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鉄道新線「次の開業候補」を総ざらい〔2〕 期待値の高い路線はココだ!

新答申も視野に

2026年の新春特集として、実現性のありそうな鉄道新線計画をまとめています。ここでは、着工には至っていないものの、事業着手が決まっている路線や、着手の可能性が高い路線について、引き続きみていきましょう。

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これからできる鉄道新線を総まとめ。あの路線の進捗状況は?
鉄道新線「次の開業候補」を総ざらい。未着手の有力路線はココだ!

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北陸新幹線新大阪延伸

北陸新幹線は、高崎駅~敦賀駅間470.6km(実キロ)が開業済みです。敦賀~新大阪間はルート詳細を検討中で、着工時期や開業時期は未定です。

2016年に「小浜・京都ルート」で建設することが決定し、2024年に公表された詳細ルート案では、東小浜付近、京都、松井山手付近、新大阪に駅ができます。いずれの駅も在来線駅と併設される予定です。

北陸新幹線白山

2024年案では、京都駅の位置やその前後のルートについて、「東西案」「南北案」「桂川案」の3案がありました。このうち、有力なのは南北案と桂川案で、南北案は京都駅に接着し、桂川案は桂川駅に接着します。

工期は、南北案が20年、桂川案が26年です。新大阪駅の工期は25年です。そのため、全線開通までの工期は、南北案が25年、桂川案が26年となります。南北案で決定し、すぐに着手したとしても、開業は2050年代です。

北陸新幹線延伸地図
画像:国土地理院地図を加工

ただ、小浜・京都ルートは建設費が膨らんでいて、費用便益費が公表されておらず、着工条件を満たせない状況に陥っているようです。

そこで、2025年7月の参議院選挙後、与党に転じた日本維新の会がルートの再検討を要求。米原ルートや湖西ルートなども含めて試算を取り直すことになったため、今後の見通しは不透明になりました。

維新が再検討を提案した8つのルートは、小浜・京都ルートのほか、亀岡ルート、米原ルート(直通/乗換)、湖西ルート(新設/既存線活用)、舞鶴ルート(京都/亀岡)です。維新は早期の結論を出すことを求めていて、今年が大きな節目となりそうです。

北陸新幹線延伸ルート案
画像:国土地理院地図を加工

 

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秋田新幹線新仙岩トンネル

秋田新幹線では、仙岩峠に新トンネルを掘る構想があります。田沢湖線の赤渕~田沢湖間の約15kmです。

トンネル計画の詳細は明らかになっていませんが、新線区間の最高速度を160km/hに引き上げた場合、秋田新幹線の所要時間が約7分短縮します。

2021年7月に、秋田県とJR東日本が整備計画の推進に関する覚書を交わしました。覚書締結時に、JR東日本は700億円のうち6割(約420億円)までを負担する方針を表明し、実現への意欲を示しました。

ただ、その後の進展は伝えられていません。工期は11年を見込んでいて、環境アセスなどを含めると15年程度はかかるとみられます。いますぐ着手しても、開業は2040年代になりそうです。

新仙岩トンネル
画像:秋田県
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山形新幹線米沢トンネル

山形新幹線では、板谷峠に新トンネルを掘る構想があります。奥羽線庭坂~関根間の約23kmで、新トンネルの仮称は「米沢トンネル」です。

新トンネルは200km/h以上で走行できる曲線半径で建設される見通しで、トンネル区間の以外の福島~米沢間とあわせて、部分的・段階的な高速化や安定性向上に資する整備を検討しています。完成すれば所要時間が10分程度短縮します。

JR東日本が2015年にトンネルについて基礎的な調査を開始し、2022年10月に、山形県とJR東日本が整備計画の推進に関する覚書を交わしました。地質などの調査結果が2025年3月に公表され、事業費は約2300億円、工期は19年と試算されました。

これを受け、山形県では、事業化に向けて、国やJR東日本とのスキームなどの検討をおこなっています。2025年には「山形新幹線米沢トンネル(仮称)整備スキーム検討会議」を設置し、協議が開始されました。この会議には、副知事のほか、JR東日本の代表取締役副社長も参加しており、同社の本気度が伝わってきます。

検討会議では、2026年度内に一定のとりまとめをする方針で、3月には何らかの方向性が示される見通しです。

工期が19年なので、2026年に事業化が決まった場合、開業は2040年代半ばになりそうです。

米沢トンネル
画像:山形県
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福岡市営地下鉄七隈線延伸

福岡地下鉄では、七隈線の延伸構想が浮上しています。博多~福岡空港国際線ターミナル間3.5kmと、橋本~姪浜間4.5kmです。

2025年11月21日の福岡市議会交通対策特別委員会で、延伸検討が明らかにされました。

福岡市地下鉄七隈線延伸
画像:国土地理院地図を加工

福岡市では、2025年5月に地下鉄延伸の試算を公表しています。それによると、空港延伸の想定利用者は1日2.9万人で、総事業費は1,490億円です。

姪浜~橋本間は1日2.7万人の利用を想定し、事業費は1,790億円です。

いずれの区間も費用便益費や収支採算性で、着工の基準を満たせておらず、すぐに着手とはならないでしょう。ただ、地方鉄道の地下鉄延伸計画としては有望な線区です。

福岡地下鉄七隈線

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熊本市電東町線

熊本市電は、熊本市内の田崎橋・上熊本駅前~健軍町の2路線を有します。3方面5ルートの延伸計画があり、このうち「東町線」の健軍町~市民病院間1.5kmの事業化が決定しています。

健軍町から県道熊本高森線を東へ向かい、自衛隊熊本病院や陸運支局などの横を通り熊本市民病院へ至ります。熊本市は2021年3月に基本設計を公表し、概算事業費を135億円としました。

熊本市電東町延伸
画像:熊本市

事業期間は7年を見込み、2026年度に着工、秋津新町までが2029年度、市民病院までが2031年度の開業予定と発表しました。

ただ、熊本市電では、2024年から運行トラブルが相次ぎ、熊本市ではその対処のため、2025年3月に、延伸事業の着手延期を発表しました。

新たな事業着手時期は示されていません。運行トラブルの対処が終了次第、改めて着手時期が示されるとみられます。仮に数年の後ろ倒しで済むのなら、2030年代前半には全線開業できる可能性もありそうです。

熊本市電東町延伸
画像:熊本市

 

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新答申も視野に

ここまで、事業未着手の鉄道新線計画のうち、実現性のある有力候補を紹介してきました。もちろん、これら以外にも、鉄道新線の計画はあります。

今回紹介しなかった路線のうち、長い目でみて開業への期待が持てそうなものを挙げると、西九州新幹線の新鳥栖~武雄温泉間が筆頭格でしょうか。

そのほか、エイトライナーの一部区間、東京8号線の八潮~野田間、グリーラインの鶴見延伸、小田急相模原線延伸、阪急大阪空港線などでしょうか。

このうち、東京圏の路線については、交通計画審議会の次期答申が2030年をメドに出されるとみられ、それを見据えて調査が活発になってくるでしょう。

さらに、注目の新交通システムの自走式ロープウェイ「ジッパー」が実用化されれば、北海道石狩市や、宮城県富谷市など、地方の大都市郊外で導入が進みそうです。

JRでは、中速新幹線構想に沿った在来線幹線の高機能化も検討が進むでしょう。大いに楽しみにしたいところです。(鎌倉淳)

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旅行総合研究所タビリス代表。旅行ブロガー。旅に関するテーマ全般を、事業者側ではなく旅行者側の視点で取材。著書に『鉄道未来年表』(河出書房新社)、『大人のための 青春18きっぷ 観光列車の旅』(河出書房新社)、『死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡』(洋泉社)など。雑誌寄稿多数。連載に「テツ旅、バス旅」(観光経済新聞)。テレビ東京「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」ルート検証動画にも出演。