2020年代に開業しそうな鉄道新線まとめ。リニアから地下鉄、路面電車まで全網羅

路面電車復権の時代に?

2020年代が幕を開けました。2010年代が終わり、新時代を迎えます。そこで、2020年代に開業しそうな鉄道新線計画をまとめてみました。駅名は一部仮称です。

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富山路面電車南北接続

2020年代の新線開業のトップを飾りそうなのは、富山の路面電車の「南北接続」です。富山地方鉄道の市内軌道線(セントラム)と富山ライトレール富山港線(ポートラム)が、2020年3月21日にJR富山駅で接続し、直通運転を開始します。

完成後、両線は富山地鉄が一元的に運営し、運賃も全区間均一となります。直通運転開始に先駆けて、2020年2月22日に富山地方鉄道は富山ライトレールを吸収合併します。つまり、富山港線も富山地方鉄道の一路線となります。

直通運転開始で、岩瀬浜~環状線、大学前、南富山駅前といった新系統が誕生します。運賃は全線均一210円で据え置きです。

富山地鉄延伸
画像:富山市
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宇都宮ライトレール

2020年度には、新線の開業予定はありません。次の新線開業予定は、2021年度の宇都宮ライトレール(宇都宮LRT)となります。

宇都宮LRTは、栃木県宇都宮市と芳賀町が主体となって整備を進めている路線で、JR宇都宮駅東口~本田技研北門の約14.6kmが建設中。開業予定は2021年度末の2022年3月です。

自動車道路との併用区間が約9.4km、鉄道車両のみが走行する専用区間が約5.1kmで、停留所は合計19箇所です。「LRT」として全線新設される路線としては、日本初です。

宇都宮LRT路線図
画像:宇都宮LRTパンフレットより

JR宇都宮駅東口からの所要時間と運賃は、ベルモール前まで約11分150円、清原工業団地まで約27分300円、本田技研北門まで約44分400円です。朝6時台から夜23時台まで運行し、ピーク時6分間隔、日中10分間隔の予定です。

将来的にはJR線を高架で跨ぎJR宇都宮駅西口から桜通り十文字付近までの延伸を計画しています。その先、大谷観光地付近までの延伸も検討されています。

宇都宮LRT延伸
画像:宇都宮LRTパンフレットより

宇都宮LRT延伸
画像:宇都宮LRTパンフレットより

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2022年度は開業ラッシュ

新線の開業ラッシュとなりそうなのは、2022年度です。まず、二つの整備新幹線が開業します。北陸新幹線の金沢~敦賀間と、九州新幹線西九州ルート(長崎新幹線)の武雄温泉~長崎間です。

さらに、相鉄・東急新横浜線の羽沢横浜国大~新横浜~日吉間、地下鉄七隈線の天神南~博多間、東海道支線地下化によるうめきた新駅が開業し、岡山電気軌道の岡山駅前広場乗り入れも予定されています。

順に見ていきましょう。

北陸新幹線

北陸新幹線の金沢~敦賀間は125km。途中、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、南越の5駅が設けられます。開業後、福井~東京間は2時間53分で結ばれます。

北陸新幹線
画像:鉄道・運輸機構

その先、敦賀~新大阪間もルートが決定し、東小浜付近、京都、松井山手付近、新大阪に駅ができます。敦賀~新大阪間は143km。敦賀以南は環境アセスに着手している段階で、着工時期や開業時期は未定です。

長崎新幹線

長崎新幹線は、武雄温泉~長崎間66.0kmが建設中です。途中、嬉野温泉、新大村、諫早の3駅が設置されます。

長崎新幹線では、新鳥栖~武雄温泉間をフリーゲージトレインで結ぶ構想でしたが、車両開発に失敗し、暗礁に乗り上げました。そのため、長崎新幹線開業時は、武雄温泉駅で在来線特急と乗り継ぐリレー方式になります。

長崎新幹線
画像:長崎県

新鳥栖~武雄温泉間は、与党プロジェクトチーム(PT)がフル規格での整備を求めていますが、佐賀県は応じていません。政府は2020年度予算で環境アセスの費用計上を見送っており、先行きは見通せません。

北陸新幹線金沢~敦賀間と、長崎新幹線の武雄温泉~長崎間は、ともに2022年度の開業が予定されています。長崎新幹線は2022年6月開業を目指していますが、前倒しされれば2022年3月に繰り上がる可能性があります。北陸新幹線は2023年3月の予定です。

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相鉄・東急新横浜線

2022年度には、相鉄・東急新横浜線(相鉄・東急直通線)の開業も予定されています。相模鉄道の羽沢横浜国大から新横浜を経て、日吉に至る路線で、羽沢横浜国大~新横浜間が「相鉄新横浜線」、新横浜~日吉間が「東急新横浜線」となります。

2019年11月に開業した相鉄・JR直通線と同じく、神奈川東部方面線の一部です。開業予定時期は2022年度下期とされていて、北陸・長崎両新幹線と同じ2023年3月が有力です。

公表されている運行計画では、相鉄方面からの東急線への直通列車を、1日102~138本運行します。ピーク時は相鉄線から毎時10本程度、さらに毎時4本程度の新横浜駅始発の列車を運転し、合計14本の列車うち、東横線直通が4本程度、目黒線直通が10本程度となるようです。

日中時間帯は、相鉄から東急への直通が毎時4本程度、新横浜発が毎時2本程度運転されます。二俣川~目黒間を約38分で結びます。JR直通線とあわせて、相鉄の都心直通プロジェクトが、ひとまず完成を迎えます。

相鉄新横浜線
画像:相鉄ホームページより

福岡地下鉄七隈線

同じく2022年度には、福岡市営地下鉄七隈線の博多延伸も開業予定です。天神南から、キャナルシティ博多付近を通り博多に至る1.4kmです。天神南から国体道路を進み、祇園町西交差点ではかた駅前通りに入ります。途中、キャナルシティ博多付近に中間駅が設けられます。

開業予定時期は当初2020年度とされていましたが、道路陥没事故などの影響で遅れており、2022年度に延期されました。こちらも2023年3月頃の開業が有力でしょう。

福岡地下鉄七隈線
画像:福岡市
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東海道線支線地下化

2023年春には、JR西日本の東海道線支線地下化も実現します。大阪市北区豊崎~福島区福島までの2.7kmを地下化し、大阪駅北地区(うめきた)の地下に新駅を設け、おおさか東線などが乗り入れます。

関空特急「はるか」や紀勢線特急「くろしお」もうめきた新駅を経由します。「はるか」「くろしお」が梅田エリアに停車することになり、キタと大阪府南部・和歌山方面を直結します。

JR西日本では、うめきた新駅の開業に備え、JR大阪駅の西端部に新たな改札口を開設します。この新改札口も、新駅の開業にあわせ2023年春にオープンします。うめきた新駅が大阪駅の一部に取り込まれるのか、独立した駅になるのかは未発表です。

うめきた新駅
画像:JR西日本

岡山路面電車

岡山駅前には、岡山電気軌道の路面電車の停留所があります。この停留所を岡山駅前広場に移設し、JR線との乗り換え利便性を向上させる計画があります。これも2023年春の開業予定です。

岡山電気軌道の岡山駅前電停は、JR駅ビルから市役所筋を挟んだ東側にあります。ここから軌道を西(駅方向)に約100m延ばし、岡山駅東口駅前広場内に乗り入れさせる形で、駅前広場を整備します。

JRの駅ビル前に、2面3線のホームを備えた電停を新設。JR岡山駅東口を出て電停までの距離は現在の約180mから約40mに短縮します。

岡山駅前広場路面電車乗り入れ
画像:岡山市

岡山市の路面電車に関しては、環状化を含む7ルートの延伸計画もあります。岡山市では「路面電車ネットワーク計画案」のとりまとめを2020年1月にも予定していますので、延伸案が近く正式発表されそうです。

7案のうち、2020年代に実現する可能性があるとすれば、大雲寺前電停から岡山芸術創造劇場を経て西大寺町電停に至るルート(下図4)でしょうか。

岡山路面電車延伸案
画像:岡山市

7ルート全てが実現することはなさそうですが、楽しみな構想です。岡山市では、後述する吉備線LRT化構想もあり、2020年代~2030年代にかけて路面電車網が大きく発達する可能性があります。

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北大阪急行線

つづく2023年度には、北大阪急行線の延伸工事が完成する予定です。千里中央~箕面萱野間の2.5kmで、途中に箕面船場阪大前駅を設けます。当初は2020年度開業予定でしたが、3年延期となりました。

運行本数は、ピーク時・オフピーク時とも、北大阪急行線の「全数乗り入れ」を想定しています。箕面萱野~梅田間の所要時間は24分です。

北大阪急行延伸
画像:北大阪急行

大阪メトロ中央線

2024年度には、大阪メトロ中央線の夢洲延伸が実現しそうです。コスモスクエア~夢洲間の約3kmが開業します。

2025年の大阪万博決定を受け、そのアクセス鉄道として整備します。そのため、大阪万博が開催される2025年5月3日より前に開業することが求められています。2024年度末にあたる、2025年春の開業が有力でしょう。

夢洲
画像:大阪メトロ

夢洲IR関連路線

大阪湾岸では、万博に続き夢洲のIR誘致が進められており、実現すれば京阪中之島線の九条延伸も動き出しそうです。京阪ホールディングスの石丸昌宏社長は、2019年8月の就任後の報道各社のインタビューで、京阪中之島線の九条駅までの延伸について、IRが実現すれば事業着手すると述べています。

IRの場所が決まるのは2022年頃になりそうで、そこから事業着手しても万博が開かれる2025年春の開業は無理でしょうが、2020年代の開業に漕ぎ着ける可能性はあります。IRを起爆剤に、不振が続く中之島線の再生を目指します。

夢洲IRが実現した場合、JR西日本も桜島線の夢洲延伸を検討しています。ユニバーサルシティ駅西付近から地下化し、桜島駅から北西の舞洲へ地下路線で進み、さらに南西へ折れて夢洲に達するというルートが有力です。6km程度の距離があり、海底トンネルを掘削するなど大がかりな工事も予想されるため、IRが決定したとしても2020年代の開業は微妙です。

このほか、夢洲IRが実現した場合、近鉄が新型特急の導入を検討しています。近鉄奈良線・けいはんな線と大阪メトロ中央線を直通する列車で、実現のために複数集電方式の車両の開発を検討しています。

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ひたちなか海浜鉄道湊線

同じく2024年度頃に延伸が予定されているのが、ひたちなか海浜鉄道湊線です。一時は廃止も議論されたローカル私鉄ですが、第三セクター化されてから経営が持ち直し、阿字ヶ浦~国営ひたち海浜公園間3.1kmの延伸を計画しています。

阿字ケ浦駅から北上し、海浜公園の南側外周に沿って進み、公園中央口を超えて公園西口付近を終点とします。途中駅は、当初、阿字ヶ浦の土地区画整理地区と、海浜公園中央口付近の2駅が設けられる計画でしたが、事業費の兼ね合いで1駅となる見込みです。

『市報ひたちなか』(2019.9.25)によると、「事業許可取得へ向けた国との事前協議を継続」しているところです。

ひたちなか海浜鉄道
画像:ひたちなか市

広島電鉄駅前大橋線

2024年度末には、広島電鉄の駅前大橋線も開業予定です。広島電鉄の広島駅電停が駅ビル内に入り、そこから高架線で駅前大橋へと伸びる新線ができあがります。

その先、稲荷町交差点を経て比治山町交差点までが、駅前大橋線開業後の新線区間です。新線開業後は、広島駅~駅前大橋線~稲荷町~紙屋町方面が「本線」になります。

また、稲荷町~比治山下が「比治山線」(皆実線)となります。稲荷町~的場町~比治山下は「循環線」に組み込まれます。広島駅~猿猴橋町~的場町間は廃止となります。

2019年11月29日に、国土交通省から駅前大橋線の軌道事業特許が下り、2025年春の開業をめざします。

順調にいけば、大阪万博を前にした2025年春は、大阪メトロ中央線、ひたちなか海浜鉄道湊線、広島電鉄駅前大橋線と、開業ラッシュに沸きそうです。

広島電鉄駅前大橋ルート
画像:国土交通省
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アストラムライン

時期ははっきりしませんが、アストラムライン(広島高速交通)延伸も、2020年代半ばに開業しそうです。

アストラムラインの延伸計画は、現在の終点の広域公園前駅から、五月が丘団地、石内東開発地を経由し、己斐中央線という道路を通り、西広島駅に接続するものです。延伸区間の路線延長は約7.1kmで、「新交通西風新都線」と名付けられました。

6駅を新設し、広域公園前~石内東開発地までに3駅、その先2駅が導入空間となる己斐中央線に設置します。残る1駅は西広島駅です。

広島市では、2020年度までに環境影響評価や都市計画法、軌道法の手続きを終え、2021年度に事業着手を予定しています。

事業は広域公園前~石内東間と、石内東~西広島駅間で分けて進めます。石内東までの部分開業予定が令和一桁代後半で、西暦に直せば2024-2027年頃になります。石内東~西広島間の開業は令和10年代初頭で、2028-2030年になると見込まれています。

さらに平和大通りを経て本通に戻る環状線構想もありますが、現時点で事業化が決定しているのは、西広島までです。

アストラムライン延伸
画像:広島市

伊予鉄道松山市内線

同じく時期がはっきりしないものの、2020年代に完成しそうなのが、伊予鉄道松山市内線の延伸です。市内線の路面電車を、松山駅の西側まで延伸する計画です。JR松山駅前停留所付近から、国道196号線(松山環状線)との交点にあたる南江戸まで新線を建設します。

JR松山駅周辺では、予讃線の高架化を含む「松山駅周辺整備事業」が行われています。これにあわせて、路面電車を駅前広場に引き込み、さらに駅西側の南江戸まで延伸させます。

新路線は、JR松山駅停留所付近から、東西駅前広場を通り、予讃線の高架下を抜けて、駅西側に至ります。駅前広場については、歩行者と自転車、路面電車のみが通行する道路(トランジットモール)となります。一般車両は通行できません。JR松山駅の高架下付近に路面電車の停留所が設けられ、対向式2面2線のホームを備えます。

伊予鉄道松山市内線
画像:松山市

計画の中核となるJR松山駅付近連続立体交差事業は2024年度の完成予定で、松山駅周辺の土地区画整理事業は2026年度の完成予定です。そのため、路面電車の南江戸延伸が実現するのは、その頃とみられます。

松山市内線は、その先、松山空港までの延伸計画もありますが、こちらは構想段階です。

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中央リニア新幹線

2020年代の鉄道計画で最大規模となるのは、なんといっても中央リニア新幹線です。

品川~名古屋間285.6kmに、途中、神奈川県駅(橋本駅)、山梨県駅(甲府市大津町)、長野県駅(飯田市上郷飯沼)、岐阜県駅(美乃坂本駅)の4駅を設置します。開業後は、品川~名古屋間を約40分で結びます。

開業予定は2027年とされていますが、大井川水源問題などで静岡工区が未着工となっていて、予定通りの開業は微妙な情勢になりつつあります。

その先、名古屋~大阪間に関しては、2045年の開業を予定していましたが、財政投融資の活用により最大8年前倒しされます。つまり、早ければ2037年に開業します。ただし、名古屋開業が遅れれば、大阪開業も遅れることになりそうです。

中央リニア新幹線
画像:中央新幹線環境影響評価書

羽田空港アクセス線

2020年代開業予定の鉄道新線、掉尾を飾るのはJR東日本が計画している大型路線、羽田空港アクセス線です。

東海道貨物線の一部を旅客化しつつ、新線も建設し、羽田空港から東京駅、上野駅、渋谷駅、新宿駅、新木場駅などに直通列車を運行する構想です。

計画では、羽田空港の国内線第1ターミナルと第2ターミナルの間に「羽田空港新駅」を設け、東京貨物ターミナルまでアクセス新線を建設します。そこから田町駅への「東山手ルート」、大井町駅への「西山手ルート」、東京テレポート駅への「臨海部ルート」の3ルートを建設します。将来的には国際線ターミナルへの延伸も検討します。

このうち「アクセス新線」と「東山手ルート」12.4kmの整備事業について、2019年5月30日に環境影響評価書が公表されました。それによりますと、運転本数は毎時8本、1日144本を予定しています。上下合わせた数字とみられますので、15分間隔での運転を想定していることになります。

「東山手ルート」の環境アセスを提出したのが2019年5月。JRではアセスの終了まで3年、実際の工事に7年かかるとみており、開業まで少なくとも10年はかかります。したがって、開業は最短で2029年ごろになる見通しです。となると、2020年代最後の新線開業が、羽田空港アクセス線となるかもしれません。

羽田空港アクセス線東山手ルート
画像:「羽田空港アクセス線(仮称)整備事業」環境影響評価調査計画書より
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大阪モノレール

つづいて、うまくいけば2020年代に開業するかもしれない路線をご紹介していきましょう。

2029年度開業予定とされているのが、大阪モノレールの延伸です。大阪モノレールは、大阪空港~門真市間を結ぶ路線ですが、さらに門真市~瓜生堂間の9.0kmの延伸が計画されています。

途中、門真南、鴻池新田、荒本の3駅を設置します。軌道はおおむね中央環状線に沿って建設し、終点瓜生堂の北には、中央環状線の未利用地を使って車庫を設置します。

門真南駅では地下鉄鶴見緑地線と接続。鴻池新田駅ではJR学研都市線と接続。荒本駅では近鉄けいはんな線と接続。瓜生堂駅では近鉄奈良線と接続します。瓜生堂に近鉄の駅はありませんが、モノレール延伸にあわせて設置される予定です。

2019年3月に国土交通省の特許がおり、2029年度中の完成を目指します。新線開業はだいたい年度末なので2030年春が見込まれますが、工事が早まれば2020年代の開業になるかもしれません。

大阪モノレール
画像:大阪府

多摩都市モノレール

モノレール関連では、東京の多摩都市モノレールの箱根ヶ崎延伸も計画が進んでいます。上北台~箱根ヶ崎間の約6.7kmを延伸します。

導入空間となる新青梅街道の拡幅が進んでおり、完成すればモノレール用地がすべて確保され、モノレール着工の条件が整います。道路完成時期に工期を加算すると、モノレールの延伸開業の時期は2030年頃とみられますが、順調にいけば2020年代に開業するかもしれません。

多摩都市モノレールには、下図のように多数の構想路線がありますが、現時点で開業の見通しが立っているといえるのは、上北台~箱根ヶ崎間のみです。

このほか、多摩センター~町田間についても、都道47号線を中心に全体の半分の約7kmで導入空間が確保されています。ただ、残り区間では道路計画がない部分もあり、モノレール事業化にはもう少し時間がかかりそうです。

多摩都市モノレール構想
画像:八王子市

都営地下鉄大江戸線

都営地下鉄大江戸線も、2030年頃に開業の可能性がある路線です。大江戸線放射部の終点光が丘駅~大泉学園町までの約3.2kmです。

導入空間となる道路として都市計画道路補助230号線の整備が進んでいます。途中駅として、土支田、大泉町、大泉学園町の3駅を設置します。大泉学園町駅は、西武池袋線大泉学園駅から北2kmほど離れた位置です。

東京都交通局は、現在、駅の詳細な設置場所や事業費の算出を進めていて、2020年2月に整備案をまとめる予定です。事業化決定から開業までおおむね10年とすると、2030年頃に開業に漕ぎ着ける可能性もあります。

大江戸線延伸
画像:大江戸線延伸ニュース第17号

横浜地下鉄ブルーライン

横浜市営地下鉄ブルーラインも2030年頃に開業しそうです。あざみ野から先、新百合ヶ丘まで約6kmを延伸する計画があり、2019年1月に横浜市と川崎市が覚書を交わしました。

あざみ野~新百合ヶ丘間に4つの駅が設置される予定です。横浜市青葉区に2駅と川崎市麻生区に2駅です。

ルートは下図の3案ありますが、「東側ルート」が有力です。2019年12月2日には、川崎市が「東側ルートが、より整備効果が高いことを改めて確認」と発表しており、ほぼ確実になったといえます。

東側ルートを取る場合、駅ができるのは、嶮山(あざみ野ガーデンズ付近)、すすき野、ヨネッティ王禅寺付近となります。終点、新百合ヶ丘駅では小田急線と接続します。開業目標は2030年ですが、まだ流動的です。

ブルーライン延伸
画像:横浜市

吉備線LRT

正確には新線ではありませんが、吉備線LRTも、2020年代後半に実現する可能性があります。

2018年に岡山市、総社市、JR西日本でLRT化の合意が結ばれた際に、期間の目安が「10年」とされたので、順調にいけば2020年代に開業する可能性もあります。

吉備線を全線で電化したうえで、岡山~備前三門間を複線化し、それ以外の区間では交換設備を増設します。それにより、全線で毎時4本、15分間隔の運行頻度を実現。とくに、岡山市周辺の混雑区間では、ピーク時に毎時6本、10分間隔で運行するとしています。

具体的な新駅の計画位置は未公表ですが、既存の10駅に加えて7駅を新設します。

熊本空港アクセス鉄道

開業時期は未定ですが、熊本空港アクセス鉄道も2020年代に開業の可能性があります。JR豊肥線三里木駅~熊本空港(阿蘇くまもと空港)を結ぶ鉄道新線計画です。実現すれば、熊本駅~熊本空港間が約38分で結ばれます。2019年2月に、熊本県とJR九州が基本合意をしました。

三里木駅と空港までの約10kmを、主に高架線で、一部区間をトンネルで結びます。空港アクセス線の列車は三里木駅で折り返し、豊肥線には乗り入れません。

熊本県は2019年度に詳細な調査を行い、2022年度の空港新ビルの完成から「できるだけ期間をあけず」に完成させることを目指しています。早ければ、2020年代後半に開業できるかもしれません。

熊本市電

熊本では市電の延伸計画もあります。現在の市電の終点・健軍町から新市民病院まで約1.5kmを延伸するものです。

健軍町から県道熊本高森線を東へ向かい、自衛隊熊本病院や陸運支局などの横を通り、2019年10月開院の新熊本市民病院へ至ります。熊本市長の目玉公約になっていることもあり、実現へ向け動き出しそうです。

事業期間は7年を見込んでおり、早ければ2020年代後半に開業できそうです。

熊本市電延伸
画像:熊本市

鹿児島市電

鹿児島市電にも延伸計画があります。

鹿児島市のウォーターフロント地区には、鹿児島県が複合施設を整備する構想があり、その整備方針が固まり次第、路面電車の延伸経路も決定すると見通しです。鹿児島市では、2019年3月に市電延伸の基本計画策定委員会を設置し、検討を進めています。

ルートも開業時期も未定ですが、順調にいけば2020年代後半までに開業する可能性があります。

鹿児島市電延伸計画
画像:鹿児島市

2030年代には?

2030年代以降の新線開業としては、北海道新幹線・新函館北斗~札幌間が目玉です。2031年春の開業予定で、実現すれば札幌から鹿児島中央まで、日本列島を貫く新幹線が完成します。

同じく2031年春には、JR・南海なにわ筋線も開業予定です。大阪市の北梅田からJR難波、南海新今宮へ至る路線で、JRと南海が共同で営業します。開業予定は2031年春とされています。

2033年の開業を探っているのは、小田急多摩線の相模原延伸です。2019年5月に調査報告書が公表され、唐木田~相模原間の事業化に向けて動き出しました。

時期未定の有力路線

開業時期未定で、2030年代以降にできそうな有力路線としては、東京メトロ有楽町線支線の豊洲~住吉間4.8kmが挙げられます。いわゆる「豊住線」で、すみやかに事業化が決定した場合、2030年代前半に開業できそうです。事業主体の決定などで折り合いが付いていませんが、建設される可能性は高い路線です。

阪急の北梅田乗り入れも、時期未定ながら実現性が高そうです。北梅田から十三を経て新大阪に至る路線です。なにわ筋線と一体的に整備される路線ですので、同線開業の2031年春か、少し遅れて2030年代半ば以降に開業できそうです。

東急多摩川線の京急蒲田延伸(新空港線)についても、東京都が事業化へ向けて検討を進めています。

東京メトロ南北線の品川延伸も、品川駅周辺の再開発にあわせて着工できそうで、2030年代には完成するかもしれません。つくばエクスプレスの東京駅延伸と臨海地下鉄計画なども、計画の練度が高まれば事業化の有力候補でしょう。

相鉄いずみ野線の慶應SFC延伸についても、相鉄の都心直通プロジェクトが一段落したら、先に進む可能性があります。埼玉高速鉄道の岩槻延伸も、さいたま市長や埼玉県知事が前向きなため、実現可能性があります。

阪急と神戸市営地下鉄連絡線の計画も、取り組みに熱が入っています。工事のハードルは高そうですが、実現の可否の結論がそう遠くない将来に出そうです。阪急では伊丹空港連絡線の構想もあります。こちらは構想段階の観があり、実現性は見通せません。

路面電車復権の時代

路面電車では札幌市電も、札幌駅方面などへの延伸計画があります。北海道新幹線の札幌開業と前後して、整備される可能性があります。

2020年代の鉄道新線計画は、リニアあり、整備新幹線あり、地下鉄、路面電車ありと、バラエティ豊富です。とくに、路面電車の延伸計画が目立ち、「路面電車復権」が美辞麗句でなく本当に実現しそうな時代になってきたことを感じさせます。(鎌倉淳)

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