2013年度の航空路線別「旅客数」「座席数」「座席利用率」の統計がまとまりました。国土交通省の「特定本邦航空運送事業者に関する航空輸送サービスに係る情報」で公表されています。
ここでは「旅客数」と「座席利用率」の2013年度(2013年4月~2014年3月)の数字をランキングにまとめて、順にみていきます。
なお、この統計では、客席数が100または最大離陸重量が5万kgを超える航空機を使用する航空会社のみが対象ですので、小型機使用のフジドリームエアラインズやアイベックスなどの数字は反映されていません。
年間100万人越えは22区間
まずは、旅客数ランキングです。
【旅客数ランキング】(単位:人)
- 羽田-札幌 8,950,756
- 羽田-福岡 7,932,119
- 羽田-伊丹 5,274,547
- 羽田-那覇 5,098,242
- 羽田-鹿児島 2,283,854
- 羽田-熊本 2,022,909
- 羽田-広島 1,792,740
- 羽田-小松 1,634,164
- 羽田-長崎 1,553,919
- 福岡-那覇 1,511,309
- 関西-札幌 1,432,330
- 羽田-松山 1,419,568
- 羽田-宮崎 1,385,709
- 中部-札幌 1,269,863
- 那覇-石垣 1,243,805
- 羽田-高松 1,208,421
- 成田-札幌 1,179,958
- 羽田-北九州 1,170,457
- 羽田-大分 1,142,918
- 関西-那覇 1,136,432
- 羽田-関西 1,115,138
- 羽田-函館 1,095,814
(年間100万人以上をランキング)
上位9位が羽田路線で、目的地は地方中核都市ばかりです。目立つのは10位に入った福岡-那覇線で、地方路線としては大健闘しています。関西-札幌線は、大手とLCCが入り乱れて便数豊富で伊丹-札幌線を凌駕しています。ちなみに、伊丹-札幌線は553,900人で、関西線の3分の1程度です。
これら上位路線の順位変動は、今後も少ないでしょう。変動がありそうなのは羽田-小松線と、羽田-函館線くらいです。どちらも新幹線の開業を控えていますので、数年後には利用者が激減すると思われます。新幹線との競合区間で100万人越えしているのは東京-大阪、広島、福岡間くらいなので、小松線と函館線は100万人割れする可能性が高いと言えるでしょう。
“搭乗率”は「関西勢」が上位独占
次に、座席利用率のランキングを見てみます。「座席利用率」は航空業界では「ロードファクター」といいます。「搭乗率」と似ていますが、無償客を含めずに計算する点が異なります。ただ、「座席利用率」と「搭乗率」の間に大きな差があるとも思えないので、この順位を「搭乗率ランキング」と理解しても構わないでしょう。ここでは、座席利用率70%以上の路線をランキングしました。
【座席利用率ランキング】
- 関西-仙台 88.2%
- 関西-鹿児島 85.0%
- 成田-伊丹 80.7%
- 伊丹-函館 80.5%
- 関西-長崎 80.3%
- 伊丹-札幌 79.3%
- 成田-関西 78.1%
- 関西-札幌 78.0%
- 関西-那覇 77.1%
- 関西-松山 76.7%
- 伊丹-那覇 75.9%
- 成田-松山 75.8%
- 羽田-石垣 73.4%
- 小松-札幌 72.9%
- 羽田-出雲 72.8%
- 羽田-久米島 72.5%
- 成田-高松 72.3%
- 神戸-札幌 71.2%
- 仙台-那覇 71.1%
- 関西-福岡 70.8%
- 関西-女満別 70.7%
全路線平均 63.7%
座席利用率ランキングでは、旅客数ランキングと全く異なる区間が並びます。旅客数上位の区間では、搭乗率は60%台が一般的です。人気路線では朝から晩までフライトがあるので、利用率の低い時間帯の便が発生してしまい、全体の搭乗率が伸び悩む、ということなどが原因のようです。
座席利用率では、関西空港、伊丹空港の「関西勢」が上位を独占しました。なかでも、関西空港路線の健闘が目を引きます。これは、ピーチの搭乗率が高いことが理由に挙げられるでしょう。上位2路線の関西-仙台と関西-鹿児島は、いずれもピーチだけの区間です。
就航当初は、「誰が乗るのだろう?」と疑問視する人も多かった成田-関西路線も高い座席利用率を記録しています。ここはピーチとジェットスターが競合する区間です。このように、全体的にLCC関連の路線が高い座席利用率を叩き出しています。LCCの搭乗率そのものが高いことをうかがわせます。
“搭乗率”実質最下位は「神戸-米子」
では、座席利用率ワーストランキングも掲載しましょう。利用率50%未満の区間です。「搭乗率ワーストランキング」ともいえるでしょう。
【座席利用率ワーストランキング】
- 成田-広島 25.1%
- 札幌-紋別 27.1%
- 宮古-石垣 28.9%
- 羽田-大島 31.3%
- 羽田-三宅島 35.9%
- 神戸-米子 37.0%
- 神戸-石垣 38.3%
- 札幌-稚内 40.6%
- 成田-新潟 42.0%
- 成田-旭川 42.3%
- 羽田-大館能代 43.5%
- 札幌-釧路 43.5%
- 長崎-那覇 43.8%
- 成田-石垣 44.7%
- 札幌-新潟 45.4%
- 札幌-秋田 45.6%
- 福岡-宮崎 46.5%
- 鹿児島-那覇 48.5%
- 成田-仙台 49.2%
- 札幌-静岡 49.6%
全路線平均 63.7%
ワーストランキングトップは成田-広島線ですが、これには理由があります。この区間はアイベックスが1日1便飛ばしているだけで、全日空がコードシェアしてその座席の一部を買い取っています。統計上、アイベックスは対象外ですので、全日空の購入座席の利用率だけが表示され、それが低かった、ということと思われます。成田-広島にはLCCの春秋航空日本がまもなく就航する予定ですので、そうすれば利用率は跳ね上がるでしょう。
札幌-紋別線も全日空ですが、これは冬季に東京-紋別線を休止するにあたり、代替用として設定されている路線です。つまり、これも「訳あり」の路線です。その次の宮古-石垣、羽田-大島、羽田-三宅島はいずれも離島路線ですので、生活用です。このように、低利用率路線にはなんらかの事情があることが多いといえます。
続いて利用率が低いのは神戸-米子37.0%で、スカイマークの路線です。スカイマークは神戸をハブにしており、その乗り換え需要を狙う路線とみられますが、他路線のような「訳あり」とはいえません。そのため、実質的な「搭乗率最下位」は、神戸-米子線といえるでしょう。その次に低いのがスカイマークの神戸-石垣線38.3%で、こちらは乗り換え需要などの事情もなさそうです。実際、神戸-石垣線は2014年3月に廃止されています。
それ以外でも、低搭乗率路線は、航空会社が収益を狙って設定した路線は少なく、どちらかといえば公共交通の使命として運航している区間が多いといえます。「狙って失敗した」とみられる路線を探してみると、成田-旭川、成田-石垣などで、スカイマークが目立ちます。同社はチャレンジングで未開の領域に手を広げますが、失敗するとすぐに撤退するのも持ち味。実際、この両路線も撤退済みです。賛否は分かれますが、その柔軟性が統計にも現れているといえるでしょう。