根岸線、銀座線などで利用者大幅減。ラッシュ時、コロナ禍から戻り鈍く

主要路線で2~3割が戻らず

国土交通省が2023年度の都市鉄道の混雑率調査の結果を公表しました。2019年度と比較すると、JR根岸線、メトロ銀座線などで輸送人員の低下が著しく、コロナ禍からの戻りが鈍いことがうかがえます。

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都市鉄道混雑率調査

国土交通省が都市鉄道の混雑率調査結果(2023年度実績)を公表しました。この調査では「混雑率」が注目されますが、その基データとも言える、ラッシュ時1時間あたりの輸送力と輸送人員も公表されます。

この記事では、その「輸送人員」に焦点をあて、コロナ禍前の2019年度と比較して、ラッシュ時最混雑時間帯の利用状況がどう変わったかをみてみます。

京浜東北・根岸線

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乗車人員減少率ランキング

まずは、2023年度のラッシュ時最混雑区間について、2019年度比の乗車人員の回復率が低い路線(70%未満)をランキングにしてみました。

(配信先で表が崩れる場合は、こちらからご覧ください)

順位 路線名 区間 輸送人員
(2023)
輸送人員
(2019)
回復率 混雑率
1 JR篠栗線(快速) 吉塚→博多 240 700 34.3% 86%
2 JR鹿児島線(快速) 香椎→博多 966 2,050 47.1% 83%
3 JR根岸線 新杉田→磯子 14,440 28,080 51.4% 81%
4 東京メトロ銀座線 赤坂見附→溜池山王 15,543 29,264 53.1% 98%
5 愛知環状鉄道線 新上挙母→三河豊田 1,977 3,227 61.3% 62%
6 阪堺線 今船→今池 106 172 61.6% 36%
7 JR横須賀線 武蔵小杉→西大井 25,050 40,060 62.5% 134%
8 JR五日市線 東秋留→拝島 4,300 6,830 63.0% 97%
9 JR鹿児島線(快速) 折尾→小倉 600 950 63.2% 68%
10 JR京葉線 葛西臨海公園→新木場 34,020 53,320 63.8% 113%
11 東京メトロ半蔵門線 渋谷→表参道 41,908 64,930 64.5% 109%
12 JR山手線外回り 上野→御徒町 34,530 53,380 64.7% 125%
13 ゆりかもめ 汐留→竹芝 3,946 6,075 65.0% 81%
14 JR阪和線緩行 美章園→天王寺 4,175 6,305 66.2% 108%
15 JR東西線 大阪天満宮→北新地 12,630 18,840 67.0% 77%
16 山万ユーカリが丘線 地区センター→ユーカリが丘 242 359 67.4% 43%
17 京急本線 戸部→横浜 31,317 45,889 68.2% 116%
18 JR青梅線 西立川→立川 19,450 28,465 68.3% 94%
19 JR日田彦山線(快速) 田川後藤寺→城野 110 160 68.8% 50%
20 樽見鉄道線 東大垣→大垣 167 241 69.3% 70%
21 JR総武線緩行 錦糸町→両国 52,000 74,820 69.5% 141%

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減少率ワーストは篠栗線?

もっとも回復率が低いのがJR篠栗線快速です。対2019年比で34.9%の乗車人員となっています。減少率でいえば、約65%減です。

ただし、上表にはありませんが、篠栗線は普通列車の回復率は90.9%です。JR九州では、主要な快速運行区間では快速と普通に分けて利用状況を公表していて、篠栗線快速の利用者数が減ったのは、快速の運行本数が減ったことが主因です。したがって、篠栗線の乗車人員が激減したわけではありません。

2位と9位の鹿児島線快速も同様の理由があり、参考記録としてみておくといいいでしょう。

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実質ワーストは根岸線

となると、実質的な減少率1位は、JR根岸線新杉田→磯子間です。2019年度はラッシュ時に28,080人が利用しましたが、2023年度は14,440人となっていて、ほぼ半減しています。対2019年比の回復率は約51.4%です。

利用者減に対応するように、最混雑時間帯の運転本数は、毎時13本から12本に減少しています。それでも混雑率は146%が81%にまで低下し、定員以下の利用状況になりました。

銀座線も減少大きく

つづいて、東京メトロ銀座線赤坂見附→溜池山王も大きな減少となりました。2019年度の29,264人が15,543人になっていて、回復率は53.1%。こちらも半減近いです。

最混雑時間帯の運転本数は毎時30本から26本に減少していますが、混雑率は160%が98%にまで改善しました。

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横須賀線は混雑緩和

第6位(実質第3位)は、愛知環状鉄道線の新上挙母→三河豊田間で61.3%。減便をしていないため、利用者減がそのまま混雑緩和に直結し、2023年度の混雑率は62%まで低下しています。第7位(実質第4位)は阪堺線今船→今池間でした。

第7位(実質第4位)は、JR横須賀線武蔵小杉→西大井間で62.5%。利用者数は40,060人が25,050人に減少しました。運転本数は毎時11本が10本に減少していますが、首都圏屈指だった混雑率は、193%が134%にまで改善しました。

そのほか、対2019年比の回復率が60%台の路線を挙げていくと、JR五日市線、JR京葉線、メトロ半蔵門線、JR山手線、ゆりかもめ、JR阪和線緩行などが挙げられます。

こうした路線は、おおむね混雑率が改善していますが、JR阪和線緩行のみ、運転本数の減少と短編成化により、混雑率が103%から108%に悪化しています。

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回復率70%台の路線

対2019年比の回復率70%台の路線もみてみましょう。以下のようになります。

(配信先で表が崩れる場合は、こちらからご覧ください)

順位 路線名 区間 輸送人員 (2023) 輸送人員 (2019) 回復率 混雑率
22 東武野田線 初石→流山おおたかの森 7,679 10,959 70.1% 93%
23 JR東海道線 川崎→品川 47,400 67,560 70.2% 151%
24 東急田園都市線 池尻大橋→渋谷 52,439 73,712 71.1% 130%
25 東急東横線 祐天寺→中目黒 39,082 54,311 72.0% 120%
26 京福嵐山本線 蚕ノ社→嵐電天神川 968 1,343 72.1% 75%
27 JR常磐線(快速) 三河島→日暮里 42,160 58,230 72.4% 137%
28 JR宇都宮線 土呂→大宮 25,720 35,440 72.6% 116%
29 JR中央線緩行 代々木→千駄ヶ谷 24,610 33,790 72.8% 92%
30 JR山手線内回り 新大久保→新宿 42,500 58,290 72.9% 131%
31 JR福知山線(快速) 伊丹→尼崎 8,910 12,220 72.9% 106%
32 京王相模原線 京王多摩川→調布 15,548 21,136 73.6% 93%
33 東急多摩川線 矢口渡→蒲田 7,551 10,257 73.6% 114%
34 JR横浜線 小机→新横浜 27,070 36,670 73.8% 134%
35 東急大井町線 九品仏→自由が丘 20,268 27,259 74.4% 116%
36 JR常磐線緩行 亀有→綾瀬 37,350 50,060 74.6% 133%
37 JR東北線 松島→仙台 4,260 5,690 74.9% 92%
38 東武野田線 北大宮→大宮 10,879 14,322 76.0% 101%
39 りんかい線 大井町→品川シーサイド 18,522 24,341 76.1% 108%
40 京王線 下高井戸→明大前 48,016 63,089 76.1% 133%
41 西武有楽町線 新桜台→小竹向原 18,713 24,546 76.2% 94%
42 東京メトロ丸ノ内線 四ツ谷→赤坂見附 28,710 37,651 76.3% 125%
43 北大阪急行南北線 緑地公園→江坂 13,893 18,115 76.7% 92%
44 JR南武線 武蔵中原→武蔵小杉 31,110 40,380 77.0% 146%
45 東京モノレール線 天王洲アイル→浜松町 7,362 9,496 77.5% 85%
46 JR総武線(快速) 新小岩→錦糸町 49,740 64,100 77.6% 148%
47 近鉄名古屋線 米野→名古屋 12,316 15,870 77.6% 109%
48 京王井の頭線 池ノ上→駒場東大前 22,766 29,333 77.6% 120%
49 神戸市地下鉄西神・山手線 妙法寺→板宿 13,813 17,766 77.7% 107%
50 京成本線 大神宮下→京成船橋 15,140 19,396 78.1% 104%
51 小田急江ノ島線 南林間→中央林間 15,071 19,299 78.1% 123%
52 JR芸備線 志和口→広島 1,457 1,863 78.2% 76%
53 JR東海道線緩行 塚本→大阪 11,050 14,100 78.4% 101%
54 東京メトロ東西線 木場→門前仲町 59,940 76,388 78.5% 148%
55 JR京浜東北線 大井町→品川 56,020 71,350 78.5% 146%
56 山陽電鉄本線 西新町→明石 6,090 7,736 78.7% 77%
57 横浜市地下鉄ブルーライン 三ツ沢下町→横浜 12,061 15,274 79.0% 130%
58 JR東海道線(快速) 尼崎→大阪 16,500 20,895 79.0% 93%
59 近鉄京都線 向島→桃山御陵前 14,786 18,720 79.0% 111%
60 東葉高速線 東海神→西船橋 16,682 21,055 79.2% 92%
61 JR京浜東北線 川口→赤羽 51,080 64,150 79.6% 150%
62 JR千歳線 白石→苗穂 5,155 6,474 79.6% 89%
63 JR高崎線 宮原→大宮 33,480 41,880 79.9% 130%

 

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主要混雑路線で戻りが鈍く

ご覧のように、東京圏や大阪圏の主要混雑路線が軒並みランクインしていて、ラッシュ時の利用者数が戻っていないことがうかがえます。

最混雑時間帯の混雑が緩和していることは、利用者としては歓迎でしょう。鉄道会社にとっては減収を意味しますが、輸送力増強の必要性が小さくなるので、必ずしも悪い話ばかりではありません。

とはいえ、今後、人口減少を背景に、利用者がこのまま減少傾向をたどる可能性が高いことを考えると、路線によっては深刻な問題になるかもしれません。適度な混雑でとどまればいいのですが、必ずしもそうもいかないのが難しいところです。(鎌倉淳)

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