2017年3月までの航空会社別「定時運航率」「欠航率」の統計がまとまりました。定時運航率ではスカイマークが日本航空、全日空の大手2社を抑えてトップに立ち、LCCでは就航したばかりのエアアジア・ジャパンが好成績を収めています。
国土交通省の2017年度統計
航空会社の国内線の「定時運航率」と「欠航率」は、国土交通省の「特定本邦航空運送事業者に関する航空輸送サービスに係る情報」で公表されています。その最新のデータとして、2017年度(2017年4月~2018年3月)の数字がまとまりました。
ここでは、その数字をランキングにまとめて、順にみていきます。なお、統計上の「日本航空」は、日本航空、ジェイエア、北海道エアシステムの合計、「全日空」は、全日本空輸、ANAウイングスの合計です。
この統計では、客席数が100または最大離陸重量が5万kgを超える航空機を使用する航空会社のみが対象ですので、小型機使用のフジドリームエアラインズやアイベックスなどは対象外です。
2017年度定時運航率ランキング
まずは、定時運航率をみてみましょう。
【定時運航率ランキング】(単位:%、カッコ内は前年)
1位 スカイマーク 93.06(89.72)
2位 エアアジア・ジャパン 90.42(-)
3位 エアドゥ 90.06(86.00)
4位 日本航空 90.01(91.68)
5位 スターフライヤー 89.86(92.15)
6位 全日空 88.52(89.23)
7位 ソラシドエア 87.75(88.74)
8位 ジェットスター・ジャパン 85.17(79.75)
9位 日本トランスオーシャン 83.90(87.55)
10位 春秋航空日本 83.22(80.17)
11位 バニラエア 80.94(83.02)
12位 ピーチ 79.17(76.75)
定時運航率は、出発予定時刻より15分以内に出発した便のことをいいます。「出発」とはブロックアウトした時間。つまり、機体が動き出した時間のことです。定時運航率は運航した便に対する率ですので、欠航は反映していません。
スカイマークが初の首位
今回の統計のトピックスは、なんといってもスカイマークの首位でしょう。記録が確認できる2000年度以降の統計で、スカイマークが定時運航率首位に立ったのは初めてです。スカイマークは、2016年10月に「定時性対策本部」を作って定時運航率改善に取り組んでいますが、その努力が結実したと言えそうです。
2位にはエアアジア・ジャパンが入りました。エアアジアは2017年10月に中部~新千歳線に初就航したばかりで、路線は一つしかありません。航空会社としての規模が小さいため、他社との単純比較はできませんが、LCCとしては異例ともいえる高い定時運航率でスタートしました。
ピーチが2年連続最下位
そのLCCでは、ジェットスター・ジャパンが昨年度に比べて大幅に数字を改善。85%を上回りました。いっぽう、ピーチは全航空会社で唯一、定時運航率で80%に達せず、2年連続の最下位に甘んじています。
大手航空会社は、日本航空、全日空ともに数字を落とし、両社とも記録が残る2000年以降で過去最低の定時運航率となっています。日本航空はかろうじて90%を維持しましたが、全日空は88%台となり、エアドゥやスターフライヤーの後塵を拝しました。レガシーキャリアでは日本トランスオーシャン航空の数字が悪く、83%台です。
2017年度欠航率ランキング
次に欠航率を見てみましょう。
【欠航率ランキング】(単位:%、カッコ内は前年)
1位 春秋航空日本 3.56(2.86)
2位 ジェットスター・ジャパン 1.85(1.66)
3位 エアドゥ 1.51(2.09)
4位 バニラエア 1.48(1.74)
5位 全日本空輸 1.38(1.27)
6位 日本航空 1.34(1.35)
7位 ピーチ 1.32(0.88)
8位 エアアジア・ジャパン 1.26(-)
9位 ソラシドエア 1.18(1.33)
10位 日本トランスオーシャン 0.90(0.79)
11位 スターフライヤー 0.67(0.98)
12位 スカイマーク 0.59(0.58)
欠航率は、順位が高いほど欠航の確率が高いことを示します。最も欠航率が高いのが春秋航空日本。ぶっちぎりで2年連続の首位です。欠航の内訳を見てみると、全体の約7割が機材繰りが原因で、機材もしくは乗員が不足しているなどの事情があるのかもしれません。
欠航率でもスカイマークが最高成績
2位がジェットスター、4位にバニラエアと、LCCの欠航率が高くなっています。一方、ピーチの欠航率は1.32と悪くありません。ピーチは「よく遅れるけれど、欠航はしにくい航空会社」といえそうです。
最も欠航率が低かったのはスカイマーク。欠航率0.59は、大手2社(1.34~1.38)に比べ半分です。スカイマークは「定時運航率が高く、欠航率が低い航空会社」ということで、現経営陣になってから、運航に関してはきわめて信頼できる航空会社になったといえそうです。
地域航空会社は?
国土交通省では、小型機使用の地域航空会社の定時運航率、欠航率も公表しています。「特定本邦航空運送事業者以外の事業者に係る情報」で、客席数が100または最大離陸重量が5万kgを超えない航空機を使用する航空会社のみが対象です。結果は、以下の通りです。
【地域航空会社・定時運航率ランキング】
1位 東邦航空 99.22(98.87)
2位 フジドリームエアラインズ 94.13(93.78)
3位 新中央航空 90.92(92.79)
4位 オリエンタルエアブリッジ 89.88(95.49)
5位 アイベックス 89.18(89.67)
6位 日本エアコミューター 89.08(90.69)
7位 琉球エアコミューター 87.78(90.16)
8位 天草エアライン 85.75(86.40)
【地域運航会社・欠航率ランキング】
1位 東邦航空 10.88(12.35)
2位 新中央航空 8.01(8.77)
3位 オリエンタルエアブリッジ 7.63(3.00)
4位 天草エアライン 4.99(7.42)
5位 日本エアコミューター 4.08(2.45)
6位 アイベックス 2.97(2.54)
7位 琉球エアコミューター 2.13(1.53)
8位 フジドリームエアラインズ 1.69(1.29)
定時運航率、欠航率とも首位になったのは東邦航空。伊豆諸島6島間を結ぶヘリコミューター事業を行っている会社です。
運航規模が小さく、ヘリコミューターという特性上、欠航率がきわめて高いものの、運航するときは定時で飛ぶ、ということです。
フジドリームズが安定
ある程度の運航規模を持つ航空会社では、フジドリームズエアラインズが定時運航率でトップといえるでしょう。94%はスカイマークより高いです。ただ、同社は大きな空港にはあまり就航していないので、空港混雑による遅延の要素が少ないという好条件に助けられている側面はありそうです。
同社の欠航率1.69は、大手航空会社に比べるとやや高いですが、地域航空会社としては抜きんでた好成績です。
ということで、地域航空会社のなかでは、フジドリームズエアラインが運航安定性の高い会社といえそうです。(鎌倉淳)