広島電鉄の広島駅への高架乗り入れが正式決定しました。これは、広島市が2014年9月2日に発表した「広島駅南口広場再開発の基本方針」で明らかにされたものです。
改札口は2階に
基本方針によりますと、まず、JRの広島駅南口主要改札口が現在の1階から2階に移されます。広島電鉄の路面電車が駅ビルの2階部分に高架で乗り入れ、1階部分はバス停やタクシー乗降場になります。2階部分には歩行者用のペデストリアンデッキも整備されます。
完成予想図を見ると、ペデストリアンデッキ上で路面電車と歩行者が同平面に描かれていて、高架といっても完全な専用軌道ではなく、柵で仕切るだけのもののようです。
上図の手前が広島駅、奥が稲荷町方面です。
全ての工事が完成するのは2020年代半ばです。総事業費は155億円になる見通しで、広島市が62億円、広島電鉄が14億円を負担します。
広島駅から紙屋町まで4分短縮
広島電鉄市内線の本線のルートも変更になります。現在の広島電鉄市内線の本線は、広島駅前からいったん東南へ向かい、猿猴橋町、的場町、稲荷町を経て西方面の市中心部に向かっています。この大回りを解消し、広島駅前から駅前大橋を経て稲荷町、日治山下へ至るショートカット路線(駅前大橋線)を整備します。
これらの工事により、広島駅でのJRから広島電鉄への乗り換え時間は、約2.1分から約1.3分に短縮されます。また、広島電鉄の乗降場は、これまで乗車2カ所、降車4カ所だったのが、乗降とも4カ所になります。広島駅に乗り入れる市内線は4系統ですので、乗降場は各系統別に運用される予定です。また、駅前大橋線の開通により、広島駅から八丁堀地区、紙屋町地区への距離が約200メートル、所要時間が約4分短縮されます。
皆実線は全線が存続
駅前大橋線の開通により、現在の市内線本線の広島駅~的場町間は廃止になり、猿猴橋町電停がなくなります。稲荷町から的場町を経て比治山下への皆実線一部区間も廃止予定でしたが、沿線住民の反対により全線存続が決定しました。この区間を利用した「循環ルート」が新たに設定されます。「循環ルート」は、的場町から紙屋町、市役所前、皆実町六丁目、段原一丁目を経て的場町に戻る路線です。循環ルートの運行頻度については「地域の利便性が確保できる便数」という曖昧な表現になりました。
広島電鉄の広島駅乗り入れに関しては、高架案の他に地下案もあり、決定をめぐり紆余曲折がありました。最終決定は利用者から見ても事業者から見ても合理的なものになったといえます。
一方、住民の反対運動に折れる形で、当初の廃止予定区間が存続となり、循環ルートの設定に至ったことに関しては、議論があるでしょう。皆実線方面から市の中心部に向かう際に循環ルートは大回りですから、利用者がどのくらいいるのかはわかりません。赤字区間にならなければよいのですが。