新型コロナ禍が終了し、たまに飛行機に乗ると航空運賃が高くなった、とお感じの方も多いでしょう。では、日本で航空運賃が安い会社はどこなのか。ランキングにしてみました。
輸送人キロあたり旅客収入
航空会社の価格水準の指標として用いられるのが、「輸送人キロあたり旅客収入」です。旅客1人を1km運んだ場合、いくら収入があるかという数字で、「イールド」とも呼ばれます。
たとえば、イールド(輸送人キロあたり旅客収入)が15の場合、旅客1人から1kmにつき平均15円の収入を得ていることになります。1,000kmなら15,000円です。
羽田~福岡間が1,041kmなので、おおざっぱには、「イールドが15ならば、羽田~福岡の距離の平均価格が約15,000円」と考えることもできます。
実際には、各航空会社は各路線で正確に距離に応じて値付けをしているわけではありません。それでも、航空会社の運賃相場を見るうえで、一つの目安となります。
2022年度航空会社イールドランキング
さっそく、最新の航空会社イールドランキングを下記に掲載します。国内で定期航空路線を運航している主要15社を扱います。
最新の数字である2022年度と、コロナ前との比較として2018年度の数字を掲載します。「回復率」は2022年度の対2018年度比です。コロナ前と比べ、航空会社の運賃水準がどう変わったかがわかります。
航空会社名 | 2022年度 | 2018年度 | 回復率 |
---|---|---|---|
ピーチ | 7.2 | 7.8 | 92% |
ジェットスター | 7.7 | 8.2 | 94% |
スプリング | 8.1 | 7.9 | 103% |
スカイマーク | 11.0 | 11.0 | 100% |
ソラシドエア | 11.6 | 13.4 | 87% |
エアドゥ | 14.3 | 15.0 | 95% |
日本トランスオーシャン | 15.3 | 13.5 | 113% |
日本航空 | 15.5 | 17.2 | 90% |
スターフライヤー | 16.1 | 17.1 | 94% |
全日空 | 16.2 | 16.8 | 96% |
アイベックス | 18.4 | 19.0 | 97% |
フジドリーム | 18.9 | 21.1 | 90% |
天草エアライン | 32.1 | 32.0 | 100% |
琉球エアーコミューター | 34.2 | 32.2 | 106% |
オリエンタルエアブリッジ | 35.9 | 32.3 | 111% |
※出典:航空輸送サービスに係る情報公開(国交省)
※「日本航空」は、日本航空、ジェイエア、日本エアコミューター、北海道エアシステム、日本トランスオーシャン航空(一部路線)の合計。「全日空」は、全日本空輸、ANAウイングスの合計。
LCCはやっぱり安い
もっともイールドが低かったのが、格安航空会社LCC最大手ピーチ・アビエーションの7.2円。1,000kmあたりだと7,200円です。すなわち、国内でもっとも運賃の安い航空会社はピーチということになります。
ライバルLCCのジェットスター・ジャパンは7.7円で、ピーチより0.5円高くなっています。成田~福岡間相当の距離で、ジェットスターはピーチより平均500円程度高い、という計算です。
ちなみに、もうひとつのLCCであるスプリング・ジャパンは8.1。ピーチ、ジェットスターより1割程度高いです。ただ、同社は国内の就航路線が限られていますので、上位2社と単純比較するのは難しいでしょう。
いずれにしろ、LCC3社は全体として安く、「やっぱりLCCは安い」ことが統計数字にも表れています。
大手航空会社は?
大手航空会社は、JALが15.5、ANAが16.2です。羽田~福岡間の運賃相場なら平均で16,000円前後と計算できます。
LCCと比べると、おおむね倍程度の運賃水準です。逆にいえば、国内LCC勢は大手航空会社の半額程度の運賃水準にとどめているといえます。
実際には、LCCが参入しているのは東京~札幌・福岡といった幹線や準幹線が多く、そうした路線では大手航空会社も割引運賃を充実させています。そのため、利用者から見ると、LCCの運賃が「半額」とまでは感じられないかもしれません。
大手航空会社は、ローカル路線で割引運賃が乏しく、高めの運賃設定になっています。こうしたローカル路線の運賃水準も含んでいるため、大手航空会社全体としてのイールドが高くなっているのでしょう。
スカイマークは3割安
中堅航空会社では、スカイマークが最も安く、イールドは11.0。大手航空会社から3割程度安い価格水準です。一方、ピーチ、ジェットスターのLCC2社に比べると、4割程度、運賃水準が高いことになります。
ソラシドエアは、2022年度は11.6と安いですが、2018年度は13.4と大手並みだったため、コロナ禍からの回復過程で、うまく運賃水準を戻せていない、と見ることができるかもしれません。
エアドゥやスターフライヤーは大手に近い価格水準で、とくに安いとまではいえません。
地域航空会社は高く
地域航空会社のうち、リージョナルジェット機を使うアイベックスとフジドリームズは、どちらもイールドが18程度。ターボプロップ機を使う天草、琉球、オリエンタルの3社は30台と高くなっています。
地域航空会社は機材が小さい上に、運航距離が相対的に短いので、「輸送人キロあたり旅客収入」という尺度で見ると、高くなってしまうのでしょう。
新型コロナからの回復は?
新型コロナからの回復率では、日本トランスオーシャン航空や琉球エアーコミュータのように、離島路線を主体とする会社で運賃水準が2018年水準に届いています。
それ以外の航空会社はまちまちですが、スカイマークが回復率100%で、その他はおおむね9割前後です。つまり、多くの航空会社で、コロナ禍前よりも、飛行機の運賃水準は高くなっていません。
ただし、これは2022年度の数字です。旅行需要の回復が進んだ2023年度は、もう少し運賃水準が上がっているように感じられます。2023年度は、コロナ前からの回復率で100%を超える航空会社が続出するかもしれません。(鎌倉淳)