JR西日本が、近畿総合指令所長を更迭しました。1月24日の大雪で列車が長時間立ち往生した事態を受けたものです。
報酬返上と人事異動
JR西日本は、2023年2月17日に、役員の報酬返上と異動について発表しました。このなかで、3月1日付で宮本佳洋理事 兼 近畿統括本部副本部長 兼 近畿総合指令所長を更迭し、近畿統括本部付とする人事を明らかにしました。後任には小林哲也中国統括本部安全推進部長が就任します。
同時に、長谷川社長、中村圭二郎副社長、三津野隆宏近畿統括本部長がそれぞれ月額報酬5割を1ヶ月返上することも発表しました。
「理事」とは
宮本氏が就任していた「理事」とは、2021年6月に取締役会のスリム化にともない新設された役職です。「執行役員」に準ずる位置づけで、業務執行責任を負うとされました。
両者の違いは、「執行役員」はグループ全体の意思決定に関わる部門の長を中心に選任し、「理事」は個別の部門・分野の業務執行責任者として選任する、ということです。
総合指令所については、JR西日本では、金沢新幹線総合指令所、近畿総合指令所、中国総合指令所、東京新幹線総合指令所の4つがあります。そのなかで指令所長が理事職となっているのは近畿のみです。
要するに、「近畿圏における指令部門」の業務執行責任者(理事)が宮本氏だった、ということです。
大雪の立ち往生で
更迭の理由はいうまでもなく、1月24日夜~25日にかけての大雪で発生した立ち往生です。東海道線山科~高槻間で、分岐器計21台が凍結するなどし、列車15本が運行できなくなりました。これにより、乗客約7,000人が車内に最大約10時間閉じ込められました。
JR西日本は、役員の報酬返上と異動を発表するのにあわせて、大雪当日の状況と対応についての検証を発表。近畿統括本部の対策本部設置が遅れたことや、計画運休や間引き運転を実施しなかったことなどについて、「体制整備や運行計画の判断を気象予測のみに依存した」ことを原因とみて、今後、基準を見直す方針を明らかにしました。
また、乗客の救護が遅れたことについては、「夜間と降積雪で足元が悪いこともあり、駅間降車に変更する判断ができなかった、駅間停車列車内での体調不良のお客様に関する情報把握が不十分であった」などとし、情報収集と判断力不足を原因としました。
対応策としては、「60分を目安とした降車誘導判断を再徹底する、体調不良のお客様への対応を最優先とし、消防署への速報を徹底する、駅間停車列車解消に向けた指令の対応能力を向上する」などを示しました。
判断の遅さを認める
検証では、司令所の判断の遅さや、対応能力の低さを認めています。乗客対応に記述の半分を割いていることからも、気象予測が外れたことや融雪器の不使用よりも、停車後の対応に大きな問題があったと考えているのでしょう。
JR西日本としては、検証をとりまとめて総括したことで、この件については一段落とし、担当役員を解任して責任を明確化したということのようです。
利用者としては、新任の役員のもと、十分な対策を願いたいところです。(鎌倉淳)