JR北海道が2020年度の区間別の輸送密度と収支状況を発表しました。新型コロナウイルス感染症の影響で全体的に輸送密度、収支とも悪化。宗谷線名寄~稚内間は輸送密度が200を割りました。
7年連続全区間で赤字
JR北海道は経営危機が表面化した2014年度から、区間別輸送密度や収支状況を公表しています。その2020年度分を公表しました。新幹線を含めたJR北海道の全路線を25区間に分けたものです。
2020年度も道内の全線区が営業赤字です。全線区が営業赤字となるのは、線区別収支の公表を始めた2014年度から7年連続です。合計の赤字額は841億1590万円となり、過去最大となりました。前年度に比べて赤字が1.5倍に増えています。
まずは、その数字を輸送密度順にランキングしてみましょう。黒字路線が一つもないので、営業損益は「営業損失」としてマイナス表記を省略しました。( )内は前年度です。
路線名 | 区間 | 輸送密度 (人/日) |
営業損失 (百万円) |
---|---|---|---|
根室線 | 富良野~新得 | 57(82) | 734(863) |
留萌線 | 深川~留萌 | 90(137) | 627(661) |
日高線 | 鵡川~様似 | 95(104) | 622(633) |
根室線 | 釧路~根室 | 150(238) | 1,194(1,108) |
宗谷線 | 名寄~稚内 | 165(316) | 2,641(2,505) |
根室線 | 滝川~富良野 | 190(386) | 972(1,089) |
釧網線 | 東釧路~網走 | 236(372) | 1,689(1,613) |
室蘭線 | 沼ノ端~岩見沢 | 305(388) | 1,161(1,108) |
函館線 | 長万部~小樽 | 349(618) | 2,806(2,353) |
日高線 | 苫小牧~鵡川 | 476(528) | 292(331) |
石北線 | 上川~網走 | 404(710) | 3,491(3,415) |
石北線 | 新旭川~上川 | 600(1,047) | 1,043(1,026) |
宗谷線 | 旭川~名寄 | 827(1,336) | 3,126(2,633) |
根室線 | 帯広~釧路 | 897(1,450) | 4,485(4,061) |
富良野線 | 富良野~旭川 | 1,027(1,419) | 986(1,015) |
石勝・根室線 | 南千歳~帯広 | 1,570(3,246) | 3,975(3,975) |
函館線 | 函館~長万部 | 1,443(3,650) | 7,934(6,766) |
室蘭線 | 長万部~東室蘭 | 1,924(4,466) | 2,910(1,757) |
北海道新幹線 | 新青森~新函館北斗 | 1,326(4,645) | 14,429(9,347) |
室蘭線 | 室蘭~苫小牧 | 3,166(6,310) | 3,721(2,748) |
函館線 | 岩見沢~旭川 | 3,739(7,682) | 5,777(3,642) |
札沼線 | 桑園~医療大学 | 12,555(17,552) | 17,878(2,260) |
千歳・室蘭線 | 白石~苫小牧 | 24,422(45,232) | |
函館線 | 札幌~岩見沢 | 26,472(41,284) | |
函館線 | 小樽~札幌 | 28,615(45,565) | |
全線 | 2,758(4,926) | 84,159(55,183) |
特定地方交通線並みに
全ての区間で輸送密度が悪化していますが、減少率が高いのは特急が運行する主力路線です。新型コロナウイルス感染症の影響で、出張や観光で長距離列車に乗る旅客が激減しました。函館線の岩見沢~旭川間は前年度7,682が3,739と51%減。室蘭線の室蘭~苫小牧間は6,310が3,166と50%減となりました。
特急走行線区で最も輸送密度が低かったのは宗谷線名寄~稚内間(宗谷北線)で、前年度316が165になりました。特急走行線区としては唯一の200割れで、かなり厳しい数字と言えます。
北海道新幹線も激減しており、前年度4,645が1,326。なんと71%の減少です。新幹線でありながら、第一次特定地方交通線水準の2,000を大きく割り込む輸送密度に落ち込んでしまいました。
輸送密度の落ち込みが比較的小さかったのは、特急が走らないローカル線で、たとえば室蘭線の沼ノ端~岩見沢は前年度388が305で、21%減と踏みとどまりました。通学輸送がメインの路線のため、観光客や出張客の減少の影響を受けなかったとみられます。
全体としては、6線区が輸送密度200を割り込みました。輸送密度200は、JR北海道が「赤線」と分類し、バス転換の協議を求める水準です。
ドル箱の札幌圏の減少も深刻です。観光や出張利用の少ない札沼線こそ28%減で踏みとどまりましたが、それ以外の路線は40%以上の落ち込みで、大きな打撃を受けました。
JR北海道全体の輸送密度は2,758で、第二次特定地方交通線レベルとなっています。
ドル箱で収益落ち込み
収益面でも、落ち込みが激しいのは特急走行線区や札幌圏といったドル箱です。前年度22億円の赤字にとどめた札幌圏は、178億円もの赤字を計上。特急が走る岩見沢~旭川間は前年度36億円の赤字が57億円に増えています。北海道新幹線も前年度93億円が144億円と、50億円以上も赤字が増えました。
一方、ローカル線では収支が改善した区間もあります。根室線・滝川~富良野~新得間や、留萌線などでは、赤字が減少しました。もともと収入が少なかったところ、収入の減少を上回る経費節減ができた、ということでしょう。
JR北海道全体で841億円という赤字は膨大です。新型コロナウイルス感染症の一時的な数字と思いたいところですが、非常に深刻な状況であるのは間違いありません。