富山地方鉄道が本線の滑川~新魚津間と、立山線の岩峅寺~立山間について、廃止申請をするための準備を始めることを明らかにしました。自治体の支援が得られなければ、2026年11月末で廃止となります。
6億円の営業赤字
富山地方鉄道は、富山県内に108.3kmの路線網を有する地方私鉄です。近年は鉄道事業の不振が続いていて、前年度決算では、鉄道事業で6億6400万円の営業赤字を計上しました。補助金による支援を受けて最終黒字を確保しています。
富山地鉄は、不採算路線について、みなし上下分離などによる支援を求めていて、自治体側との協議がおこなわれています。
本線については将来収支などを調査したうえで、2025年秋にも中間とりまとめをおこなうことになっています。立山線については、立山町が中心となって、2027年度に再構築事業に着手する方針が示されています。
期限までに回答がなく
しかし、現時点では、具体的な支援策は固まっていません。一方、富山地鉄側は「1日190万円の赤字が出ている」として、沿線自治体に対し、6月までに具体的な支援策の提示を要請していました。
報道各社によれば、自治体から期限までに回答がなかったため、同社は廃止の準備を開始したとのことです。鉄道事業法では、路線の廃止には1年前の届け出が必要で、2026年11月末で廃止するには、それまでに手続きをしなければなりません。
富山地鉄としては、実際に廃止するかはともかくとして、十分な支援が得られない場合に、廃止できる準備をしておきたいということのようです。実際に廃止に踏み切るかは決定しておらず、今秋までに自治体が支援内容を決めれば、存続するようです。
予算編成前に
なぜこの時期に、という疑問もありますが、行政の予算編成作業は、毎年8月末に概算要求が締め切られ、9月に始まります。2026年度から支援を受けるには、2025年秋には支援の方針を決定しなければなりません。
そうしたタイムリミットが近づくなかで、富山地鉄として、行政の背中を押す意味があるのでしょう。
また、支援が不足した場合に、廃線となる区間を明確にしておく狙いもあるようです。富山地鉄では、上市~滑川間と、五百石~岩峅寺間、月岡~岩峅寺間も不採算区間としていますが、これらの区間は、当面存続することになります。
実際に廃止される可能性も
廃線対象の2区間のうち、立山線の岩峅寺~立山間は、立山黒部アルペンルートを構成する観光路線であり、廃止となれば観光産業には打撃です。一方、本線の滑川~新魚津間は、あいの風とやま鉄道との並行区間で、自治体側でも廃止を受け入れる考えがあるようです。
そのため、立山線については存続が模索されるとみられますが、本線の滑川~新魚津間については、実際に廃止される可能性もありそうです。
ただ、滑川~新魚津間が廃止となった場合、存続となる新魚津~宇奈月温泉間が、車両基地を持たない孤立区間となるという問題があります。富山地鉄が、孤立問題についてどう対応するのかについては、いまのところ明らかではありません。(鎌倉淳)