ANAホールディングスは、株主優待割引で利用できる座席数に上限を設けることを発表しました。大型連休やお盆、夏休みなど混雑期の国内線の一部便です。これまでは座席数制限はなく、空席があれば株主優待が必ず利用できましたが、今後はできなくなります。2016年夏以降に適用されます。
1枚で普通運賃から半額に
ANAの株主優待割引は、株主優待券1枚につき普通運賃から半額になるというもの。割引率の高さにくわえ、使用時期や提供座席の制限がないため、直前予約や繁忙期に旅行するには貴重な存在でした。
ANAによりますと、2016年8月より、一部の便において、株主優待運賃用の座席数を定めた上で、その範囲内でしか予約を受けないことにするそうです。全ての便に座席制限を設けるわけではなく、ゴールデンウィーク期間、旧盆期間、年末年始の各期間を中心に、3連休期間などのピーク時だけに座席数上限が設定されます。
株主優待割引の座席制限設定日
2016年~2017年で上限が設定されるのは、以下の期間です。
▼2016年
8月11日~21日
9月17日~19日
10月8日~10日
12月29日~30日
▼2017年
1月2日~4日
3月18日~20日
4月29日~5月8日
JALは通年で制限
株主優待割引の販売座席数制限はJALも行っています。JALの場合は、特便割引など他の割引運賃の提供座席数の範囲内で株主優待割引を適用しているようで、1年中制限を設けているようです。それに比べると、ANAはピーク時のみなので、制限としては緩いといえます。
とはいえ、株主優待割引の最大の価値は、繁忙期や直前予約による利用が可能な点です。このうちの繁忙期利用に大きな制限が加わるのは、株主優待券利用者には痛手でしょう。
巨額増資から3年で利用制限へ
ところで、ANAは2012年に巨額増資を実施しています。それにより株主優待券の流通量が4割程度も増えた計算です。つまり、過去3年で株主優待割引運賃での利用者が増え、経営の重荷になっていたとみられます。JALは再上場時に株主優待券の利用に制限をかけましたが、できることならANAももっと早く追随したかったはずです。
一方で、株主優待券は株価維持の役割も担っています。そのため、巨額増資後に優待券の価値を下げることは、これまでできなかったのかもしれません。
巨額増資から3年が経ち、株価も安定してきたタイミングでの株主優待券の制限。それでも、JALと違ってピーク時以外には制限をかけないあたりに、依然として株価を気にかけているANAの姿勢が透けて見えます。今回はピーク時のみの制限ですが、株価を睨みながら、これから少しずつ制限を厳しくしていくのかもしれません。