北陸新幹線の敦賀~新大阪間の延伸について、鉄道・運輸機構が概略ルートを公表しました。京都駅付近は想定ルートを広く設定し、東西方向での接着を考慮しているようです。
概略ルート公表
鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)は、2019年5月31日、北陸新幹線敦賀~新大阪間延伸の計画段階環境配慮書を公表しました。環境アセスメント手続きの一環です。
そのなかで、延伸の事業実施想定区域が公表されました。いわゆる概略ルートです。下図の朱線内がルート想定区域です。
具体的なルート案を単一に絞り込んでおらず、4~12km程度の幅を持った帯で示しています。配慮書では、「幅を持ったルート帯を示すことで、複数案と見なすものとします」と記載しています。
直径12kmのルート円
気になるのは、京都駅から松井山手付近駅周辺にかけての想定区域の広さでしょう。両駅の周囲には直径約12kmにも及ぶ区域円が描かれています。
配慮書では「京都駅、京田辺市(松井山手)附近駅、新大阪駅への入り方について、詳細な検討を行っていきます」と記しており、北陸新幹線京都駅が既存のJR京都駅と離れた場所に建設されるというわけではありません。
「駅への入り方」の検討を行うために、想定区域を広くとったと解釈できます。
堀川・油小路案は困難に
北陸新幹線の延伸では、JR京都駅に南北方向に入るのか、それとも東西方向で接着するかが、大きな注目点となっています。概略ルートは幅広く設定されたので、南北案、東西案のどちらにも対応できる形になっています。
距離を短くするなら、堀川通・油小路通の地下を南北に抜けるルートが合理的です。ただ、配慮書には「京都市中心市街地、伏見酒造エリアを回避した区域を選定」するとも記されています。
堀川・油小路通案は、京都の中心市街地を南北に通り抜け、伏見酒造エリア近くも通ります。したがって、配慮書の文言を見る限り、堀川・油小路通案は困難です。JR京都駅に南北(直角)で連絡するには、堀川・油小路以外に有力ルートはなく、南北案は選択肢から外れそうです。
東山から山科へ
概略ルートは、滋賀県境に近い位置まで幅を持たせていて、東西案が強く意識されているように感じられます。
たとえば、東山をトンネルで南下し、山科付近で西に進路を変え、東海道線に沿う形で京都駅に接着し、桂川西岸に抜けるルートなら、「中心市街地」と「伏見」を避けられます。東西案のほうが、ルートの選択肢が広がるため、有力と考えられます。
ただ、京都市内はルート選定が難しいため、決着まで曲折が予想されます。さまざまな議論が起こることを見越して事業実施想定区域を広くとった、という見方もできるでしょう。
松井山手はどこになる?
松井山手周辺の想定区域も広いですが、これは京都駅への接着方法によって、松井山手への入り方が大きく異なるためとみられます。
駅位置は「京田辺市(松井山手)附近」とされていますので、現在のJR松井山手駅に接着するか、接着しなくてもその近くでしょう。新幹線松井山手駅は高架駅が検討されているようですが、配慮書に明確な記載は見当たりません。
大阪市とその周辺は、基本的に地下トンネルです。都市部での地下トンネルは、可能な限り道路など公共用地の下の活用し、必要に応じて大深度も検討します。新大阪駅も地下駅になる見通しです。
全体の8割がトンネル
福井県小浜市では、JR東小浜駅近くを経由するルートが示されていて、小浜線との接続が検討されるでしょう。
一部で駅設置の運動がある京北エリアについては、ルートが通るのは黒田か大野あたりです。将来的に山陰新幹線の建設を考えるなら、分岐点にもなり得るでしょう。ただし、現時点で駅設置は想定されていません。
全体の線形は高速走行を考慮して可能な限り直線とし、最小曲線半径4000m、最急勾配15パーミルを基本としています。整備新幹線なので最高速度は260km/hとなっていますが、320km/h運転も可能になりそうな線形です。
ルート全体の8割がトンネルで、本格的な「モグラ新幹線」となります。(鎌倉淳)