JR各社から2024年ゴールデンウィークの列車利用状況が発表されました。東海道・山陽新幹線では、「のぞみ」全車指定席化の影響が浮き彫りになっています。詳細をランキング形式で見ていきましょう。
ゴールデンウィークの利用状況
JR各社は列車利用状況の統計を「年末年始」「ゴールデンウィーク」「お盆」の3期のみ発表します。このうち「2024年ゴールデンウィークの利用状況」がこのほど発表されました。各社の情報をまとめて、「全国新幹線利用者数」をランキングにしてみましょう。
2024年4月26日~2024年5月6日の11日間の統計です。
新幹線利用者数ランキング2024年ゴールデンウィーク版
順位 | 路線名 | 区間 | 利用者数 (万人) |
対前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | 東海道新幹線 | 新横浜~静岡 | 385.3 | 102% |
2 | 山陽新幹線 | 新大阪~西明石 | 160.7 | 97% |
3 | 東北新幹線 | 大宮~宇都宮 | 125.8 | 102% |
4 | 上越新幹線 | 大宮~高崎 | 121.2 | 105% |
5 | 山陽新幹線 | 岡山~広島 | 118.8 | 97% |
6 | 東北新幹線 | 那須塩原~郡山 | 103.6 | 102% |
7 | 山陽新幹線 | 広島~新山口 | 79.4 | 95% |
8 | 山陽新幹線 | 新山口~小倉 | 72.7 | 95% |
9 | 山陽新幹線 | 小倉~博多 | 68.5 | 96% |
10 | 北陸新幹線 | 高崎~軽井沢 | 67.3 | 108% |
11 | 東北新幹線 | 古川~北上 | 46.6 | 100% |
12 | 北陸新幹線 | 上越妙高~糸魚川 | 35.6 | 114% |
13 | 九州新幹線 | 博多~熊本 | 35.2 | 104% |
14 | 上越新幹線 | 越後湯沢~長岡 | 30.4 | 101% |
15 | 東北新幹線 | 盛岡~八戸 | 22.4 | 101% |
16 | 九州新幹線 | 熊本~鹿児島中央 | 17.6 | 103% |
17 | 山形新幹線 | 福島~米沢 | 10.3 | 101% |
18 | 西九州新幹線 | 武雄温泉~長崎 | 8.9 | 100% |
19 | 秋田新幹線 | 盛岡~田沢湖 | 6.9 | 100% |
20 | 北海道新幹線 | 新青森~新函館北斗 | 6.8 | 101% |
21 | 山形新幹線 | 山形~新庄 | 2.6 | 97% |
コロナからの回復は一段落
2024年ゴールデンウィークは、新型コロナウイルス感染症による影響を完全に脱し、各新幹線とも旅行者で混雑しました。
ただ、JR全体としては前年度比2%増程度にとどまり、コロナからの利用回復は一段落した観もあります。コロナ前の2018年と比べると、全体で95%程度の回復だそうです。
北陸新幹線が賑わう
今年のゴールデンウィークの注目は、2024年3月16日に敦賀まで延伸開業した北陸新幹線です。延伸区間のデータは公表されていませんが、「根元」にあたる高崎~軽井沢間が前年度比8%増、上越妙高~糸魚川間が同14%増と大きな伸びをみせました。
上越新幹線の大宮~高崎間も5%増で、これも北陸新幹線の「根元」区間にあたります。延伸効果が北陸新幹線全体に及んだとみていいでしょう。
一方、北陸新幹線延伸にともない、東海道新幹線は首都圏~福井県の利用者の多くを失ったはずです。それでも、東海道新幹線は前年度比2%増で、影響を感じさせません。分母が違うというところでしょうか。
北陸新幹線系統以外では、九州新幹線が好調でした。博多~熊本間が4%増、熊本~鹿児島中央間が3%増です。
東北・上越方面は、ほぼ前年並みでした。
「のぞみ」全車指定席化の影響は?
東海道・山陽新幹線系統では、ゴールデンウィーク期間中、「のぞみ」号が全車指定席となりました。ゴールデンウィークとしては今年が初めてです。その影響も見てみましょう。
東海道新幹線は対前年度比が2%増。内訳は、「のぞみ」「こだま」が1%増、「ひかり」が6%増となっています。つまり、「ひかり」の人気が高まったことがわかります。
山陽新幹線は、新大阪~西明石間で対前年度比が3%減です。内訳は、「のぞみ」が6%減、「ひかり」「こだま」が1%減、「みずほ」が8%増、「さくら」が6%増となっています。「みずほ」「さくら」の人気が高まったことがわかります。
全車指定席化により、「のぞみ」の利用者が減り、「ひかり」「さくら」「みずほ」といった自由席連結の速達列車に流れたことが見て取れます。「のぞみ」全車指定席化の影響が浮き彫りになったといえるでしょう。
山陽新幹線で利用者離れ?
自由席をなくすとピーク時の輸送力は落ちますので、「のぞみ」の利用率が伸び悩むのはやむを得ません。ただ、それを勘案したとしても、山陽区間の6%は減りすぎの観があります。
全国的に見ても、今年のゴールデンウィークで利用者を全区間で減らしたのは、山陽新幹線だけです。
山陽新幹線は「のぞみ」の加算料金が高く、ピーク時の指定席料金が割高なので、全車指定席化による利用者離れが生じた可能性もありそうです。(鎌倉淳)