函館線・余市~小樽間でBRT化検討。北海道新幹線並行在来線で新提案

長万部~余市はバス転換の流れ

北海道新幹線の並行在来線のうち、余市~小樽間について、BRTを走らせる検討が行われます。地元の余市町が提案しました。

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対策協議会第8回会議

北海道新幹線は、新函館北斗~札幌間の延伸工事が進められています。延伸にあわせて、並行在来線である函館線・函館~小樽間287.8kmがJR北海道から経営分離される予定で、この区間を鉄道として残すか、バス転換をするかが焦点になっています。

この問題を話し合うのが、沿線15市町などで構成する「北海道新幹線並行在来線対策協議会」です。協議会は函館~長万部間147.6kmを話し合う「渡島ブロック」と、長万部~小樽間140.2kmを話し合う「後志ブロック」に分けられ、その第8回会議が、2021年4月21日(後志)と26日(渡島)の2日間にわたり開かれました。

このほど公開されたその議事録で、余市町長が、代替交通機関としてBRTも検討に含めるよう求めたことがわかりました。

H100形

輸送密度2000人超

北海道新幹線並行在来線のうち、「山線」と呼ばれる長万部~小樽間について、鉄道を存続する場合に毎年20億円規模の赤字が出ることが、今回の協議会資料で示されました。その内容については、こちらの記事をご覧ください。

毎年20億円の赤字というのは、地元自治体で補填するには大きすぎます。長万部~小樽間の輸送密度は623(2018年度)に過ぎないこともあり、鉄道存続へのハードルは高いとみられています。

ただ、余市~小樽間の輸送密度は2,144もあり、特急の走らない区間としては比較的高い数字です。そのため、対策協議会でもこの区間だけは小樽~長万部間から切り分けて、鉄道存続の場合の収支を試算しています。

余市町長は第8回会議の席上で、余市~小樽間について「輸送人員2,000の数字は(帯広~)釧路より多い」と指摘。「余市・小樽間に関しては、維持できる可能性もあると、JRとも議論する必要がある」と述べ、JRが引き続き運営することの議論を求めました。

BRT化の検討要求

一方で、バス転換も視野に入れ、「2連バスを走らせる可能性や、仮に並行在来線が無くなった場合の仮定の話として、線路用地を走って輸送することが可能なので、そういう詳細な論点も付け加えた方が良い」と述べ、連節バスを使ったBRT運行も検討すべきと主張。国交省でのBRTに関する議論への参加も求めました。

これに対し、北海道の交通企画監は「2,000人運ぶのが大変なことというのは理解している。恐らく事業主体になる中央バスもしくはJRバスと協議しながら、BRTを含めて連節バスといったものがないと今後の対応ができないかもしれないので、多様な角度から検討を深めていきたい」と返しました。道として、BRT化の検討を認めたことになります。

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深い議論は行われず

対策協議会は、並行在来線について、鉄道として維持するのか、バス転換するのかの方向性を決めるのが大きな目的です。ただ、議事録を読む限り、今回の会合で深い議論は行われなかったようです。

今回の会合では、鉄道存続とバス転換の場合の、それぞれの30年間の収支見通しが示されました。しかし、試算はおおざっぱで、各自治体の首長が説明を聞いただけで終わった形です。次回会合は9月頃に設定され、道がより詳しい資料を示すことになりました。

バス転換の流れ

それでも、今回のわずかな議論からうかがうに、後志ブロックの長万部~余市間については、バス転換の流れが決定的になっているようにも感じられます。というのも、鉄道を存続した場合の試算で巨額の赤字が示されたにもかかわらず、その内容に関する質疑がほとんどなかったからです。

渡島ブロックの函館~長万部間に関しては、鉄道を維持する場合にかかる「初期投資」の位置づけや、減価償却の範囲、貨物の輸送量の見通しといった、鉄道存続を想定した質疑がありました。函館~長万部間は貨物輸送があるため、鉄道を維持することが前提になっていて、旅客列車を残す場合の負担額が、沿線自治体の関心事になっているといえます。

これに対し、長万部~小樽間では、鉄道維持を目指すなら不可欠といえる、そうした質疑がほとんどありませんでした。となると、鉄道維持を真剣に考えている自治体は余市町以外になく、少なくとも長万部~余市間のバス転換の流れは決定的と判断せざるを得ません。

余市町長の発言は、そうした状況を受けたものといえます。余市~小樽間については、余市町長の求めるJR線での存続はいまさら困難で、三セク鉄道に転換するにしても地元負担が大きすぎます。となると、線路を専用道として活用するBRTが、代替交通の一つの候補になっていく可能性はありそうです。(鎌倉淳)

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