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新金貨物線「BRT整備計画」の概要。鉄道旅客化は事実上断念へ

新小岩~金町間

東京都葛飾区は、検討中の新金貨物線の旅客化について、複線化のために確保してある用地にバス専用道を整備し、BRTを走らせる方針を明らかにしました。旅客鉄道としての運行は、事実上断念します。

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葛飾区が旅客化検討

新金貨物線は、JR総武線小岩駅と常磐線金町駅を結ぶ、総武本線の貨物支線の通称です。全長8.9kmあり、このうち新小岩~金町間の約7.1kmに旅客列車を走らせる構想があります。

地元葛飾区では、新金線旅客化検討委員会を2022年度に設置し、具体化に向けて検討を開始。2025年1月には、鉄道による旅客化4案と、バス専用道の整備2案の合計6案の整備手法を示し、その事業性などをとりまとめた報告書を公表しています。

これを受けて葛飾区では、JR東日本と協議をする一方、住民への説明会も実施。庁内では旅客化方針検討委員会を設置して検討を進め、2025年9月24日に整備構想骨子案を公表しました。

新金線

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南側先行整備へ

整備構想骨子案では「新小岩、金町、高砂といった拠点をつなぐ地域交通ネットワークとして、新金線の複線化用地に専用道を整備する新たな交通システムの構築を目指していく」とし、専用道にバスを走らせる、バス高速輸送システム(BRT)を導入する方針を示しました。

新金貨物線は複線用の用地が確保されていますが、単線で敷設されていて、もう1線分の用地があります。その用地をバス専用道にするというアイデアです。

新金線旅客化
新金線旅客化検討委員会報告書(2025年1月、葛飾区)

ただ、新金線では、金町駅付近で複線化用地が確保されていません。また、国道6号との交差部については、専用道を作る場合、立体交差にする必要があります。さらに、高砂踏切付近のみ複線用地が貨物線の東側にあり、西側にある他区間と連続的に用地を使用できないという問題もあります。

そのため、骨子案では「課題解決までの間、北側区間は一般道路を走行する段階的な整備について優先的に検討を進め」る方針を示しました。

要約すると、新金線旅客化計画は、「高砂踏切より南側の区間にバス専用道を作る計画」として動き出すことになるわけです。当初掲げられていた旅客鉄道を運行する案は、事実上、断念することになります。

新金貨物線地図
新金線旅客化検討委員会報告書(2025年1月、葛飾区)

 

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駅前広場に乗り入れ

採用された「南側BRT案」では、新小岩~高砂間が専用道となります。高砂踏切の手前で一般道に転じて、新宿駅を経て、国道6号線を交差点で渡り、そのまま一般道で金町駅に至ります。

専用道路区間は単線で整備し、駅ごとに交換施設を設けます。駅は10駅を想定しているようです。

新小岩駅は東北広場、金町駅では北口駅前広場に発着します。新小岩駅、金町駅ともに、既存の駅前広場に乗り入れるということです。

新金線配線図
新金線旅客化検討委員会報告書(2025年1月、葛飾区)

 
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所要時間26~28分

車両は連接車両を想定します。クリーンエネルギーを動力とした車両を導入し、自動運転など、新たな技術の採用も検討します。ピーク時に毎時10本、オフピーク時に毎時6本の運行を想定します。全区間の所要時間は約26~28分になる見込みです。

定時性と速達性を確保するため、駅施設での事前料金収受や複数ドアによる乗降など、スムーズに運行できる仕組みを導入します。運行情報案内システムや快適な待合空間を整備し、誰もが快適に利用しやすい交通機関とします。

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1日3万人の利用を予測

整備手法は公設型上下分離方式とし、区が専用道や駅、車両などを整備・保有します。運行や管理は民間または第三セクターが担います。具体的な運営会社などは未定です。

これまでの調査によれば、1日29,000人~30,000人程度の利用を予測し、概算事業費は約320~560億円を見込みます。このうち、国からの補助により約280~520億円を手当てし、葛飾区の支出は約40億円程度にとどまります。

単年度で約5~6億円の黒字を計上できる見通しで、費用便益比は約1.1~1.7程度を見込んでいます。

葛飾区では、今後、この整備構想骨子に基づいて、事業計画の策定に着手します。(鎌倉淳)

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