青春18きっぷはいつ廃止されるのか。カギを握るのは売上高

青春18きっぷがなくなるのではないか。そんな話をよく耳にします。実際は、現時点では廃止の予定はありませんし、当分なくなることはないと思います。ただ、青春18きっぷがいろいろな問題を抱えているのもまた事実です。将来的には廃止になることがあるかも知れません。

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国鉄時代にスタート

青春18きっぷは、国鉄時代の1982年にスタートしました。国鉄時代にスタートした全国共通型の企画乗車券類はほかにもありましたが、そのほとんどが民営化後に姿を消しています。今残っているのは、フルムーン夫婦グリーンパスと、青春18きっぷだけです。

なぜ、青春18きっぷは、JR民営化後20年以上も生き残ってこれたのでしょうか。その理由は、販売枚数の多さと、利益率の高さでしょう。

青春18きっぷのポスター

ほとんど丸儲けの商売

JR東日本の資料によると、青春18きっぷは、毎年25万枚程度が販売されています。JR全社での総売上高は、年間で約60億円になると思われます。

JRで最も規模の小さいJR四国の旅客運輸収入は、年間で217億円です。つまり、青春18きっぷの全国の売上は、JR四国の鉄道事業の売上の3割弱に相当するのです。小さくない数字であることがわかると思います。しかも青春18きっぷの販売のために、大きな設備投資は必要としていません。ほとんど丸儲けの商売で、利益率はかなり高い商品です。

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普通運賃の旅客を奪っている?

もちろん、青春18きっぷは、本来普通運賃を支払ってくれるはずの旅客を奪っている側面はあるでしょう。ただ、青春18きっぷがなければ、300キロや500キロの長距離を普通列車で移動しようなんて人はほとんどいないはずです。つまり、青春18きっぷが奪っている「普通運賃の旅客」とはせいぜい100キロから150キロの中距離客で、それならば普通運賃も3000円程度。「普通運賃の旅客」を奪っているとしても、常識的な割引率の範囲内です。むしろ、5日間で1万1500円分のきっぷをまとめ買いしてくれる青春18きっぷの旅客は、上客ともいえます。

筆者が聞いた話では、青春18きっぷの利用者の移動距離を普通運賃に換算すると、平均で3700円程度になるそうです。これは明確なデータが手元にあるわけではないので、話半分で聞いて頂いてかまいませんが、なんとなく説得力のある数字です。この程度なら、許容できる範囲の割引率と表現することもできると思います。

「青春18きっぷは、本来なら新幹線や特急に乗ってくれた旅客を奪っている」という考え方に至ってはナンセンスでしょう。青春18きっぷで長距離を移動するような旅客は、それがなくなれば高速バスを使うのは目に見えています。その意味では、青春18きっぷは、高速バスに対抗する有力な販売ツールといえます。

廃止されるとしたら?

とはいうものの、青春18きっぷが永遠に存続するとは思えません。廃止される可能性はあります。その一番高いシナリオは、売上の低下です。つまり、青春18きっぷは売上が大きいから存続されてきたわけですから、売上が落ちれば廃止されることは十分に考えられます。そして、売上が落ちる可能性は小さくありません。

じつは、高速道路料金の引き下げが行われた2009年以降、青春18きっぷの売上は激減しています。JR東日本の販売枚数でみますと、2008年度に32万9000枚あまりの売上だったのが、2009年度に28万1000枚、2010年度には23万8000枚あまりになっています。文字通り、坂道を転げ落ちるような減少ぶりです。これは、青春18きっぷより安い移動手段が生まれれば、その売上は著しく落ちる、ということを意味しています。

青春18きっぷは鉄道ファンが支えているきっぷだ、と信じている人もいますが、この数字の動きを見ると、必ずしもそうではないことがわかります。高速道路料金の引き下げで、青春18きっぷの3割の利用者が失われたわけですが、少なくともこの3割は、鉄道ファンではないでしょう。純粋な「移動手段」としてJRを利用していただけと思われます。

高速道路料金の無料化実験は終了しましたが、それで青春18きっぷの旅客が戻るかどうかは予断を許しません。近々、高速バス制度の改定があり、ツアーバスと路線バスの一本化が行われます。ここでは詳しく触れませんが、この制度改定で高速路線バスの運賃変更が柔軟にできるようになり、運賃競争が激しくなる可能性があります。

普通列車は長距離移動に不便になり

一方で、JRの普通列車の利便性は下がりつつあります。全国的な人口の減少傾向で、とくに地方では運転本数の削減が続いています。編成も短くなり、普通列車を長距離移動するのは不便になっています。少なくともこの数年、普通列車の中長距離利用客が便利になるようなダイヤ改正は、記憶にありません。

また、新幹線の新規開業によって、並行在来線が第三セクターに移管されることも大きな痛手です。北陸新幹線開業で長野-金沢間が第三セクターに移管され、青春18きっぷが使えなくなれば、少なくない影響が出るでしょう。北海道新幹線開業による青森-函館間も気になります。東北新幹線の新青森開業時には「青い森鉄道特例」ができましたが、同様の措置が北陸や北海道で扱われるかはまだ不透明です。もしそうした措置がなければ、青春18きっぷの売上に影響を及ぼすでしょう。

今後は下り坂か?

こうした状況を見るにつけ、青春18きっぷの売上は、今後は下り坂になっていくと考えるほうが自然です。高速バスの格安路線網がさらに充実し、普通列車が不便になり、並行在来線の利用ができなくなってしまったときに、青春18きっぷ利用者はどの程度残るのでしょうか。もし、今の半分以下の利用者数になってしまうのなら、青春18きっぷに終焉が訪れるかもしれません。

そんな時期がこないことを祈りたいものです。

青春18きっぷパ-フェクトガイド

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