格安航空会社バニラエアが2014年7月にも奄美空港に就航するようです。地元紙の南日本新聞が報じました。それによりますと、バニラエアは1日1便の成田~奄美線の開設を目指しているとのことです。
JAL独占で航空券価格が高止まり
奄美空港は、鹿児島県奄美大島にある空港です。手元にある2011年の空港乗降客数統計では、奄美空港は全国36位の利用者数。本土以外にある空港では、那覇、石垣、宮古に次いで4位で、年間約53万人が利用しています。利用者数からすれば帯広空港や釧路空港程度の水準になりますが、羽田便はJALが1日1往復しているだけ。そのため航空券価格は高止まりしています。
帯広や釧路並みの利用者数があるなら、東京路線は1日数便の需要があるはず。ならば、成田路線の新規参入でも採算があうのではないか、というのがバニラの目論見と思われます。奄美にはANA系列の航空会社は一切乗り入れていないため、ANA系列のバニラとしては利害調整が不要である、という点も考慮されたでしょう。こう考えると、バニラの成田~奄美路線は成功の可能性は高いうえに、ANAグループとしては失うものはなにもない、というようにもみえます。
スカイマークは失敗したが
ただ、奄美空港の格安航空として思い出されるのがスカイマークの失敗です。スカイマークは2010年9月1日~10月30日と2011年3月27日~10月29日の間、鹿児島~奄美線を開設していました。しかし、搭乗率は50%前後に低迷し、合計で1年もたずに撤退しました。1日1往復と使い勝手が悪かったことも理由の一つのようですが、「離島路線」特有の難しさもあったようです。
離島路線を運航しているJAC(JAL系)は、地元に長く根付いており、利害関係者も島内に多いでしょう。そのため、安い航空会社が参入してきても地元の業務客や公務員がJACからなかなか離れないのです。そのため、新規航空会社の利用は伸び悩みがちで、苦戦する要因となっています。都会の観光客だけの輸送で安定した搭乗率が維持できればいいのですが、簡単ではありません。奄美は沖縄と違って、それほど多くの観光客が訪れるわけではないからです。
世界遺産に登録されるか?
ただ、奄美からの東京路線の絶対的な少なさを考えれば、成功の可能性はあるでしょう。スカイマークが失敗したのは鹿児島~奄美線であって、東京~奄美線ではありません。東京から奄美への観光客が増えれば、新しいリゾート路線として注目を浴びるかもしれません。
その予兆はあります。奄美群島は2013年に世界遺産の暫定リストに掲載され、数年以内に世界遺産に登録される可能性が高くなりました。現時点では世界遺産登録はまだ不透明ですが、暫定リストに載っただけでも観光客を増やす効果はあります。
「世界遺産前の奄美へ」。そういうイメージが広まれば、バニラエアの成田~奄美線も成功するのではないでしょうか。