新幹線のキャンセル料はいくらでしょうか。乗車券220円と指定席特急券340円の計560円が基本、というのはご存じの方も多いと思います。
ただ、キャンセルするタイミングによっても異なりますし、割引きっぷやインターネット購入だと手数料が異なることもあり、意外と知らないこともありそうです。そこで、JRの新幹線キャンセル料のルールをまとめてみました。
この記事では、列車の出発時刻までの、きっぷ使用開始前のキャンセルについて説明します。記事の終わりには、乗り遅れた場合や列車運休時の払い戻しについても触れています。
JRのきっぷ払いもどしの原則
まず最初に、JRは「キャンセル」という表現をほとんどしません。「払いもどし」という表現を使います。きっぷのキャンセル料とは、JRでいう「払いもどし手数料」に該当します。
JRのルールでは新幹線に関するきっぷの払いもどし手数料の原則は、以下のようになっています。きっぷの使用開始前で有効期間内のキャンセルのケースです。
キャンセル日 | 乗車券 | 特急券 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
新幹線自由席 | 出発当日まで | 220円 | 220円 | 440円 |
新幹線指定席 | 出発2日前まで | 220円 | 340円 | 560円 |
出発前日、当日 | 220円 | 特急料金の30% | 220円+ 特急料金の30% |
きっぷのルールに詳しくない方のために説明しますと、「新幹線の料金」は、乗車券と特急券の価格の合計です。JRでは、乗車券分と特急券分に分けて払いもどし手数料を設定していて、払いもどし時にはその総額がかかります。
新幹線の自由席は乗車前なら出発当日であっても440円、指定席は2日前までなら560円です。指定席券は出発前日からキャンセル料が上がります。
東京-大阪を前日キャンセルすると1,960円の手数料
東京-大阪の新幹線指定席券をキャンセルする場合を、例にあげてみましょう。乗車券の価格は8,910円、指定席特急料金の価格は5,810円(通常期)で、総額14,720円です。これを2日前までにキャンセルする場合は、総額560円のキャンセル料で済みます。
前日になると特急料金のキャンセル料が30%の1,740円となり、乗車券分とあわせて1,960円がキャンセル料の総額となります。乗車券・特急料金の総額14,720円からみると、約13%のキャンセル料という計算になります。
なお、東京-大阪の新幹線自由席券をキャンセルする場合は、乗車当日まで総額440円のキャンセル料です。
スマートEX
ここまでは正規運賃・料金で購入した、紙のきっぷの話です。インターネットで購入したきっぷの場合は、少しルールが異なります。
利用者の多い、東海道・山陽・九州新幹線の「スマートEX」を例に挙げてみます。交通系ICカードを使って乗車予定の場合、キャンセルすると1席につき320円が払いもどし手数料として請求されます。指定席も自由席も同じです。
紙のきっぷを受け取って利用する場合も同じです。きっぷの受け取り前でも受け取り後でも、出発当日でも320円です。「早特」商品でも同額です。
スマートEXのキャンセル料320円は、乗車券分と特急料金分を含んだ手数料の総額ですので、紙のきっぷの正規価格のキャンセル料(560円)より安いです。
新幹線eチケットサービス
東北・北海道、上越、北陸、秋田、山形新幹線の「新幹線eチケットサービス」も、きっぷ受取前は指定席1席につき320円の払いもどし手数料となります。自由席の払いもどし手数料は220円で、指定席より安くなっています。
新幹線eチケットサービスでは、きっぷを受け取ってしまうとキャンセル料が異なりますので注意が必要です。指定席券の場合は、受取後、出発前日から特急料金相当分の30%のキャンセル料がかかります。この点はスマートEXと大きく異なります。
キャンセル日 | 払いもどし手数料 | |||
---|---|---|---|---|
自由席 | 受取前 | 出発当日まで | 220円 | |
受取後 | 出発当日まで | 220円 | ||
指定席 | 受取前 | 出発当日まで | 320円 | |
受取後 | 出発2日前まで | 340円 | ||
出発前日、当日 | 特急料金の30% | |||
トクだ値 | 受取前 | 出発当日まで | 320円 | |
受取後 | 出発当日まで | 発売額×割引率 |
新幹線eチケットサービスの格安チケット「トクだ値」は、さらにルールが異なります。「トクだ値」を紙のきっぷとして受け取って乗車する場合、受取後の払いもどしは、原則として発売価格の割引率分の払いもどし手数料と定められています。15%割引の場合は15%の払いもどし手数料がかかります。
「お先にトクだ値」なら30%割引の場合もありますので、そうなると手数料は高くなります。「お先にトクだ値スペシャル」はもっと高額です。
例をあげると、「はやぶさ」の東京-新青森間の「お先にトクだ値」は25%割引で13,240円です。これをきっぷの受け取り後にキャンセルすると、手数料は販売額の25%で3,310円にもなります。
「トクだ値」「お先にトクだ値」とも、きっぷの受け取り前なら当日キャンセルしても320円で済みます。ですから、急な予定の変更に備えて、「トクだ値」はきっぷの受け取りの必要のない交通系ICカードでチケットレス乗車するか、紙のきっぷを当日受け取るようにしたほうがいいでしょう。
スーパー早特きっぷ
JR西日本では、インターネット列車予約である「e5489」専用の割引きっぷが多数あります。そのキャンセル料はどうなっているのでしょうか。例として、山陽新幹線を代表する割引きっぷ「スーパー早特きっぷ」を見てみましょう。「スーパー早特きっぷ」の払いもどし手数料は以下のように定められています。
キャンセル日 | 乗車券 | 特急券 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
きっぷの 受取前 |
出発当日まで | 220円 | 340円 | 560円 |
きっぷの 受取後 |
出発2日前まで | 220円 | 340円 | 560円 |
出発前日、当日 | 220円 | 無割引の特急料金の30% | 220円+ 特急券分の30% |
基本ルールは上記【新幹線の払いもどし手数料の原則】と同じですが、きっぷの受け取り前は出発前日・当日でも560円で済むのが大きな違いです。つまり、これも乗車直前にきっぷを受け取るようにしたほうが、キャンセル料のリスクを減らせるわけです。
上表で「乗車券分」と「特急券分」という表記がありますが、これについても説明しておきます。スーパー早特きっぷは乗車券と特急券がセットで価格が設定されていますが、「乗車券分」と「特急券分」の内訳があります。きっぷ受け取り後の前日・当日払いもどしの場合は、この「特急券分」に対し、無割引の特急料金の30%の手数料がかかります。
JR西日本やJR九州のインターネット割引きっぷは、おおむねこのルールに沿っています。ただし、受け取り後の30%手数料が「無割引の特急料金」にかかる場合と、「割引価格の特急券相当分」にかかる場合があります。
ここまでお読みになってわかるように、新幹線の「早特きっぷ」などの割引きっぷの払いもどし手数料は、紙のきっぷの定価とほとんど変わりありません。きっぷを受け取る前なら、前日や当日でも格安です。飛行機の「早割」などに比べれば良心的な手数料設定といえます。
だいたいルールは一緒
他にもJRの割引きっぷの払いもどしのルールを確認してみましたが、だいたいルールは一緒です。紙のきっぷは出発2日前までにキャンセルすれば片道560円のキャンセル料で済み、ネットのきっぷは受け取り前にキャンセルすれば320円~560円程度のキャンセル料で済みます。
ところが、きっぷを受け取って出発前日になると、特急券のキャンセル料が30%になることが多いです。新幹線のきっぷを購入する際は、この大原則を頭に入れておきましょう。キャンセルするなら2日前までに決断するのがよさそうです。また、ネットのきっぷは、できるだけ受け取りを遅らせて、可能ならチケットレス乗車にすると、キャンセル料リスクを減らせます。
バラ売り回数券は払い戻せない
最近は扱っている区間が激減しましたが、金券ショップで購入した格安チケットはどうでしょうか。格安チケットの種類にもよりますが、新幹線回数券のバラ売りは、1枚単位での払いもどしはしてもらえません。
新幹線回数券は、販売時の枚数(だいたい6枚綴り)が全て未使用の場合のみ払いもどしができます(手数料220円)。
1枚でも使ってしまうとJRの駅窓口では払い戻せませんが、未使用分が残っているなら、金券ショップで買い取ってもらうことは可能です。買い取り価格は店により異なります。
乗り遅れてしまったら
ここからは、列車が出発前の払い戻しでなく、出発後の払い戻しについても触れておきます。乗り遅れてしまった場合です。
新幹線の指定席券は、指定列車が出発してしまったら無効となり、払い戻しはできません。ただし、乗車券は有効期間内なら払い戻せます。
たとえば、東京~新大阪の乗車券の有効期間は4日間なので、乗車予定日から4日間以内なら払い戻すことができます。東京~新大阪の運賃は8,910円ですので、手数料220円を引いた8,710円が返ってきます。指定席特急料金5,860円は戻りませんが、総額14,770円からすれば6割近くが払い戻されます。
この、「乗り遅れても、有効期間内なら乗車券相当の運賃が戻る」というのは、運賃と特急券が一体となった割引きっぷのほとんどに適用されますので、乗り遅れた場合は、できるだけ早く駅の窓口に行くことをおすすめします。
なお、自由席特急券は有効期間が1日なので、乗車予定の列車に乗り遅れても、当日中の後続列車に無手数料で乗車可能です。当日中なら、手数料220円で払い戻すこともできます。
列車が運休の場合
大雪などで列車が運休していることで、旅行を取りやめる場合は、運賃・料金の全額が無手数料で払いもどしとなります。指定券を持っている列車が運休となった場合、運休等が発生した日の翌日から1年以内に駅窓口で払い戻しが受けられます。
えきねっとやe5489、スマートEXといったネット予約で、チケットレス乗車やきっぷの受取前の場合は、列車が運休となった場合、とくに手続きをしなくても、後日、自動的に無手数料で払い戻しとなります。このとき、自分で払い戻し手続きをネット上でしてしまうと、手数料がかかってしまうことがありますのでお気をつけください。
運休や遅延が生じた場合、指定券の変更も可能です。駅の窓口で同一日・同一区間・同一種類の指定席に変更してくれます。この場合、すでに一度変更をしている指定券であっても変更できます。
指定席が満席などの理由で自由席に変更せざるを得ない場合は、特急料金の半額およびグリーン料金・グランクラス料金の全額が払いもどしとなります。
クレジットカードでの払いもどしは?
最後に、クレジットカードで新幹線チケットを購入した場合について説明しておきましょう。JR窓口でクレジットカードで購入したきっぷの払いもどしは、全国のJRの駅窓口で払い戻せます。購入した駅以外でも払い戻してくれます。
ただし、旅行会社で購入したきっぷやツアーのチケット(乗車票・クーポン)の場合は、払いもどせないことが多いです。そうしたチケットの払い戻しは、購入した旅行会社へおたずねください。
クレジットカードで購入したきっぷを駅窓口で払いもどす際は、購入額をクレジットカード会社を通じて返金し、別途払いもどし手数料を請求する、という手順を踏みます。そのため、手数料相当額を払いもどし窓口で新規決済することになります。「払いもどしに行ったのに、新たにクレジットカードで支払いする」ので違和感がありますが、後日、きちんと購入額が返金されるはずです。(鎌倉淳)