四国新幹線の高松駅位置の案を、地元経済団体が提言しました。JR高松駅のほか、栗林駅、伏石駅など、4案が示されています。未来の「新高松駅」の候補をみてみましょう。
香川経済同友会が提言
四国新幹線高松駅に関する提言をしたのは、香川経済同友会です。同会は四国新幹線整備促進期成会に参画し、2037年の四国新幹線開業を目指して活動しています。
「新幹線の駅を見据えたまちづくりは、開業の20年~30年前から検討しても早くない」として、2月12日、同友会の代表幹事らが県庁と市役所を訪れ、浜田恵造知事と大西秀人市長に提言書を手渡しました。
提言の内容は、「四国新幹線の路線・駅の設置位置の検討」「まちづくりと交通ネットワーク再構築など、受入体制の整備」「四国新幹線整備の経済効果を定量的に示す」「推進組織の設置」の4項目。なかでも注目が、新幹線高松駅の位置でしょう。
四国新幹線は、瀬戸大橋から分岐して、高松を経て徳島に至る路線、松山に至る路線、高知に至る路線の3つが構想されていますが、ルートの詳細は未定です。
駅位置の選定も進んでおらず、四国側の最初の駅である宇多津駅に新幹線ホーム予定地が確保されていたり、松山駅高架化で新幹線整備を見据えた議論が始まっている程度です。高松駅をどこにするかは、新幹線のルート選定に関わる重要なポイントですが、現時点では白紙と言っていいでしょう。
そこで、提言では、「早い段階から、高松市を中心として、地域の受け入れ体制を整備していくことが重要」として、四国新幹線高松駅について、現JR高松駅、JR栗林駅、琴電伏石駅、高松空港付近の4案を提示しました。いわゆる「新高松駅」をどこにするかという議論です。順に見ていきましょう。
JR高松駅併設
現在のJR高松駅に併設する案です。この場合は、「新高松駅」とはなりません。現在の高速バスターミナル付近にホームを設置する計画です。隣接する琴電高松築港駅も、新幹線に平行する形で接続します。
高松駅には、JR在来線、琴電、路線バス、高速バスターミナルがあり、ここに新幹線が整備されることにより、交通結節機能が高まります。
新幹線の線路は、宇多津方面は在来線に沿う形でスペースを確保します。高松駅では高速バスターミナル付近にホームを設置、高松城址の南を抜けて道路上に高架を作り徳島方面へ向かう、という経路を想定しているようです。
実現すれば利便性抜群ですが、市街地の中心部に新幹線を通すため、用地確保のハードルが高そうです。
JR栗林駅付近
1970年代、当時の本州四国連絡橋公団は、栗林駅付近に新幹線駅を設置することを想定し、イメージ図を作っていたそうです。上のイラストも、それに基づいています。
宇多津方面からは、栗林公園をトンネルで抜けて栗林駅付近に至り、徳島方面に向けては、JR高徳線と平行して路線を整備します。
栗林エリアは文教地区、住宅地域で、市の中心部である瓦町にも隣接します。琴電琴平線も近くを交差していて、同線にも新駅を設置することにより、高徳線、琴電琴平線と結節する総合駅となります。高松市の新しい拠点として整備されることでしょう。
琴電伏石駅付近
琴電伏石駅は、2020年11月に開業したばかりの新駅です。東西方向に国道11号線バイパス、高速道路が整備されています。新幹線は高高架として高速道路上へ整備するか、高速道路に並行して整備します。
周辺は住宅地域で、近隣には大規模なショッピングモールとして「ゆめタウン高松」があります。また、伏石駅付近ではバスターミナルも整備中です。
伏石駅は、周辺地域の交通結節点として設置されました。ここに新幹線駅を加えれば、高松市南部のターミナルとしての機能が高まります。ただ、高松市中心部や周辺地域からのアクセスがいいとはいえないので、電車、バスなどにより利便性向上を図る必要があります。
高松空港付近
本州方面から直接高松空港に乗り入れ、そのまま徳島方面に向かいます。高松空港の標高は185mあるため、地下駅で整備します。
この案が実現すると、高松空港から四国の各県都に1時間程度でアクセスできるようになり、高松が四国にとっての空路と陸路のハブになることが期待されます。
ただし、空港利用に特化した新幹線駅となるため、高松市内へのアクセス整備が必要になります。新幹線への乗り継ぎを考慮するなら、高松市内への鉄軌道の整備が求められます。たとえば、琴電仏生山駅から分岐する、高松空港アクセス鉄道などの検討が必要となるでしょう。
栗林駅併設が優位か
以上が、提言書の内容を基にまとめた、4つの駅位置案の概要です。
筆者なりの私見を最後に述べておくと、4案のうち、もっとも便利そうなのはJR高松駅併設案ですが、新幹線ルートの用地確保が難しそうです。海に近いため、地下駅にするとかなり深い位置になりそうですし、地上の場合は、徳島方面への高架をどこに作るのかが難題に思えます。
栗林案は、高松駅に比べれば新幹線ルートの用地確保が容易そうです。在来線と接続して高松駅へのアクセスも確保されますし、琴電新駅ができれば、市中心部の瓦町へも便利です。4案のなかでは、もっとも優位性が高い印象です。
伏石案は、郊外エリアの駅となるため、新幹線ルートの用地確保がしやすいのが長所でしょう。一方で、市街地から離れているうえに、JR在来線と接続しないのが難点といえます。
高松空港案は、同空港の機能性を高めるという視点では抜群ですが、高松市民が使うには不便すぎます。高松駅周辺から新幹線を利用する場合、坂出や宇多津に出た方が早い、ということになります。高松市民の利便性を犠牲にしてまで、空港に新幹線を通す意味はなさそうなので、この案はもっとも採用可能性が低いでしょう。
四国新幹線が現実に2037年にできるかはともかくとして、早い段階から駅位置を決めてスペースを確保しておくことは重要です。こうした議論が出てくることは、将来の新幹線網整備にとってよいことではないでしょうか。(鎌倉淳)