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整備新幹線、財源拡充へ。貸付料見直し、国交省で議論開始

期間延長で増額も

整備新幹線の貸付料の見直しに向けた議論が開始されました。支払期間の延長や、支払額の変更などを検討します。貸付料は整備新幹線建設に充当されるため、増額されれば、今後の新幹線建設の財源が拡充されることになります。

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整備新幹線の貸し付けのあり方

国土交通省は、「今後の整備新幹線の貸付のあり方に関する小委員会」の第1回会合を2025年11月6日に開催しました。

整備新幹線は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が線路を建設・保有し、JR各社に貸し付ける枠組みで整備されています。

JR各社は機構に施設使用料(貸付料)を支払い、そのお金が次の整備新幹線の建設費に充当されるという形です。JR各社が貸付料を支払う契約期間は30年間となっています。

整備新幹線は5区間あり、最初の北陸新幹線高崎~長野間は1997年に開業しました。開業から30年となる2027年に貸付・支払期間が終了します。2028年以降の貸付料や支払期間は決まっておらず、その金額や期間をどうするのかが、今回の主な議題です。

北陸新幹線白山

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期間と区間をどうするか

国土交通省が示した論点は3つです。

一つ目は、現行の貸付期間終了後の開業31年目以降の契約方法をどうするか、という点です。

「30年間」という期間をどうするか。そして、区間についても、引き続き開業時期ごとに区切るか、という論点があります。

整備新幹線は少しずつ建設されているので、延伸された線区については、隣接線区の契約終了にあわせて契約区間を見直し、一つの貸付契約にしてもいいのではないか、という指摘があります。

たとえば、高崎~長野間の契約を、長野~上越妙高間の契約に一本化してもいいのではないか、ということです。その場合の契約期間についても、当然論点になります。

新幹線貸付料
画像:第1回 今後の整備新幹線の貸付のあり方に関する小委員会資料

 
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算定方法をどうするのか

二つ目の論点は、貸付料の算定方法です。

現在の貸付料は定額で、 JRの「受益」の範囲と定められています。このときの受益は、「新幹線を整備する場合(With)の予想収益」から「新幹線を整備しない場合(Without)の予想収益」を引いたものです。

しかし、新幹線は需要予測よりも実績が上回る傾向があり、この計算方法で算出した貸付料は、結果的に実際に生じた受益よりも過小に見積もられてきました。

北陸新幹線の高崎~金沢間の場合、実際の貸付料は年420億円(2社合計)ですが、実績に基づけば176億円も高く設定できていた、という試算もあります。

こうしたことから、これまでの貸付料の算定方法を改めるかが、大きな論点となっています。国交省の資料では、高速道路貸付料の制度が例示されていて、実際の収入の増減に基づいて、貸付料を変動させる制度が導入される可能性が高そうです。

高速道路貸付料では、区間の延伸ごとに設定期間も延ばしていますので、北海道新幹線や北陸新幹線などの延伸でも、同様の措置がとられる可能性もあるでしょう。

新幹線貸付料
画像:第1回 今後の整備新幹線の貸付のあり方に関する小委員会資料

 
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大規模改修の財源をどうするか

三つ目の論点は、今後見込まれる大規模改修の財源です。

鉄道・運輸機構とJRとの貸付協定では、通常の維持管理や修繕工事については、営業主体であるJR各社がおこなうこととされています。

一方、「通常」を超える改修については、鉄道・運輸機構の責任とされています。ただ、その範囲は明確化されていません。

今後、見込まれる大規模改修について、範囲の明確化と、その財源確保について、見通しを示す必要があります。

鉄道・運輸機構の責任で大規模改修を実施するのであれば、その財源は貸付料にならざるを得ません。つまり、31年目以降の貸付料を議論するなら、使途についても議論する必要がある、ということです。

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2026年夏に方向性

JR各社とも、新幹線貸付料の改定については受け入れる姿勢を示しています。ただ、負担増には警戒する様子を見せています。

検討会では、JRの意見聴取もおこなわれる予定で、2026年夏頃までに方向性を取りまとめます。資料を読む限り、31年目以降の貸付料が増額される方向性なのは間違いありません。

整備新幹線の貸付料は、今後の新幹線建設の財源に充当されます。したがって、増額されれば、新幹線整備の財源が拡充されます。北陸新幹線や西九州新幹線の延伸に新たな財源が確保されることになります。

北陸新幹線や西九州新幹線は、ルート選定などで課題が多く、着工には至っていません。ただ、課題が解決したとしても、近い将来の財源の手当が付いていないという問題も残されていました。

その点でみれば、貸付料の増額が決まれば、2028年度以降に充当できる財源が生まれることになるので、建設の後押しとなる可能性があるでしょう。(鎌倉淳)

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