東急電鉄が東横線の有料座席指定サービス「Q SEAT」を、8月10日から開始します。時刻表や停車駅、利用方法などの詳細を見てみましょう。
渋谷始発の急行5本に設定
「Q SEAT」は、東急電鉄の有料着席サービスです。ロングシートをクロスシートに転換できる車両を使用して、ラッシュ時間帯に着席サービスを提供するものです。
2018年に大井町線に初めて導入して好評を博し、2023年8月10日に東横線にも導入することが発表されました。東横線では、10両編成のうち2両(4・5号車)が指定席となります。
対象となる列車は、渋谷始発の急行5本です。平日夜19時35分発から21時35分発まで、30分間隔で設定します。
東急東横線「Q SEAT」時刻表
東急東横線の「Q SEAT」導入列車の時刻表は以下の通りです。
運行区間のうち、渋谷~菊名の各駅では乗車・降車とも可能です。
横浜~元町・中華街間は、有料座席券の要らないフリー乗降区間となります。
座席指定が有効なのは東急東横線の渋谷~横浜間のみで、みなとみらい線の横浜~元町・中華街間は一般席の扱いということです。
指定券の購入方法
座席指定料金は区間にかかわらず500円です。大人・小人とも同額です。
列車指定券(指定席券)の購入方法は、インターネットと駅窓口のふたつがあります。
インターネットの場合は、スマートフォンやタブレットなどで「Qシートチケットレスサービス」にアクセスし購入します。利用には会員登録が必要です。チケットレスサービスでは、きっぷを受け取らずに乗車できます。
窓口の場合は、東横線内の急行停車駅の改札窓口で「Qシート列車指定券」を購入できます。
ネット、窓口とも、列車指定券販売は乗車日当日の朝5時から当該列車の出発所定時刻1分前までです。乗車日以前の前売り発売はありません。車内での列車指定券の販売もおこないません。
どんな車両?
車両は5050系10両編成で、4、5号車が「QSEAT」です。側面に大きなマークが記されているので、すぐにわかるでしょう。
車内はクロスシートが基本で、一部座席はロングシートです。各車両クロスシート36席・ロングシート9席で、2両合計で90席です。
車内Wi-Fi、電源コンセント、カップホルダー(一部座席)を備えています。
待望のサービス
東横線は東急電鉄の基幹路線で、混雑も激しく、有料着席サービスを求める声はかねてからありました。待ち望んでいた利用者からは「ようやく」という感想でしょう。
500円という価格は、距離を勘案するとやや高めですが、需要の高さを考えれば、毎日満席になると予想されます。
当面は、夕ラッシュ時のピークを過ぎた19時35分発から30分間隔で5本のみという、限られた設定です。総供給座席は1日450席で、恩恵にあずかれる人は僅かでしょう。
東急としては、混雑のピークを避けて先行実施し、需要や一般車両への影響などを見極めながら、運行時間帯の拡大を検討していくとみられます。
どこまで拡大するか
では、将来的に、「Q SEAT」の運行規模はどこまで拡大していくのでしょうか。
そもそも、東横線で渋谷始発の列車は限られています。18時以降の始発急行は毎時2本しかありませんので、運行を拡大する場合も時間帯が広がるだけで、運行間隔はほぼ変わらないでしょう。
利用者としては、通勤特急への導入も期待したいところですが、東武線、西武線、メトロ線から直通してくるので、「Q SEAT」を設置する場合、その始発駅から運用しなければならなくなります。
東武線や西武線内の夕方上りに設定するのであれば両社の協力が必要で、実現のハードルは高そうです。
一般車両の混雑も
東横線内の一般車両の混雑も気になります。「いまでも混んでいるのだから、指定席なんて導入しないで、全部一般車両にしてほしい」という苦情は、必ず出てくるでしょう。
東急の立場としては、10両編成のうち2両を用いているので、8両編成の列車と一般車両の供給量は変わらないという姿勢のようです。しかし、混雑している一般車両の利用者からみれば、編成のど真ん中に指定席を入れられて迷惑、と不満を抱く方もいるでしょう。
通勤特急に関して言えば、従来から10両編成で運行しているうえ、東横線内でも非常に混雑しているので、2両を指定席化するのは、現状では難しそうです。
実際のところ、混雑に多少の余裕がある渋谷始発以外で「Q SEAT」を導入するのは、当面は困難ではないか、と感じられます。
人口減少を見据え
とはいえ、新型コロナ禍による在宅勤務の拡大にくわえ、沿線人口の高齢化、さらには人口減少もあり、東横線といえども、将来的にラッシュ時の混雑率は低下していくとみられます。
それを見据えた上での「Q SEAT」導入なので、東急としては、一般車両の混雑状況を見極めながら、どう拡大していくかを検討していくとみられます。(鎌倉淳)