「京都河原町駅」か「四条河原町駅」か。阪急京都線河原町駅の改称にまつわる議論の結末はどうなる?

京都への鉄道路線のはずなのに、「京都」と名の付く駅名がない。阪急電鉄京都線の話です。

阪急電鉄京都線には桂、西京極、西院、大宮、烏丸、河原町の6つの駅が京都市内に設置されています。しかし、どの駅にも「京都」という名称は付いていません。

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京都線の路線図に「KYOTO」の文字がない

大阪の阪急梅田駅で、「京都線」の案内掲示板や列車の行先表示に表示されるのは「河原町」「北千里」「高槻市」などです。京都の事情を知らない観光客ならば、どの列車に乗れば京都市に行けるのかわかりませんし、どこで降りたら京都の中心地なのかもわかりません。日本人観光客ならそこまで京都の地理に疎い人は少ないかもしれませんが、外国人ならどうでしょうか。京都線の路線図をいくら見ても、「KYOTO」という駅名はないのです。

こうした問題意識は当事者の阪急電鉄にもあるようで、最近、同社は、河原町駅を「京都河原町駅」と改称することを検討しているそうです。

阪急京都線
写真:阪急電鉄

地元は「四条河原町」を主張

ところが、これに対して地元の商店街組合が反対を表明しました。変更するのならば、「京都河原町駅」ではなく、「四条河原町駅」にすべきである、という意見です。

現在の阪急の河原町駅は、四条河原町の交差点の真下にありますので、「四条河原町駅」は位置関係を正確に示しています。京都の路線バスのバス停も「四条河原町」であり、鉄道駅名がバス停と一致すれば、観光客にもわかりやすくなるでしょう。

しかし、「四条河原町」してしまうと、列車の行先表示に「京都」の名前が表示されないという問題点は未解決のままになります。一方で地元の意見にも一理あるだけに、阪急電鉄も頭を抱えているようです。

この問題について、京都新聞が2013年4月6日付で報道するとにわかに注目を集めました。読者の意見は「四条河原町駅」への支持が多いようで、インターネットの調査などでも、「四条河原町駅」が支持を集めました。でも、果たしてそれでいいのでしょうか。

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地元民には不便がない

こうした「行き先がわかりにくい」というのは京都だけの問題ではありません。同じ阪急では起点の梅田にも神戸線の終点三宮にも、都市名が入っていません。地元民にとってはそれで不便は生じていないのもまた事実です。

阪急に限った話ではありません。阪神の「梅田」、京阪の「淀屋橋」「出町柳」、南海の「難波」など、似た例を探せば枚挙に暇がありません。東京でも同様で、「新宿」「渋谷」「上野」などに「東京」の冠は付けません。

しかし、同様な状況で駅名に都市名を入れた鉄道会社もあります。それが近鉄で、2009年にそれまでの「近鉄難波駅」「上本町駅」を「大阪難波駅」「大阪上本町駅」と改称しました。近鉄は名古屋などへの長距離特急を運転していますので、遠方からの旅客に配慮したのでしょう。

上記の「三宮」や「梅田」「淀屋橋」などにしても、車内放送などでは「神戸三宮」「大阪梅田」「大阪淀屋橋」などど案内されているのが現状です。「東京渋谷」「東京新宿」などの車内放送は聞いたことがありませんので、この点については関西のほうが親切といえるかもしれません。ただ、東京の場合は「東京」と表現すると「東京駅周辺」のエリア名を指すことにもなりますので、都市名を表示するとかえって混乱の元になる可能性もありそうです。

より親切な表記とは?

結局、大事なのは旅客に対して何が親切か、という視点です。そういう視点に立てば、「三宮駅」よりは「神戸三宮駅」のほうが親切ですし、「梅田駅」よりは「大阪梅田駅」のほうが親切でしょう。その意味では、「四条河原町」よりも「京都河原町駅」のほうが、鉄道利用者に対しては親切です。となると、「河原町」をめぐる議論の結末は見えてくるのではないでしょうか。

筆者の個人的な意見としては、「京都河原町駅」のほうが、京都を代表するイメージが感じられます。四条河原町の商業エリアは、最近、京都駅前の商業エリアとの競争が激しくなっています。ならば、「四条」という伝統のエリア名にこだわるよりも、「京都」という都市を代表する名称を旗印にしたほうが、今後の繁栄が期待できる、と思ってしまうのです。

どうしても「四条」の名称を入れたいのであれば、「京都四条河原町駅」でいいでしょう。長い? 確かに長いですが、長ければ略称が生まれます。どういう略称になるかは、地元利用者が決めることなので、それに任せればいいのではないでしょうか。

ただ、阪急としては、地元の意見を無視して軋轢を生むのを好まないようで、最終的に駅名変更は行わない方向に傾きつつあるようです。何も変わらない、というのもまた京都らしくていいのかもしれません。

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