは、仁和寺最寄り駅の御室仁和寺駅から嵐電に乗らなかったことでしょうか。仮にこれに乗っていたらどうなっていたでしょうか。

▽1日目
御室仁和寺駅09:26→09:32帷子ノ辻駅09:34→09:46西院駅09:50→09:54桂駅09:58→10:29十三駅10:33→11:03宝塚駅11:18→12:14篠山口駅

このように、御室仁和寺駅から宝塚駅まで私鉄でつなげて、宝塚~篠山口間のみJRとすると、篠山口駅到着時刻は最速で12時14分となります。実際ルートよりちょうど1時間早く到着できます。

尼崎で寄り道しなければ

といっても、JRに乗車した鉄道チーム一行は、実際には尼崎駅で途中下車して食事をしています。もし、尼崎駅で降りなければ、以下のようにつながります。

▽1日目
仁和寺→徒歩1.3km→花園駅09:32→09:44京都駅10:00→10:35尼崎駅10:59→12:14篠山口駅

このように、こちらも12時14分着です。JRの「新快速」は速いですが、京都駅、尼崎駅の接続が悪いため、嵐電・阪急を利用するのと篠山口駅到着は同じになります。

尼崎駅での途中下車は、先を急ぐ軍曹らしからぬ行動ですが、尼崎はメンバーの渚の出身地ですし、JR線内ではカメラを回せないので映像が足りないという事情もあるのでしょう。要するに、演出上の理由と思われます。

もし、尼崎駅で降りずに、篠山口駅に12時14分に着いていたら、どうなるでしょうか。

▽1日目
仁和寺→徒歩1.3km→花園駅09:32→09:44京都駅10:00→10:35尼崎駅10:59→12:14篠山口駅→徒歩4.7km+タクシー5.6km、2,090円→母子小学校前→徒歩2.2km→永沢寺*→タクシー13.7km、5,770円→三田駅17:23→17:43有馬口駅17:48→17:52有馬温泉駅→徒歩0.3km→有馬温泉向陽閣*

このように、余裕を持って有馬温泉向陽閣に到着できます。

そこまで早く有馬温泉に着く必要はない、と判断すれば、三田駅の手前でタクシーを降りて節約する可能性もあります。有馬温泉向陽閣に19時に着くには、三田駅を17時53分の列車に乗れば十分間に合いますので、その情報を得て三田駅の手前でタクシーを降りて少し歩くと、数百円のタクシー代の節約が可能です。それがあれば、最終盤で多少の効果を発揮した可能性はあるでしょう。

まとめると、尼崎の寄り道がなければ、数百円のタクシー代節約が可能だったといえます。

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1日目に入浴できなかったら

尼崎での寄り道が、鉄道チームに重大な影響を及ぼす可能性があったとすれば、1日目に有馬温泉向陽閣での入浴ミッションをこなせなかった場合でしょう。

その場合、2日目早朝に入浴してからの出発となりますので、行動が1時間半ほど遅くなります。たとえば以下のようになります。

▽2日目
有馬温泉向陽閣→徒歩0.3km→有馬温泉駅07:40→08:15鈴蘭台駅08:23→08:44緑が丘駅→徒歩8.1km→ネスタリゾート神戸*→徒歩8.1km→緑が丘駅13:30→14:00粟生駅14:07→14:31加古川駅14:38→14:47姫路駅14:52→15:00砥堀→タクシー5.5km、2,090円+徒歩1.3km→明勝寺*→徒歩5.7km→仁豊野駅18:18→18:33姫路駅→徒歩1.0km→姫路城

上記のルートで列車本数が少ないのは神鉄粟生線で、約1時間間隔なので、1時間単位で遅れが波及していくことになります。

したがって、有馬温泉の入浴ミッションが2日目になった場合、姫路城到着は1時間ないし2時間遅くなり、早くてゴールは18時50分頃になります。その場合、敗退していた可能性が高そうです。

つまり、1日目に有馬温泉ミッションを達成できたことは、鉄道チームにとっては大きな意味がありました。

永沢寺へのアプローチ

さかのぼって、永沢寺へのアプローチも見ておきます。一行は、往路に篠山口、復路に三田駅を利用。篠山口駅~小枕と、母子小学校~永沢寺は歩くという念の入れ方でした。

ここで浮かしたタクシー代が、2日目の明勝寺のアプローチに活きてきますので、この節約は大きな意味を持ったと言えます。一方で、実際ルートで1日目に有馬温泉の入浴を済ませるためには、徒歩を交えてのんびり篠山口へ戻っている時間はありません。つまり、永沢寺~三田駅のタクシー利用も不可欠です。

そう考えると、必要最小限のタクシー利用で最大限の効果を発揮したと言えそうです。

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北条鉄道か播但線か

2日目、鉄道チームは有馬温泉駅から神戸電鉄で緑が丘駅に至り、ネスタリゾート神戸を往復。ジップラインミッションも1度で決め、最速で明勝寺へ向かいます。

明勝寺へのアクセスでは、北条鉄道の播磨下里駅からか、JR播但線の砥堀駅からかで悩み、播但線経由を選択します。

播但線の最寄り駅は、砥堀でなく仁豊野駅であることに後で気づきますが、実は北条鉄道も、播磨下里駅よりも長駅が近いです。ということで、この両駅から明勝寺への距離を比べてみると、長駅~明勝寺が約8.7km、仁豊野駅~明勝寺が約5.7km。その差は3.0kmです。到着時刻を比べてみると、次のようになります。

▽2日目
緑が丘駅12:30→13:00粟生駅13:07→13:31加古川駅13:38→13:47姫路駅13:52→14:04仁豊野駅

▽2日目
緑が丘駅12:30→13:00粟生駅13:09→13:29長駅

到着時刻は、長駅のほうが仁豊野駅より34分早いです。駅と寺の距離の差は3kmなので、どちらが早いと断言するほどの有意差はありません。となれば、単純に歩く距離が短い播但線ルートを採るのが正しいといえます。映像的には、北条鉄道のほうが面白かったとは思いますが。

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最初から仁豊野駅に行っていたら

鉄道チーム一行は播但線ルートを選択し、タクシーを呼ぶために野里駅でいったん下車、次の列車で砥堀駅に行き、タクシーに乗車するという手間を掛けています。しかし、仁豊野駅ならば有人駅でタクシーも見つけやすいことから、こうした手間はかからなかったはずです。すなわち、次のような乗り継ぎが可能でした。

▽2日目
緑が丘駅12:30→13:00粟生駅13:07→13:31加古川駅13:38→13:47姫路駅13:52→14:04仁豊野駅→タクシー+徒歩5.7km、概算2,090円→明勝寺*→徒歩5.7km→仁豊野駅16:37→16:51姫路駅→徒歩1.0km→姫路城

実際ルートよりも1本速い電車で仁豊野駅に到着し、徒歩距離が1km減るので、明勝寺には実際ルートより約40分早く到着することができたでしょう。そのぶん帰りの仁豊野から姫路に向かうときも、40分早い出発の列車に乗れていたはずです。

明勝寺の護摩行ミッションは、くじ引きにより時間が変わるという運に左右されるものでした。一行は25分の祈祷をしましたが、最短時間の10分で済ませれば、タクシーの効果とあわせて、仁豊野発16時37分発に乗れていたでしょう。この場合、姫路駅到着が16時51分となり、姫路城に急いで向かうと、ゴールは17時頃になります。これが鉄道チームの最速解のようです。

最速解を比べると

調べた限りでは、バスチームが最善手を尽くした場合、姫路城大手門前着が16時58分、鉄道チームは姫路駅16時51分になりそうです。姫路城から姫路駅までは1kmありますので、急いでも10分はかかります。大手前門前バス停からは100mほどです。つまり、お互い最善手を尽くした場合は、タッチの差でバスチームの勝利となっていたでしょう。

ただ、バスは鉄道に比べ遅延が多いので、本質的にバスが有利とまではいえません。バスチームは、明勝寺の祈祷ミッションを10分で終えて、バスが定刻で到着すれば17時に到着可能というだけなので、達成要件は厳しいです。護摩行ミッションの偶然性も勘案すると、設定としては互角だったと思えます。

ルート探しの難しさを検討してみると、バスチームは、ルート選択に悩むような分岐点はなく、ほぼ一本道です。初日のタクシーの使いどころで判断が必要にみえますが、亀岡でタクシー代を温存しても、永沢寺から三田で使わざるを得ない設定になっていますので、どちらの選択でも結果は同じです。

鉄道チームも、やはりルートは一本道で、ショートカットなどのアイデアは必要ありませんでした。強いていえば、北条鉄道と播但線の選択に悩む程度ですが、列車本数が多いエリアなので、大回りしても徒歩距離を減らすほうが有利なのは明白でした。

気になるのは尼崎の途中下車で、これがなければ1日目にタクシー代の利用を少し減らせる可能性があり、2日目の明勝寺への往復に活かせました。それがあれば、鉄道チームがやや有利になります。

となると、尼崎下車は、演出上の理由に加え、ゲームバランスを整える目的があったのかもしれません。そのためには当初予定していた尼崎11時29分に乗るのが本来ちょうどよく、乗り遅れてしまったのは誤算とみることもできます。鬼軍曹一行は、それを有馬温泉の小走りで克服しました。

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まとめてみると

まとめてみると、今回は4カ所のチェックポイントでの配置から、両チームともルート選択の余地が乏しかったといえます。有馬温泉とネスタリゾートの営業時間の制約もあって、ルートだけでなく、乗車可能性のある列車・バスのバリエーションにも乏しかったです。

新型コロナウイルス感染症が広まるなか、大都市近郊でのロケを行うにあたり、行動範囲や時間帯を狭めるため綿密にルート設定をしたのでしょう。そのぶん、作り込まれている印象もありました。

身も蓋もない言い方をすれば、バスチームが最終局面で八重畑発16時36分のバスに乗れるかどうかの一点に勝敗がかかっていた、ともいえそうです。それは言い過ぎとしても、このバスに乗れるかが非常に重要で、バスチームにしてみると、そこで発車時刻を間違えたルイルイの勘違いが致命傷となりました。

心配なルイルイ

ルイルイは、今回、時刻表を書き写し間違えたり、夜間の歩行中に溝に転落したりと、らしからぬミスが目立ちました。記憶違いや書き間違いは年齢の問題もあるでしょうが、秋口からの「対決旅」「陣取り合戦」とロケが多く、疲労がたまっているのではないか、と心配になるほどです。

お疲れのルイルイにうまく突っ込んでいたのがちゅうえいで、ワンマンチームになりがちなバスチームの雰囲気を和らげました。浅田舞はアスリートらしい体力を活かした好アシストが光りました。

一方の鉄道チームでは田村亮がさすがの存在感を見せつけ、渚も職人芸で番組を盛り上げました。全体として、リーダー二人と各メンバーが、それぞれの役割を果たしていて、どちらのチームも安心して見ていられたと思います。

これで鉄道チームが4勝3敗と勝ち越しました。ルイルイは年末年始にしっかり静養していただいて、万全な体調でのリベンジに期待したいところです。(鎌倉淳)

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