鉄道チームの検証
「ローカル路線バスVSローカル鉄道 乗り継ぎ対決旅」の第12弾、つづいては鉄道チームの検証です。
先に示した、鉄道チームの実際ルートを再掲しておきます。
▽1日目
道後温泉08:45→09:12JR松山駅前/松山駅09:36→10:40波止浜→徒歩2km→糸山サイクルターミナル→自転車6.7km→道の駅よしうみ☆→自転車30.4km→17:10しまなみロマン☆(2,000円獲得、18:20ミッション開始)→瀬戸田港19:00→船2,520円→19:25三原港→三原駅20:05→20:09糸崎20:12→20:44福山駅→徒歩2.4km→22:10ホテルルートイン福山
▽2日目
ホテルルートイン福山→徒歩10.4km→鴎風亭11:30→徒歩12.8km→福山駅14:31→15:31岡山駅15:42→16:05児島駅→徒歩3.5km→鷲羽山ハイランド(時間切れ未着)
門限に間に合ったら
もっとも気になるのは、鷲羽山ハイランドに、門限の17時までに着けていたらどうなっていたか、ということでしょう。ミッションの所要時間にもよりますが、以下のようになります。
▽ミッション30分
鷲羽山ハイランド17:30→徒歩3.5km→18:30児島駅18:40→19:03岡山駅19:11→19:15城下→徒歩0.5km→19:20後楽園
▽ミッション60分
鷲羽山ハイランド18:00→徒歩3.5km→19:00児島駅19:11→19:33岡山駅19:47→19:51城下→徒歩0.5km→20:00後楽園
概算で、ゴール時刻は19時20分か20時頃です。ミッションを30分で済ませれば勝利できていましたが、60分かけると太川チームに敗れていたでしょう。
鉄道チームは、最後の門限に間に合っていれば、勝利できていた可能性があったわけです。
しまなみ海道を歩いていたら
ということで、第4チェックポイントまでもう少し早く歩けていれば、という話に帰結してしまうのですが、最後の3.5kmを1時間で歩き切れなかったのは、2日間で蓄積した疲労が影響したのは間違いありません。それこそが検証ポイントなので、話を1日目に戻しましょう。
最初、松山駅から予讃線で波止浜に到着した鬼軍曹一行は、しまなみ海道で自転車を借りるか悩みます。借りると9,300円で、タクシー代をほぼ使い尽くしてしまうからです。しかし、今回、特別に設定された、第2チェックポイントの「先着ボーナス」を目当てに自転車を借りることを決断しました。
もし、ここで自転車を借りずに、第1チェックポイントまで歩いていたら、どうなっていたでしょうか。第1チェックポイントから第2チェックポイントでタクシー代を使うと仮定すると、以下のような乗り継ぎになります。
▽1日目
松山駅09:36→10:40波止浜 →徒歩8.3km→12:40道の駅よしうみ14:10→タクシー19.9km、6,600円→道の駅多々羅しまなみ公園→徒歩8.5km→16:40しまなみロマン(2,000円獲得)→瀬戸田港19:00→船2,520円→19:25三原港→三原駅20:05→20:09糸崎20:12→20:44福山駅→徒歩2.4km→22:10ホテルルートイン福山
波止浜駅から、バスチーム同様に歩いて来島海峡を渡ります。第1チェックポイントの道の駅よしうみに到着する時刻はバスチームとほぼ同じになるでしょう。ミッションを1時間半で済ませたとして、タクシーに乗車し、大三島の多々羅しまなみ公園で降ります。そこから生口島の第2チェックポイントまで歩きます。
この場合、タクシー代が概算6,600円(高速代含む)で、時間料金を考慮しても7,000円あれば足りそうです。結果として、タクシー代を3,000円程度残した上で、第2チェックポイントに先着して2,000円を獲得することができたでしょう。
タクシーを上手に使えたか
では、こうしたタクシーの使い方が現実にできるのでしょうか。
来島海峡を歩くと決断をしたならば、その後のタクシーの捕まえやすさを考えると、道の駅よしうみでタクシーに乗車する判断は合理的です。また、生口島から本州へ渡る船代の情報を道の駅よしうみで得られれば、3,000円程度を残してタクシーを降りなければならないことも計算できます。
となると、タクシー代の予算は7,000円。この金額では生口島まで届かないので、多々羅大橋手前で降りざるを得ません。つまり、「道の海よしうみで乗って、道の駅多々羅で降りる」という仮定は、しまなみ海道を徒歩とタクシーで乗り切るなら、現実にそうせざるを得なくなるだろう、という予想としてルートを示しています。
5,000円残っていたら
ボーナスとあわせて5,000円あれば、瀬戸田から三原に船で渡っても、約2,500円が残ります。こうなると、2日目はぐんと楽になります。たとえば、以下のように乗り継げます。
▽2日目
ホテルルートイン福山→10.4km→鴎風亭11:30→タクシー8km+徒歩5km→福山駅13:11→14:11岡山駅14:42→15:04児島駅→徒歩3.5km→16:00鷲羽山ハイランド17:00→徒歩3.5km→18:00児島駅18:10→18:32岡山駅
鞆の浦から福山駅に向かう際にタクシー代を使えば、鷲羽山ハイランドに16時頃に着けたでしょう。第4チェックポイントのミッションを1時間で終えたとして、岡山駅に18時半頃に到着。19時頃にはゴールできていたでしょうから、19時40分ゴールのバスチームを押さえて勝利できていました。
これがしまなみ海道でタクシーを利用した場合の標準解であるように感じられます。鉄道チームが標準解でゴールした場合、バスチームの最適解に勝利しますが、理想解(18時50分)に敗退します。
福山駅でのレンタサイクル
これよりさらに早くゴールする方法もありました。福山駅でレンタサイクルを借りる方法です。
福山市では、福山駅南有料自転車駐車場でレンタサイクルを実施しています。利用時間は6時~23時と長く、貸出料金は150円と格安です。しまなみ海道をタクシーと徒歩で乗り切り、福山駅周辺に宿泊し、2日目に駅でレンタサイクルを借りれば、以下のような乗り継ぎとなっていたでしょう。
▽2日目
福山駅09:00→自転車10.4km、450円→10:00鴎風亭11:00→自転車10.4km→福山駅12:07→13:06岡山駅13:12→13:34児島駅→タクシー3.5km、1,360円→13:50鷲羽山ハイランド14:50→タクシー3.5km、1,360円→15:05児島駅15:10→15:32岡山駅
最後、児島駅までタクシー代が足りるかという懸念はあるものの、足りていれば岡山駅に15時半すぎに到着。16時頃にはゴールできていたでしょう。バスチームに3時間半の差をつけて圧勝していました。鴎風亭のミッションを早めに切り上げて、自転車で急げば、あと30分早く着くことも可能だったかもしれません。
沢航路+しおまち海道
福山駅のレンタサイクルは、福山駅から鞆の浦を経て尾道方面に至るサイクリングロード「しおまち海道」向けのものです。上述したように、1台1日150円という破格値で、営業時間も長く、今回の対決旅でジョーカー的な存在でした。
実際ルートで、鬼軍曹一行が福山駅に着いたとき残金は180円でしたので、これを3人で利用することはできませんでした。ただ、利用できる可能性はありました。瀬戸田から三原への航路を使わずに、沢航路を使うという方法です。
▽1日目
しまなみロマン→徒歩1.7km→沢港18:50→船1,830円→19:22須波港→徒歩1.2km→須波駅19:43→19:57糸崎駅20:12→20:44福山駅
沢~須波航路の船賃は1人620円で、瀬戸田~三原航路の840円より220円安いです。これにより、福山駅到着時刻でチーム合計の残金は840円となり、レンタサイクル代450円をまかなえます。すなわち、2日目は以下のような乗り継ぎとなります。
▽2日目
福山駅09:00→自転車10.4km、450円→10:00鴎風亭11:00→自転車10.4km→12:00福山駅12:07→13:06岡山駅13:12→13:34児島駅→徒歩3.5km→14:30鷲羽山ハイランド15:30→徒歩3.5km→16:30児島駅16:40→17:03岡山駅
この場合、後楽園に17時30分頃にゴールできていたでしょう。バスチームに約2時間の差を付けることができました。
悪天候という不運
このルートを採るには、1日目、瀬戸田港から1.7km離れた沢港を18時40分に出る最終便に乗らなければならないので、第2チェックポイントのミッションを18時頃までに終えなければなりません。
鉄道チームは17時頃にしまなみロマンに到着していますので、18時出発は可能にも見えます。ただ、実際には、雨で衣装が濡れたことによる着替えや化粧直しなどが生じていたようなので、それを勘案すれば不可能だったようにも感じられます。
つまり、現実に即していえば、悪天候の影響により、しまなみ海道で自転車を借りた上で、しおまち海道でも自転車を借りる術はなかった、ということになります。晴れていれば実現可能だっただけに、サイクリング中の悪天候は、鉄道チームにとって不運でした。
鉄道チーム有利
まとめてみると、今回、バスチームの最速ゴールは18時50分頃でした。鉄道チームがこれより早くゴールする方法はいくつもあり、鉄道チームが本質的に有利な設定だったといえます。
そもそも、バスチームが最速の理想解でゴールするのは難しく、実際にゴールした19時40分が現実的な最適解であることは、先述したとおりです。
鉄道チームは、鷲羽山ハイランドで17時の門限に間に合えば、ミッションを手早く済ませて19時20分頃にゴールすることが可能で、勝利できていました。そう考えても、やはり鉄道チームが有利です。
運に見放され
とはいえ、鉄道チームがしまなみ海道でレンタサイクルを選択してしまうと、資金が枯渇し、2日目、福山駅でレンタサイクルを使わない限り、長距離の徒歩を避ける方法はありません。疲労を考慮すれば、鷲羽山17時の門限に間に合わせること自体が容易でなかったとも解釈できます。
鞆の浦でのミッションをもう少し早く終わらせれば、あと30分早く児島駅に着くことも可能でした。しかし、あれだけ歩くのであれば、食事の時間は必要だったでしょう。
後付けの机上論としていえば、自転車を使う場所を間違えたわけで、使うのはしまなみ海道ではなかったのです。しかし、「しまなみ海道でレンタサイクルを使っても良い」と制作側から言われて、鬼軍曹がタレントとして、それを使わない判断をするのは難しいだろう、という気もします。
雨が降らなければ、沢~須波航路に乗れるチャンスもありましたので、天候も鉄道チームに不利に働きました。福山~鞆の浦間では、宿送迎を試みたものの、不発に終わっています。宿送迎の成否は、今回の勝敗の隠れた分かれ目だったような気もします。全体として鉄道チームは、運に見放されていた印象も受けました。
ということで、今回は、これまでのバスVS鉄道対決旅とは、少し趣向が変わった設定になっていました。この企画では、鉄道チームはいつも選択肢が少なく歩きすぎなので、今回のようにレンタサイクルOKとすればマンネリも打破でき、いい試みではなかったか、と思います。(鎌倉淳)