在来線特急の「横4列グリーン車」に存在価値はあるのか。いっそ「クラスJ」にしてみては?

久しぶりに特急「スーパーあずさ」に乗り、松本に日帰りして来ました。松本で大事な打ち合わせがあるので、往路はグリーン車を利用。ゆっくりとくつろぎながら2時間半を過ごしたいと考えたからです。

ご存じの方も多いでしょうが、「スーパーあずさ」のE351系グリーン車は、横4列シートです。筆者は窓側でしたが、この日は満席で、通路側には体格のいいサラリーマンが座りました。肘掛けは狭く、お互い使うと当たってしまうので、微妙な譲り合い。シート自体は悪くないのですが、座席の左右幅が狭すぎて、「ゆっくりくつろぐ」には至りません。松本に着いたときには、「はあ、ようやく着いた」とほっと身体を伸ばしました。これでは、何のためにグリーン車に乗ったのかわかりません。

E351系の場合、普通車とグリーン車の物理的な違いは、シートピッチだけです。普通車が970mm、グリーン車が1,160mmで、グリーン車のほうが19cm広くなっています。足元が19㎝広いことには意味があり、確かにラクです。しかし、通路側の人が足を組んで寝ていたら、トイレに行くのにはばかられてしまい、それほどゆったりした造りではありません。

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3,000円の価値はあるのか?

新宿~松本のグリーン料金は3,090円です。あずさ回数券にもえきねっとトクだ値にもグリーン車の設定はなく、「スーパーあずさ」のグリーン車に乗るには定価を支払うほかありません。運賃・特急券と合わせた総額は、新宿~松本間で9,470円もします。

あずさグリーン車

正直、この設備のグリーン車に、普通車と比べて3,000円の差額を支払う価値があるとは思えません。一方、あずさ回数券のばら売りやトクだ値を使えば、普通車に4,500円程度で乗ることができます。つまり、実質的な価格差は倍以上になっていて、そうなると比較する意味すらない気がします。

JR在来線のグリーン車には、横3列と横4列がありますが、JR東日本線内だけを走る列車は、ほとんどが横4列です。一方、JR東日本以外の特急グリーン車は、横3列が多数派です。JR東日本でも、他社に乗り入れる「スーパー白鳥」や「はくたか」のグリーン車は横3列です。横3列グリーン車は快適で、たとえ2人席でも隣人のことなど気にならないくらいゆっくりできます。3列と4列の快適性の違いは大きい、というのが利用してみた実感です。

あずさグリーン車

新型車両でも横4列は維持

ところで、E351系は更新期を迎えており、後継車両としてE353系の製造が決定しています。その際にグリーン車の仕様も変更されるのかと思いきや、横4列シートはそのままで、シートピッチも同じです。横3列にしないのは、振り子車両という技術的な問題があるのかもしれませんが、JR東日本の最近の特急車両のグリーン車は横4列ばかりなので、そういう方針なのでしょう。横3列シートのグリーン車は、採算性が悪いのかもしれません。

とはいえ、横4列グリーン車が儲かるわけでもないようで、E353系では席数が減らされ、半室グリーン車になる模様です。それだけ、横4列グリーン車は人気がないのでしょう。提供するサービスと価格のバランスが取れていないのですから、人気がないのは当たり前と思います。

特急列車の普通車のアコモデーションは、昔に比べて大きく改善してきました。お金に余裕がある人でも、グリーン車に乗る必要はなくなっています。そのため、グリーン車の存在価値が揺らいでいるのかもしれません。

もはや特別車両ではない

ところで、JALには、「クラスJ」という、いわゆる「プレミアムエコノミー」のシートがあります。プレミアムエコノミーは世界的に増えていて、最近の航空業界の新潮流になりつつあります。普通車よりはゆったりした座席がいいけれど、ビジネスクラスやファーストクラスまでは必要ない、と考える客層が増えていることを意味します。

JRにおいては、横4列シートのグリーン車が、設備的にはプレミアムエコノミーレベルというのが現実と思います。もはや特別車両ではないのです。そこに「ビジネスクラス」の価格を付けているから客が付かないのかもしれません。ならば、価格的にもブランド的にも、新しい階級が必要なのではないでしょうか。

要するに、「横4列グリーン車」をプレミアム普通車と考えて、「クラスJ」程度、つまり普通車にプラス一律1,000円で乗れるようにしたらいいのではないでしょうか。そのくらいの価格なら納得もできますし、その程度のシートです。回数券でも普通のきっぷでも、1,000円払えば乗れる席、とでもしてみたら、意外な人気が出て、客単価が上がるかもしれません。

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