小田急の複々線効果はどこへいった? 首都圏で遅延の多い路線、少ない路線ランキング2020年版

ワースト1位は千代田線

国土交通省では、首都圏のおもな鉄道路線の遅延状況を毎年公表しています。その最新版が発表されました。首都圏で遅延が多い路線、少ない路線について、最新のデータでランキングにしてみました。

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首都圏45路線の遅延状況

この資料は「東京圏の鉄道路線の遅延『見える化』」というもの。2018年度のデータが2020年2月10日に公表されました。首都圏45路線について、1ヶ月(平日20日間)あたりの遅延証明書の発行日数を集計したものです。

そのデータに基づき、各路線の遅延した日数について、当サイトでランキングにしてみました。

首都圏鉄道路線遅延総合ランキング
順位 路線名 全遅延日数 対前年度比
1位 メトロ千代田線 19.8 +1.4
2位 JR中央快速線・中央本線(東京~甲府) 19.0 +0.1
2位 JR中央・総武線各駅停車(三鷹~千葉) 19.0 ±0.0
4位 小田急線 18.8 +4.0
5位 JR埼京・川越線(大崎~新宿~武蔵高萩) 18.3 -0.1
5位 メトロ東西線 18.3 +1.2
7位 JR横須賀・総武線(大船~東京~稲毛) 18.1 -0.5
8位 JR東海道線(東京~湯河原) 17.7 -0.2
8位 JR京浜東北・根岸線(大宮~大船) 17.7 -0.1
10位 JR宇都宮・高崎線(上野~那須塩原・神保原) 17.2 -1.9
11位 JR山手線 16.7 -0.2
12位 メトロ半蔵門線 16.1 +2.4
13位 メトロ南北線 15.7 +1.9
14位 メトロ丸ノ内線 15.6 +2.6
15位 JR常磐線各駅停車(綾瀬~取手) 15.4 -0.2
16位 メトロ有楽町線 15.3 +0.6
17位 東急東横線 14.6 -0.5
18位 メトロ副都心線 14.5 +1.2
19位 京成本線(支線含む) 13.8 +3.8
20位 メトロ日比谷線 13.7 +0.8
21位 東急田園都市線 13.3 +2.1
22位 東急目黒線 13.0 -1.5
23位 メトロ銀座線 12.5 +3.0
24位 JR常磐快速・常磐線(上野~羽鳥) 12.3 +0.6
25位 JR武蔵野線(府中本町~西船橋) 12.0 +1.4
26位 都営三田線 11.6 -2.5
27位 西武池袋線 11.5 +0.4
28位 JR京葉線(東京駅発着時) 11.1 +0.6
29位 都営新宿線 10.8 +3.3
30位 JR青梅線(西立川駅発車時) 10.5 -2.7
31位 西武新宿線 10.3 -0.3
32位 JR横浜線(東神奈川~八王子) 9.2 +0.1
33位 都営浅草線 8.9 -0.6
34位 JR南武線(川崎~立川) 7.3 +0.3
35位 京王線 6.5 +1.5
36位 京急線(品川~横浜) 5.7 +0.1
37位 都営大江戸線 5.0 +0.1
38位 相鉄線 4.3 +0.1
39位 東武伊勢崎線 4.0 -0.2
40位 東武東上線 3.5 +0.5
41位 東急池上線 3.4 -1.7
42位 東急大井町線 2.0 -3.5
42位 京王井の頭線 2.0 -1.2
44位 東急多摩川線 1.7 -0.2
45位 東武野田線 1.1 ±0.0
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ワーストはメトロ千代田線

全遅延日数でワースト1位に輝いたのは、東京メトロ千代田線。JR各線を押さえてのトップとなりました。20日のうち19.8日で遅延が発生していることになりますので、ほぼ毎日といっていいでしょう。千代田線は、対前年度で遅延が1.4日も増えていますが、直通乗り入れ先の小田急線も遅延が増えており、その関連がありそうです。

同率2位で並んだのは、中央快速線と、中央・総武線各駅停車。20日のうち19.0日で遅延が生じており、こちらもほぼ毎日。ダイヤ通り動く平日は月に1回程度、ということになります。

小田急複々線化効果は?

4位に入ったのが小田急線です。もともと遅延の多い路線ですが、2018年度は対前年度比4.0日増の18.8日と、大きく数字を悪化させました。

小田急は2018年3月に代々木上原~登戸間の複々線化が完成し、線路容量に余裕ができたはず。今回の調査は2018年度なので、複々線化したばかりの年度であり、そのタイミングで遅延が増えるというのは、やや意外な結果にも感じられます。

実際、小田急は2018年8月29日のプレスリリースで、複々線化により朝ラッシュ時の遅延が減少したとPRしています。「下北沢駅への上り到着の平均遅延は、前年同期比で1分以内にまで改善し、遅延時間や回数も減少しています」という発表内容でした。

一方で、国土交通省のデータでは遅延日数は増えているわけで、年度後半に遅延が激増したのでしょうか。なんであれ、複々線効果はどこへいった? と首をかしげたくなります。

小田急線

JRの長大系統が上位に

5位にJR埼京・川越線とメトロ東西線が並んだ後は、7位横須賀・総武線、8位東海道線、京浜東北・根岸線、10位宇都宮・高崎線、11位山手線と、JR各線が続きます。いずれも20日のうち16~18日で遅延が起きており、1週間で遅延なく動くのは1日程度といえます。

ちなみに、ワースト上位10路線は、小田急やメトロも含めて全路線がJR線と直通運転をしています。JR線は運転系統が長く、遅延が生じやすい特性があるのでしょう。

遅延の常連の湘南新宿ラインがありませんが、系統として宇都宮・高崎・横須賀・総武・東海道線に別れて集計されているためで、「湘南新宿ライン」で数えたら、やはり遅延が常態化しているとみられます。

12位から14位は、半蔵門線、南北線、丸ノ内線と東京メトロ各線が続きます。今回の調査結果では、全体にメトロ線の遅延率悪化が目立ちます。

メトロ以外の民鉄線は遅延発生日数が比較的少なく、ワースト20位に入っているのは3路線のみ。小田急のほか、東急東横線が14.6日で17位、京成本線が13.8日で19位となっています。京成線は以前は遅延が少なかったのですが、最近は増えているようです。

遅延の少ない路線は?

遅延が少ないのは東武野田線。20日間に1.1日なので、ほぼ毎日ダイヤ通り運転しているといえます。東急多摩川線も1.7日、東急大井町線と京王井の頭線も2.0日と良い数字です。これらの路線は他線との相互直通運転がなく、距離も短いので遅れにくいのでしょう。

38位の相鉄線も4.3日と、比較的好成績です。ただし、相鉄線は2019年11月にJR線との直通運転を開始しており、今後は遅延が増えるのを避けられそうにありません。

直通運転がある路線としては、40位の東武東上線(3.5日)と39位東武伊勢崎線(4.0日)が健闘しています。どちらも地下鉄2路線と直通運転を実施しながらの好成績で、目を見張るものがあります。

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10分以上遅れる路線

ここまでは、全遅延のランキングでした。これを10分以上の遅延に限ってデータを見てみましょう。

日頃の鉄道利用で、10分程度の遅れなら気にならない人も多いと思います。遅延で迷惑を感じやすい、10分以上の遅延に限ってランキングにしてみました。

東京圏鉄道路線遅延・10分以上の遅延ランキング
順位 路線名 10分以上の遅延日数 全遅延日数
1位 JR埼京・川越線(大崎~新宿~武蔵高萩) 11.7 18.3
2位 JR東海道線(東京~湯河原) 11.6 17.7
3位 JR中央快速線・中央本線(東京~甲府) 10.1 19.0
3位 JR中央・総武線各駅停車(三鷹~千葉) 10.1 19.0
5位 JR横須賀・総武線(大船~東京~稲毛) 10.5 18.1
6位 JR宇都宮・高崎線(上野~那須塩原・神保原) 9.8 17.2
7位 メトロ千代田線 8.1 19.8
8位 JR京浜東北・根岸線(大宮~大船) 7.6 17.7
9位 メトロ東西線 7.3 18.3
10位 JR山手線 6.6 16.7
10位 京成本線(支線含む) 6.6 13.8
12位 小田急線 5.2 18.8
13位 JR常磐線各駅停車(綾瀬~取手) 4.8 15.4
14位 メトロ半蔵門線 4.6 16.1
15位 メトロ有楽町線 4.5 15.3
16位 メトロ副都心線 4.4 14.5
17位 JR常磐快速・常磐線(上野~羽鳥) 4.1 12.3
17位 JR京葉線(東京駅発着時) 4.1 11.1
19位 メトロ南北線 3.9 15.7
20位 メトロ丸ノ内線 3.9 15.6
21位 JR武蔵野線(府中本町~西船橋) 3.8 12.0
22位 都営新宿線 3.7 10.8
23位 東急東横線 3.6 14.6
23位 メトロ日比谷線 3.6 13.7
25位 都営浅草線 3.5 8.9
26位 東急田園都市線 3.4 13.3
27位 東急目黒線 3.3 13.0
27位 JR横浜線(東神奈川~八王子) 3.3 9.2
29位 JR青梅線(西立川駅発車時) 3.2 10.5
30位 都営三田線 2.7 11.6
31位 メトロ銀座線 2.6 12.5
31位 西武新宿線 2.6 10.3
33位 西武池袋線 2.5 11.5
33位 京急線(品川~横浜) 2.5 3.2
35位 京王線 2.4 6.5
35位 東武伊勢崎線 2.4 4.0
37位 JR南武線(川崎~立川) 1.6 7.8
38位 相鉄線 1.2 4.3
39位 東武東上線 1.1 2.5
40位 都営大江戸線 1.0 5.0
41位 東急池上線 0.6 3.4
42位 東武野田線 0.6 0.4
43位 東急多摩川線 0.6 1.7
44位 京王井の頭線 0.5 2.0
45位 東急大井町線 0.4 2.0
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大きく遅れやすい埼京線

ワーストはJR埼京・川越線で、11.7日となっています。おおむね2日に1日以上は10分以上遅れている計算です。同線は30分以上の遅延も月に2.3日も生じさせていて、大幅な遅延が起こりやすい路線といえます。

2位東海道線、3位中央線快速、総武線各駅停車、5位横須賀・総武線が、10分以上の遅延が5割を超えている路線です。

全体ワースト1位だったメトロ千代田線は、10分以上では7位の8.1日に改善。全体5位だった東西線も、10分以上では9位の7.3日に改善しています。

全体ワースト4位の小田急は、10分以上では12位の5.2日まで改善しています。前年度調査では8.0日だったので、複々線化により大幅な遅延は減少したと解釈できます。それでも、週に1日程度は10分以上の遅れが出ていることになります。

京成本線は、民鉄線で唯一10分以上の遅延でワースト10にランクインしました。10分以上の遅延が月に6.6日生じており、空港輸送を担う路線としては不安感があります。

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遅延が少ない路線

10分以上の遅延が少ないのは、東急大井町線、京王井の頭線、東急多摩川線、東武野田線、東急池上線。この5路線は、10分以上遅れるのは月に1度未満です。他線との相互乗り入れを基本的にしていない路線ばかりが並びました(東武野田線は一部列車で乗り入れあり)。

都営大江戸線、東武東上線、相鉄線も1.0~1.2日と好成績です。ただし前述したとおり、相鉄線は次の調査では成績を落としそうです。

JR線で最も成績がよかったのは南武線で1.6日。全体では7.8日と3日に1度は遅延していますが、10分以上の遅延はあまり生じないようです。

山手線に接着している路線としては、遅れが少ないのは京王井の頭線、東急池上線、都営大江戸線、東武東上線あたりでしょうか。列車の遅延にお悩みの方は、これらの沿線への引っ越しを検討されるのもよさそうです。(鎌倉淳)

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