JR美祢線の復旧について、JR西日本が上下分離を提案しました。只見線などで採用された復旧方式を取り入れたい意向ですが、自治体には重い負担になります。
復旧費用58億円
JR美祢線は山口県の厚狭~長門市間46.0kmを結ぶローカル線です。2023年6月の豪雨被害で約80箇所が被災し、現在も復旧していません。
JR西日本は、2024年8月に開かれたJR美祢線利用促進協議会の復旧検討部会の初会合で、復旧費用が58億円以上、工期が約5年という見通しを示しています。ただ、費用負担については議論が行われていませんでした。
自治体が年3億円負担
2024年10月31日に開催された同部会の2回目の会合で、JR西日本は費用負担案について初めて提示。鉄道で復旧する場合に、上下分離方式への事業構造の変更を求めました。
復旧後の美祢線の営業費用は年間約6億円が見込まれています。上下分離方式を導入した場合、列車運行を担うJR側が年間2.5億円を負担する一方、自治体側は年間3億円以上の負担が生じるという試算も示しました。
上下分離の場合、復旧時にかかる工事費でも自治体の負担が大きくなります。JR単独復旧の場合の自治体負担は4億円ですが、上下分離方式の場合は5.3億円に膨らみます。
「上下一体では復旧しない」
災害後の上下分離による復旧としては、JR只見線で前例があり、JR肥薩線でも採用されています。
会合に参加したJR西日本中国統括本部広島支社の地域交通課長は、「鉄道での復旧が選択されるのであれば、只見線のような上下分離の形で、地域の皆さまに運営に関与してもらうのが選択肢」としたうえで、「事業構造を変更しないケースについては、当社として考えておりません」とも述べました。
JR単独による「上下一体の復旧」はしない姿勢を明らかにしたといえます。
自治体には厳しい提案
近年は、ローカル線が被災した際に、JRが上下分離を求めることが増えています。同様に被災したJR東日本の米坂線でもJRが単独復旧に難色を示していて、上下分離などへの事業構造の変更を求めています。
上下分離方式は自治体にとっては厳しい提案で、営業費用の負担のみならず、今後、災害が生じた場合の負担も、原則として自治体にのしかかります。美祢線は、これまでも被災が多かった路線だけに、将来的な持続可能性も含めて議論がおこなわれることになるでしょう。
次の部会は12月頃に開かれる予定で、JR側から鉄道以外の輸送手段で復旧する場合の具体案が示される予定です。(鎌倉淳)