秋田県由利本荘市の由利高原鉄道鳥海山ろく線が、台湾鉄路管理局の平渓線と姉妹鉄道協定を結ぶことがわかりました。2014年4月30日に調印式が行われます。
縁もゆかりもない路線同士
由利高原鉄道鳥海山ろく線は、羽後本荘-矢島間23.0kmを結ぶローカル線です。全身は1938年に全通した旧国鉄矢島線で、1985年に第三セクター化され由利高原鉄道鳥海山ろく線となりました。
一方の平渓線は、台北近郊の三貂嶺(さんちょうれい)-菁桐(せいとう)間を結ぶ12.9kmを走る路線です。日本統治下の1922年に開業した炭鉱専用線が前身で、沿線には「老街」と呼ばれる古くからの商店街が残されています。また、車窓からは渓谷も楽しめ、風光明媚な観光路線として、近年は台湾国内でも人気が出てきています。
とはいえ、実のところ、この2路線は、お互い縁もゆかりもありませんし、ローカル線という以外に共通点はあまり見つかりません。しかも、平渓線は観光客で大賑わいの路線ですが、由利高原鉄道は賑わっているとはいえません。また、平渓線は旧炭鉱路線で、渓谷も美しいですが、由利高原鉄道は炭鉱路線ではありませんし、渓谷沿いを走るわけではありません。
それが姉妹鉄道になったのはどういう経緯なのでしょうか。地元紙の秋田魁新報によりますと、由利高原鉄道の春田啓郎社長が、台湾鉄路管理局に直接協定締結を打診したそうです。その背景には、台湾では日本の鉄道路線に対する関心が高く、由利高原鉄道のフェイスブックページの読者の1割が台湾人だった、ということがあったようです。3月10日、11日には台湾鉄路管理局の関係者が鳥海山ろく線を視察に訪れ、協定締結の内諾が得られました。
日本と台湾のローカル線同士の提携はこれが初めてではありません。阿里山森林鉄路は、静岡県の大井川鐵道と姉妹鉄道ですし、JR北海道と台湾鉄路管理局のSL列車も姉妹提携しています。こうした提携関係が、台湾人観光客の誘致につながれば、ローカル線の新しい利用者になってくれるでしょう。
筆者が平渓線に乗ったときは、観光客が大挙して乗ってきて、ラッシュアワーかと思うくらいの大混雑でした。若い女性客や家族連れも多く、日本のローカル線とはちょっと客層が違っています。こうした幅広い客層の観光客が、日本のローカル線にも来てくれたら、と願わずにはいられません。