「信州かいじ」という不定期列車が登場します。運転区間は新宿~松本で、これまでなら「あずさ」で運転されていたはずですが、「信州かいじ」という愛称となりました。
「かいじ」が松本へ
「信州かいじ」は新宿~松本間に設定された臨時特急列車です。2019年4月6日から6月30日の週末に運転します。下りは5/6 を除く毎土休日、上りは毎休日の運転です。
正式な列車名は「かいじ」です。下りが「かいじ55号(信州かいじ55号)」、上りが「かいじ54号(信州かいじ54号)」と表記され、「信州かいじ」は副列車名という扱いです。
新宿~松本間の特急列車に「かいじ」という愛称が付けられるのには違和感を覚える方が多いでしょう。これまでの中央線特急の考え方では、新宿~松本間特急が「あずさ」、新宿~甲府間特急が「かいじ」という役割分担だったからです。
「信州かいじ」は、この原則に反し、「かいじ」が信州の松本まで乗り入れることになります。
なぜ「あずさ」ではないのか
なぜ、「あずさ」でなく「かいじ」なのか。その理由は、停車駅を見れば察せられます。「信州かいじ」の停車駅は、「立川、八王子、大月、塩山、山梨市、石和温泉、甲府、韮崎、小淵沢、富士見、茅野、上諏訪、下諏訪、岡谷、塩尻」です。
塩山、山梨市、石和温泉の「峡東3駅」は、2019年3月16日のダイヤ改正で、すべての「あずさ」が通過することになりました。これらの駅に停まる特急は「かいじ」だけとなります。逆にいえば、新ダイヤにおいて峡東3駅に停まる特急は、「かいじ」です。
この新しい「停車駅ルール」を適用した結果、「かいじ(信州かいじ)」という、信濃と甲斐を合わせたような愛称が登場することになったと察せられます。
通過駅への救済列車
2019年3月ダイヤ改正では、「あずさ」の停車駅が大幅に削減されます。通過列車が増える自治体の反発は強く、ほぼ毎週末に運転される「信州かいじ」はその救済策にも感じられます。
それはいいのですが、愛称の設定に関しては、わかりにくさが残ります。山梨県内の利用者からみれば、「『かいじ』だから山梨県内の停車駅が多い」と理解しやすいのかもしれません。
しかし、長野県内の利用者からみれば「かいじ(信州かいじ)」という複雑な愛称よりは、「あずさ」の愛称のほうが、松本発着であることが理解しやすいでしょう。
いっそ「アルプス」に?
おそらく、JRとしては、「列車名で、ある程度、停車駅が推定できるように」という判断で、「あずさ」「かいじ」の停車駅整理を行ったのだと思います。その目的は理解できるとして、ならば違う列車名という選択肢もあったのではないでしょうか。
歴史を振り返れば、1970年代から1986年まで、「かいじ」は甲府発着の急行でした。同時期、松本発着の急行は「アルプス」です。これに倣って、中央線特急を停車駅で分類すれば、山梨県内の停車駅の多い松本発着特急は「アルプス」でもいいわけです。
だったら「スーパーあずさ」と「あずさ」でいいじゃないか、という意見もあるでしょう。ごもっともで、つまり正解のある話ではありません。なんであれ、JRには、利用者にわかりやすい列車名を採用して欲しいところです。(鎌倉淳)