「貨物新幹線」がついに実現するかもしれません。青函トンネルの貨物列車との共用走行問題について、抜本解決のため貨物専用新幹線の導入調査が進められています。
国交省が検討
北海道新幹線は、青函トンネルを含む区間で貨物列車と線路を共用しています。共用区間では貨物の荷崩れを防ぐため最高速度が160km/hに制限されていて、新幹線の高速化のネックとなっています。
この問題を抜本的に解決するために、国土交通省では最高速度320km/hで運転できる貨物新幹線の導入に向けて、具体的な調査を進めているそうです。
北海道新聞2019年7月10日付によりますと、国交省は「鉄道建設・運輸施設整備支援機構との検討チームで費用などを試算」しており、「JR貨物も輸送時間の短縮につながるとして前向きな姿勢」とのことです。
パレットで積み込み
同紙によれば、貨物新幹線は新造で、車内の座席を設けません。「宅配便や書籍など小型荷物を『パレット』と呼ばれる車輪付きの荷台に載せ、パレットごと車両側部のドアから積み込む方式を想定」しています。1編成10両の価格は約44億円で、「現行の旅客車両とほぼ変わらない見通し」だそうです。
コンテナを車内に丸ごと入れる方式も検討したものの、「最高時速は200キロ程度で、専用車両製造や積み替え基地などの整備に最大約6千億円かかり、費用面が課題」となり、パレット型での実現を目指す方向になったようです。
札幌で積み込み
注目点は「積み替え拠点を札幌1カ所と東北側の3カ所」に設置することでしょうか。
つまり、青函トンネル区間だけ貨物を新幹線で輸送するのではなく、東北・北海道新幹線の長距離で貨物輸送をおこなうわけです。
貨物を札幌で積み込んで、北海道新幹線でそのまま東北地方まで運びます。東北地方の積み替え拠点がどこになるかは明記されていませんが、青森、岩手、宮城の各県に1箇所ずつなどが考えられます。となると、新利府(新幹線総合車両センター)付近などは、設置の有力地点かもしれません。
仮に札幌~仙台付近を貨物新幹線で運べば、北海道と本州間の貨物輸送で、大きな時間短縮が達成できます。JR貨物にとって、悪い話ではありません。
千歳線の線路容量が空く?
また、札幌以南で貨物列車が減少すれば、千歳線の線路容量に余裕ができます。千歳線は、札幌郊外の通勤・通学輸送のほか、道南・道東方面への遠距離輸送や新千歳空港アクセスを担っていて、さらには北広島にできるボールパーク輸送も期待されています。
現状の線路容量は逼迫していますが、貨物列車が減少すれば、快速「エアポート」など、在来線旅客列車の増便が可能になります。JR北海道にとっては望むところでしょう。
一方で、東北・北海道新幹線の並行在来線にとっては、貨物輸送の減少は死活問題です。既存のIGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道、道南いさりび鉄道では、取り扱い貨物が減少すれば経営の大きな打撃となります。
北海道新幹線開業により移管される、函館本線の函館~長万部~小樽間でも大きな経営問題になるでしょう。
重量制限が厳しい
ただ、貨物新幹線は、すべての貨物を運ぶわけではありません。新幹線を高速で走らせるには、あまり重い荷物を載せることができないからです。道新によれば、「パレット式の貨物新幹線は、1編成当たりの最大積載量が約65トン」だそうです。
「1編成当たりの最大積載量が約65トン」は10両で65トンを意味し、1両あたり6.5tの積載量という計算になります。現在のE5系の1両の車両定員が最大で100名程度なので、体重65kgの旅客が100名なら6.5tとなります。
こうした重量制限のため、貨物新幹線で扱うのは「宅配便や書籍など小型荷物」だけとのこと。つまり、農産物など重い荷物は運べません。在来線の貨物列車は1編成あたり500tを運べるので、輸送力の点からも、在来線の貨物列車をすべて廃止することはできないでしょう。
「貨物新幹線」が実際にどのような形になるのか、現段階ではわかりません。ただ、青函トンネル区間を最大限活かすために、何らかの形で実現しそうな状況になってきたようです。