阪急バスの「阪北線(梅田系統)」が2023年11月6日に廃止となります。廃止数日前に、全線を乗り通してみました。
阪急園田駅~梅田
阪急バス阪北線(梅田系統)は、阪急園田駅~梅田を結ぶバス路線です。系統番号は「11」。
梅田に乗り入れる阪急バスの最後の路線として知られていますが、運転手不足を理由に、2023年11月6日に廃止されることが決まりました。最終運行は11月5日です。
最終運行の数日前、兵庫県尼崎市の阪急園田駅から乗ってみました。
発車10分前にドアオープン
阪急園田駅のバス乗り場は、阪急駅前だというのに阪神バスが目立ちます。尼崎市内の路線バスはほとんどが阪神バスが運行しているからでしょう。
阪急バスのバス停は改札口から少し離れていて、一見の利用者には少しわかりにくい場所にあります。
11系統は毎時1本程度の運行で、乗車予定は12時30分発の便。早めに待っていたら、12時20分に入線して、ドアを開けてくれました。発車10分前に乗車できるのは、素晴らしいサービスです。
地元客を乗せて出発
5人ほどの客を乗せて出発。お別れ乗車とおぼしきファンの人は、筆者を除いて一人だけ。おおむね地元客が実需で乗っている印象です。
出発すると、バスは梅田とは反対方向に北上します。最初の停留所の利倉西まで1.8km。近郊の路線バスとしては、停留所間隔がずいぶんと長いです。
改めて地図を見てみると、阪急バスは全体に停留所間隔が長めのようです。
さっそく利倉西で一人降車。近隣住民が、駅からの足として利用しているようでした。
豊中の鉄道空白地帯へ
猪名川を渡ると、大阪府豊中市に入ります。
このあたりは駅からやや離れた、「鉄道空白地帯」です。最寄り駅は阪急神戸線神崎川駅か、同宝塚線庄内駅。ただ、どちらの駅からも2~3kmの距離があります。
そのためか、平日日中だというのに利用客は多く、こまめに乗客が乗り降りします。
こんな地域でバスがなくなったら困るのでは? と思いそうですが、梅田系統の廃止後も、園田駅から庄内駅を経て吹田駅に向かう系統が残るので、住民の足がなくなるわけではありません。
とはいえ、その路線も毎時1本程度の運行なので、便数は半減します。なにより、梅田へ直通するバスは便利でしょうから、それがなくなるのは困るでしょう。
地元住民も記念乗車
庄本という停留所で、幼児2人を連れた母子が乗車。梅田に行く様子です。
鉄道より便利だからバスを使っているのかな、と思って聞き耳を立てていたら、「梅田までどのくらいかかるのやろ? なくなる前に乗れてよかったね」などと会話していて、地元住民の記念乗車のようでした。
日出町から国道176号線に入ります。このあたりもこまめに乗降があり、だいたい10人くらいの乗客を乗せていました。
新三国橋
国道176号線を南下し、神崎川を新三国橋で渡ります。神崎川は豊中市と大阪市の市境で、渡りきると大阪市です。
左窓には阪急宝塚線の線路が見えます。
廃止区間へ
阪北線には「新大阪駅~柴原駅・箕面」という路線もあり、日出町から新高一丁目までは梅田系統と路線が重なります。
新高一丁目で、新大阪系統と分かれると、梅田系統の単独路線。つまり、11月5日で廃止される区間に入ります。
すでに大阪市内の主要国道に入っていることもあり、道路も混雑してきました。
逆に、客の乗降は少なくなり、バスは広い通りをひたすら南下していきます。
済生会病院バス停も廃止
野中北一丁目を通過すると、JRの北方貨物線を渡りながら山陽新幹線をくぐります。
さらに、阪急神戸線を渡ると、十三の繁華街に到達。
いよいよ十三と、阪急電車のターミナルに敬意を払おうとしましたが、十三のバス停はあっさり通過。
そのまま十三大橋にかかり、淀川を渡ります。左窓には阪急電車の3複線の橋梁が並びます。
中津六丁目の停留所も通過し、高架道路を走ると、途中の済生会病院前に停車。自動車専用道に設けられたバス停のような赴きで味わいがあります。一人降車。
阪急百貨店前へ
高架道路を降りると、見慣れた梅田の景色が広がります。
新阪急ホテルのバスターミナルをかすめ、JRの高架下に潜り込むと、そこが終点、梅田(阪急百貨店前)のバス停です。
13時10分のほぼ定刻通りに到着しました。園部からの所要時間は約40分。電車なら10分程度なので4倍ですが、渋滞もなく、数字よりも早く感じました。
停留所は廃止
現在、この高架下の停留所を使っているのは、阪急バス11系統のみです。
梅田の停留所には、2020年まで阪急バスの箕面方面行き13/63系統も乗り入れていました。この路線が2020年10月5日に廃止され、園田行き11系統のみになっていましたが、それも撤退するわけです。
すでに停留所から行き先表示は取り払われていて、「休止中」の文字に11系統の情報が貼り付けてある状態。阪急バスの撤退後、バス停は「休止」となり使われなくなるようです。
もともと道路上を占有しているだけなので、跡地利用などの話はなさそうですが、なくなれば道路交通がスムーズになると、歓迎する方もいるかもしれません。
利用者は多く
一回乗っただけであることは承知のうえで、乗車した感想を残しておくと、廃止対象の路線バスとしては利用者が多かった印象です。
阪北線11系統の運行本数は毎時1本程度です。大都市近郊のバス路線としては使い勝手いいとはいえない本数ですが、全区間の延べ人数でいえば、全部で20人程度の乗降はありました。平日の日中時間帯としては、まずまずの乗車率でしょう。
利用者は園田駅から豊中南西部の鉄道空白域へ向かう利用者と、鉄道空白域から梅田へ向かう利用者に、大きく二分されていた印象です。
大阪市内に入るとほとんど客の乗降はなく、多くの利用者は豊中市内から梅田への利用者でした。
影響は限定的だが
阪北線11系統の廃止により、新高一丁目~梅田間から阪急バスは撤退します。ただ、この区間は大阪市内で、大阪シティバスが運行していますので、バス路線がなくなるわけではありません。
阪北線で大阪市内の乗降がほとんどなかったのも、このエリアのバス利用者は大阪シティバスを主に使うからでしょう。
園田駅~新高一丁目にも阪急バスの他路線が残されていますので、阪北線11系統の廃止による利用者への影響は限定的とみられます。バスの本数が減り、梅田直通がなくなるので不便にはなるでしょうが、他のバス路線や電車を使えば、最低限の足は確保されます。
24系統は大丈夫?
ただ、現段階で最低限の足が確保されているとはいえ、将来的にそれが保証されているわけではありません。
冒頭で記したとおり、阪急園田駅で存在感を放つのは阪神バスです。園田駅は尼崎市にあり、阪神バスは尼崎市内線として、園田駅と尼崎駅や塚口駅、猪名寺駅などを結ぶ路線を運行しています。
阪急バスの存在感は薄く、園田競馬場へのシャトルバスを除けば、路線バスは毎時1本程度の吹田行き24系統が残るだけとなります。この路線の運行が終了するようなことがなければよいのですが。(鎌倉淳)