「バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅」第10弾 姫路城~天橋立を分析する。蕎麦屋の位置が絶妙で

これ、新春スペシャルですよね

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鉄道チームの検証

「ローカル路線バスVSローカル鉄道 乗り継ぎ対決旅」の第10弾、つづいては鉄道チームの検証です。

まず、鉄道チーム一行は、姫路城から姫路駅に向かわずに、京口駅へ向かいました。距離的には姫路駅も京口駅も大差ありませんので、よりチェックポイントに近い京口駅を選んだことは適切な判断です。

一行は早足で京口駅に到着したものの、列車は30分後までありませんでした。京口駅を通過する列車がなかったか調べてみると、一行が利用した播但線に快速列車はなく、ダイヤは以下のようになっています。

姫路08:39→京口08:44→08:56仁豊野
姫路09:22→京口09:26→09:35仁豊野

姫路駅に向かっていたとして、一行が08時39分発に乗れていた可能性は高くありません。となると、姫路城スタート直後の鉄道チームは、姫路駅、京口駅のどちらに向かっても結果は同じで、鬼軍曹にミスはありませんでした。

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仁豊野駅で乗れていたら

姫路セントラルパークでのミッションを終了後、鉄道チームは小走りで仁豊野駅に向かい、12時37分発の列車を目指します。クロちゃんの足取りが重く、途中で断念しましたが、急げば間に合っていたタイミングでした。仮に乗れていたらどうなっていたでしょうか。

▽1日目
仁豊野12:37→12:51福崎

このように、12時37分発は3駅先の福崎までしか行かず、福崎で実際ルートに収斂します。

これより1本早い仁豊野12時07分発に乗れば和田山に先着できますが、それを実現するには、仁豊野駅から往復計11kmの徒歩と撮影ミッションを2時間半で完遂しなければならず、まず不可能でしょう。

播但線は寺前を境に列車本数が激減するという事情があり、仁豊野12時07分発に乗れなければ、14時07分発に乗っても寺前以北は同じ列車になります。つまり、姫路セントラルパークから仁豊野駅に戻る際に先を急ぐ必要はありませんでした。

鬼軍曹にミスがあったとすれば、寺前以北の時刻を先に調べておかなかったことでしょうか。それができていれば、のんびり歩いて体力を温存できました。ただし、この時点で走っても歩いても、最終的な結果に影響はありませんでしたが。

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城崎温泉で乗り遅れたら

実際ルートに戻ります。鉄道チーム一行は、1日目にタクシーを使わず19時13分に城崎温泉に到着しました。しかし、第3チェックポイントの御所の湯は、翌朝06時30分のミッション開始と知らされます。宿を探したところ、かにシーズンのためかどこも満室で、やむなく豊岡に戻って宿泊しました。

翌朝のミッション開始時刻には豊岡から始発列車で間に合いますので、城崎に泊まれなかったことの影響はありません。

2日目、城崎温泉駅から第4チェックポイントのある小天橋方面へは、豊岡駅で乗り換えます。城崎温泉07時06分発に乗れば、豊岡駅で好接続です。鬼軍曹はその乗り継ぎを確認した上で御所の湯のミッションに臨み、予定の列車に間に合いました。

仮に、07時06分発に乗り遅れた場合は、以下のようになります。

▽2日目
城崎温泉07:58→08:09豊岡09:48→10:11小天橋

小天橋到着は、実際ルートより2時間以上遅くなります。当然その後も2時間後ろ倒しになりますので、鉄道チームは大差で敗れてしまったことでしょう。

つまり、鬼軍曹が城崎温泉駅で小天橋への乗り継ぎを確認したことはファインプレーといえます。

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上夜久野ルート

今回のチェックポイントで、鉄道チームのアプローチが最も難しかったのが、5つめの「そば一」でしょう。どの鉄道駅からも20km前後離れているという絶妙な位置で、1万円の予算を満額投入しても、タクシーだけでは往復できません。

まず、鬼軍曹は、当初、もっとも近い駅である上夜久野からのアクセスを企図したものの、撤回して豊岡駅でタクシーに乗りました。もし、当初企図したとおり、上夜久野経由でアプローチしていたらどうなっていたでしょうか。

▽2日目
小天橋11:12→11:36豊岡11:58→12:47上夜久野→タクシー17.5km→13:20頃そば一*

「そば一」への距離は、豊岡駅から約20km、上夜久野駅から約17.5kmです。つまり、上夜久野ルートならタクシーの乗車距離を2.5km減らせます。一方で、豊岡~上夜久野間は列車で50分。豊岡駅での列車待ち時間も含めれば、豊岡から直行するより約45分到着が遅くなる計算です。

2.5kmを歩くのに30分もかかりませんので、45分到着が遅くなるなら割にあいません。くわえて、豊岡駅ならタクシーを捕まえるのは容易ですが、上夜久野駅前にはタクシーがいない可能性もあり、呼ぶなら迎車料金と時間がかかります。

体力消耗を小さくできるという効果はあるものの、それを勘案しても上夜久野ルートに優位性はなさそうで、選択しなかった鬼軍曹の判断は適切です。

小天橋ルート

もう一つの可能性として、小天橋駅から直接「そば一」を目指すことはできなかったのでしょうか。以下のようになります。

▽2日目
小天橋駅11:15→タクシー25km→11:55頃そば一*

小天橋駅到着直後にタクシーを捕まえられたと仮定して、「そば一」に着くのは12時前。実際ルートより40分ほど早く着けそうですが、そのぶんタクシーの乗車距離は5km伸びてしまいます。タクシーに5km余計に乗って、40分しか短縮できないのであれば、費用対効果は薄いと言わざるをえません。

「そば一」までのタクシー代が増えると、その後のタクシー代に影響します。となると、小天橋駅から直接「そば一」に向かうアプローチも、やはり優れているとはいえません。

トータルで考えて、豊岡駅から「そば一」へ直接アプローチするより優れたルートは見当たらず、鬼軍曹の判断は的確だったといえそうです。

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与謝野で早い列車に乗れたら

気になる点があるとすれば、「そば一」からゴール天橋立へのアプローチでしょう。鬼軍曹は、当初与謝野駅16時11分発の列車に乗ることを目指し、タクシーまで手配しますが、途中で間に合わないことに気付きます。

仮に与謝野16時11分発に乗れていたら、以下のようにゴールできます。

▽2日目
与謝野16:11→16:19天橋立→徒歩3.7km→天橋立ケーブル下

ゴール時刻は早くて16時50分頃でしょうか。この時刻にゴールできていたら、バスチームが最善を尽くしても間に合わず、鉄道チームの勝利となっていたに違いありません。

タクシーにすぐ乗れたら

実際ルートでは、「そば一」から与謝野駅まで3時間10分を要しています。与謝野16時11分発の列車に乗るなら、「そば一」を12時55分頃には出なければ間に合わない計算です。鉄道チームが「そば一」に到着したのが12時35分なら、20分でミッションを完了させなければならず、ほぼ不可能だったでしょう。

ただ、バスチームは30分程度でミッションを完了していますので、運がよければ30分程度でクリアすることは可能といえます。

また、鉄道チームは小天橋から豊岡に到着後、タクシーに乗るまで少し時間がかかったようですので、その時間を短縮する余地はあったでしょう。そうした仮定に基づけば、以下のような乗り継ぎが成立しそうです。

▽2日目
豊岡→タクシー+徒歩20km→12:25頃 そば一*12:55頃→タクシー+徒歩23.6km→16:05頃 与謝野16:11→16:19天橋立→徒歩3.7km→16:50頃 天橋立ケーブル下

豊岡駅でタクシーに飛び乗り、蕎麦ミッションを奇跡のスピードでクリアできれば、太川チームの実際ルートよりも早く着き、勝利できていたということです。とはいえ、これは「理想解」にすぎず、実現するのは難しいでしょう。

実際に鉄道チームは蕎麦ミッションに30~40分程度を要したとみられます。それを前提にすると、与謝野駅に抜けるルートでは、どんなに急いでもバスチームに勝てませんでした。

ちなみに、与謝野16時11分発の列車は、豊岡を15時04分に出ます。鉄道チームの残金でタクシーに乗れるのは10km程度なので、残り10kmを歩くと考えれば、やはり13時前には「そば一」を出なければこの列車には間に合いません。理想解としてはあり得ますが、現実的には無理だったでしょう。

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上夜久野からゴールを目指したら

最後の可能性として、「そば一」から上夜久野に向かうルートも考えてみます。実際ルートで「そば一」に到着して、ミッション後の滞在を早めに切り上げて13時30分に出発したと仮定します。

▽2日目
そば一13:30→徒歩+タクシー17.5km→上夜久野駅15:49→16:24福知山17:12→18:00宮津→18:13→18:18天橋立

前述したように、実際ルートで「そば一」を出た後に乗車したタクシー距離は10km程度です。これを当てはめると、上夜久野駅までの全てをタクシーに乗ることはできず、約7kmを歩かなければなりません。

となると、「そば一」を13時30分に出たとして、上夜久野駅に到着できるのは早くて15時すぎ。そこでタクシー代を使い尽くすと、上記のような乗り継ぎになり、天橋立到着は実際ルートより30分ほど遅くなります。勝敗を覆すことはできません。

上川口ショートカット

上夜久野15時49分発で勝利する方法を何とかひねり出すと、山陰線を上川口で降り、宮福線の牧駅までショートカットする案が浮かびます。それでも天橋立駅で下車すると間に合わず、岩滝口駅で降りて、タクシーで天橋立ケーブル下まで飛ばすほかありません。以下のような乗り継ぎです。

▽2日目
11:36豊岡→20km→そば一→17.5km→上夜久野15:49→16:08上川口→3.3km→牧16:26→17:08宮津17:21→17:32岩滝口→6.3km→天橋立ケーブル下

鉄道チームが実際に乗車したタクシーの距離は約30km。上記の乗り継ぎで鉄道のない区間が47.1km。つまり約17kmを歩かなければなりません。

上記乗り継ぎを成立させるには、タクシーをどこでどう配分すればいいのかという机上論になりますが、ここでは省略します。ご興味のある方は、「ネットもテレ東」の『バスVS鉄道「正解ルート」大公開』動画をご覧ください。

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鉄道チームもノーミス

鉄道チームを振り返ってみると、列車乗り継ぎそのものに難しい局面はありませんでした。ミスをしたら大きな影響が生じたのが、城崎温泉駅の07時06分発の乗り逃しですが、鬼軍曹は手堅くクリアしています。

鉄道チームの今回の最重要ポイントは、列車の乗り継ぎではなくタクシーの使いどころでした。大前提として、「そば一」へのアクセス以外にタクシー代を浪費してはいけなかったのですが、鬼軍曹はこれを守りました。

「そば一」へのアクセスルートとしては、現実的に採りうる乗り継ぎとして「豊岡から入り、与謝野から出る」のが最適解でしたが、これも達成しています。

つまるところ、タクシー手配に手間取ったり、ミッションクリアに時間がかかったりした場面はありましたが、鬼軍曹もルート選択で間違いはありませんでした。タクシーが来ないのは雨天という事情を考えればやむを得ませんし、ミッション遂行には運不運がつきもので、いずれも鬼軍曹の責を問うのは酷というものです。

ゴール設定

要するに、今回は両チームともノーミスで最適解をたどりました。

では、勝敗を分けたポイントは、どこにあったのでしょうか。今回の天橋立ゴールのタイミングを、バス、鉄道それぞれの時刻表で比べてみましょう。鉄道チームは、天橋立駅から天橋立ケーブル下まで約3.7kmあるので、小走りで30分かかると仮定して計算しています。

【バスチーム】
A: 四辻16:08→16:44天橋立ケーブル下
B: 四辻17:07→17:43天橋立ケーブル下
C: 四辻19:08→19:44天橋立ケーブル下

【鉄道チーム】
A: 与謝野16:11→16:19天橋立→16:49天橋立ケーブル下
B: 与謝野17:40→17:49天橋立→18:19天橋立ケーブル下
C: 与謝野19:02→19:11天橋立→19:41天橋立ケーブル下

AとCは互角、Bはバス勝利、という形です。

Aが両チームとも「理想解」として存在するものの、ほぼ不可能です。最善手を尽くせば実現できる「最適解」はお互いBで、その場合、勝利するのはバスチームという設定になっています。

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難易度でバランス

全体を振り返ると、今回のルートは両チームともおおむね一本道で、1日目に大きなミスをしない限り、2日目朝に城崎温泉・御所の湯で両チームが顔を揃えるという設定になっていました。そのため、勝負は2日目にルイルイが尉ケ畑ルートを探せるか、鉄道チームが豊岡・与謝野ルートを手早く進めるかが、それぞれポイントになっていました。

結果として、両チームともルート選びは完璧で、理想解こそ実現できなかったものの、それぞれの最適解で乗り継いだといえます。互いに現実的な最善手を尽くした場合バスチームが勝利する設定になっていて、結果もその通りになったということです。

ただ、「尉ケ畑ルート」と「豊岡・与謝野ルート」の難易度は前者のほうが高そうです。最適解の難易度はバスチームのほうが高かったと考えれば、その点で、バランスを取っていたのでしょう。

今回は藤原紀香の出身県がスタートで、ルイルイの故郷がゴールという舞台でした。ならば、ホームアドバンテージとしてバスチームに少しばかり有利に設定されていた、と解釈してもよさそうです。

バスチームの勝利により、通算成績は5勝5敗の五分となりました。ルイルイと鬼軍曹の白熱した戦いを、これからも楽しみにしたいところです。(鎌倉淳)

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