JALが春秋航空日本を子会社化する方針が明らかになりました。実現すれば、国内線を運航する格安航空会社LCCは、全社が大手航空会社系列となります。
中国系航空会社
春秋航空日本は、中国(上海)のLCCである春秋航空の系列会社として、2012年に設立されました。初就航は2014年8月で、成田~広島線、高松線、佐賀線を開設。その後、天津やハルピンといった中国路線を重点的に展開し、中国人旅行客のインバウンド輸送を得意としてきました。
春秋航空系列とはいうものの、日本国内に本社を置く日本企業です。航空会社には外資規制があるため、春秋航空の出資は33%にとどまり、投資会社のほか、JTBやJALなどが出資してきました。現在のJALの出資比率は約5%です。
新型コロナで規模縮小
春秋航空日本は中国路線が基軸だったために、2020年春以降、新型コロナウイルス感染症の影響で大きな打撃を受けました。国際線の運航は休止。国内線の運航も主に土休日のみで、会社存続のために細々と飛ばしているような状況に陥っています。
2020年4月に官報に掲載された第8期決算公告によりますと、2019年12月期の売上高は148億円。27億円の純損失を計上しています。株主資本は85億円のマイナスとなっていて、債務超過に陥っていました。
2020年12月期の決算は未発表ですが、売上高は非常に少ないとみられ、巨額の赤字を計上したと推測されます。事業を存続するならば、資本増強は不可欠な状況となっていました。
JALの連結子会社に
春秋日本航空に少額出資してきたJALは、2020年11月に自社の第三者割当増資を発表した際、資金の使い道として春秋航空日本への投融資資金を挙げていました。そのため、JALが春秋航空日本への出資比率を高めるのは既定路線でしたが、その投資がどの程度の額になるかは未発表でした。
それが明らかになったのが、2021年4月21日。日本経済新聞同日付電子版によりますと、JALは春秋航空日本に対し、6月をメドに数十億円を追加出資し、同社株の過半数を取得する方針とのことです。これが事実の場合、春秋航空日本はJALの連結子会社になるとみられます。
JALは、すでに国内LCC2位のジェットスター・ジャパンの株式の50%を取得し非連結子会社化しています。増資の際には、ジェットスターへの投融資も資金の使い道としてあげていましたので、こちらも51%以上の連結子会社にする可能性がありそうです。
また、JALは100%出資の完全子会社として、国際線中長距離LCCのジップエアも保有しています。さらに春秋航空日本を連結子会社とした場合、JALにとっては3社目のLCC子会社となります。
全LCCが大手傘下に
JALは、コロナ後の観光需要の復活などを見据えて、中国本土の発着枠を獲得しやすいLCCを傘下に収めたことになります。一方、春秋航空(上海)としても、JALと協業できるなら悪い話ではないでしょう。JALが将来的に、3社のLCCをどう扱うのかは不明ですが、当面、春秋航空日本には、対中国のインバウンド輸送を期待するとみられます。
日本国内線を運航する他のLCCとしては、最大手のピーチ・アビエーションがANAの連結子会社です。大手資本に属さないLCCとしては、他にエアアジア・ジャパンがありましたが、2020年11月に破綻しました。
エアアジア破綻後、春秋航空日本は、日本で唯一の大手資本に属さない独立系LCCという存在でしたが、増資によりJALの子会社に収まることになります。これで、日本国内線を運航するLCCは全て大手航空会社の傘下となります。(鎌倉淳)