東京都が、都営大江戸線の大泉学園町延伸について、新たな試算結果を発表しました。B/Cは1以上で、開業後40年以内に黒字化するとしています。2040年頃の開業を目指し、着工に向けてメドが立ったことになりますが、インフレ対策などの課題が残されました。
4kmに3駅を新設
都営大江戸線の延伸は、現在の終点の光が丘駅から北西方向に約4kmを建設する計画で、土支田駅、大泉町駅、大泉学園町駅(いずれも仮称)の3駅を新設します。
計画は古くからありますが、事業化に向けて動き出したのは、2023年2月です。小池百合子都知事が都議会で、収支採算性などを調査する検討会を設置することを表明。同年3月に、交通局・財務局・都市整備局・建設局で構成するプロジェクトチームが都庁内で発足し、検討を続けてきました。
その現在までの調査結果がまとまり、2025年10月15日に発表されました。
概算事業費1,600億円
都が発表した試算結果によりますと、概算事業費は1,600億円で、延伸により、乗客数は1日約6万人増えると見込みます。
事業スキームは、地下高速鉄道整備事業費補助を想定。累積損益収支は開業から40年で黒字化し、採算性を満たします。費用便益比も、基準となる1を超える見通しです。
鉄道事業許可に向けた基準をクリアすることから、都では、着工に向け、関係機関と調整しながら、事業計画案の策定に入ります。
その後、都市計画や環境影響評価などの手続きをおこない、鉄道事業許可を得たうえで、着工を目指します。開業予定は未定ですが、2040年頃の開業を見据えています。
残された課題
都営大江戸線延伸は、これまで、収支採算性が課題でした。そのため、今回の試算では、練馬区により、沿線まちづくりなどによる利用者増が実現すると仮定して、試算をおこないました。
具体的には、駅周辺の開発のほか、交通結節機能の充実、鉄道と連携した駅周辺の基盤施設整備などが条件とされました。したがって、事業着手をするには、これらの条件を大江戸線の延伸と並行して実現するか、少なくとも方針や構想を策定する必要があります。
インフレ対応をどうするか
また、調査結果では、都と区の費用負担の整理も求められました。想定している地下高速鉄道整備事業の国庫補助率は35%です。残りの地方負担分の都区負担については決まっていません。
ただし、練馬区では、延伸に向け、すでに110億円を積み立てていて、財源の一部に充当することを明らかにしています。
そのほか、インフレへの準備も必要とされました。近年の建設費の高騰は激しく、大江戸線延伸についても、事業費や負担額が増嵩する可能性があります。
その場合、想定したスキームなどに変更が生じる可能性がありますので、あらかじめ対応方針の整理が必要とされました。
新宿駅まで31分!
延伸が実現すれば、大泉学園町駅から新宿駅まで31分に、東京駅までは50分となります。延伸による車両増備に備えて、既存の高松車庫を改修するほか、大泉学園駅には引き上げ線を設けます。
なお、終点の大泉学園町は、大泉学園通りとの交点付近で、ヤマダデンキ付近に駅前広場が整備されます。西武池袋線大泉学園駅から2kmほど離れていますので、西武線とは接続しません。(鎌倉淳)