国土交通省が、JAL、ANAと地域航空5社が離島路線などの維持に向けて協業すると発表しました。有限責任事業組合(LLP)を設置し、共同運航や機材部品の共同調達などを実施します。
2019年度に実現目指す
地域航空会社の協業は、北海道と九州で検討されていますが、まずは九州で、2019年度中の実現を目指します。参加するのは、九州を拠点に離島路線を手がけるJAL、ANA、天草エアライン(AMX)、オリエンタルエアブリッジ(ORC)、日本エアコミューター(JAC)の計5社です。
AMX、ORC、JACの3社が共同運航(コードシェア)や機体整備、パイロット訓練などで共同事業を始めます。この枠組みに将来は、北海道地区のANAウイングスや北海道エアシステムも加わる構想です。JAL、ANAの2社はこれを支援します。
共同事業を実施するために法人格を持たないLLPを設立します。経営統合については継続課題とし、LLP設立後3年後に検討します。
LLPは、出資者が出資額までしか事業上の責任を負わない有限責任制です。意思決定は原則として出資者全員の同意のもと行われ、出資者全員が業務執行に参加します。今回のような利害の一致する共同事業には向いています。
経営統合は当面困難
地域航空会社が運航するのは離島路線が中心で、人口減少に直面する一方でインバウンドの恩恵は少なく、採算面で厳しい状況が続いています。
そのため、国土交通省の有識者会議が対応を検討し、2018年3月に「合併や持ち株会社の設立による経営統合を模索すべき」とする報告書をまとめました。この報告書を受けて国交省、JAL、ANAと地域航空会社5社が実務者協議を開いて具体策を検討していました。
協議では経営統合についても検討しましたが、地域航空会社は規模や資本構成などが異なっており、地元自治体による補助など、支援の度合いも多様です。
そのため、経営統合には、航空会社間の関係を整理する必要があるだけでなく、地元自治体との関係や、多数の既存株主との関係を整理する必要があり、早期実現は困難と認識されました。
使用機材の統一についても業務効率が図られるものの、早期の実現は難しいとされています。
共同運航を開始へ
一方で、運航や整備に係る各社の方針や規程を統一するのは、ある程度の時間はかかるものの可能と判断されました。系列を超えた共同運航についても、前向きに検討を進めていくことが各社間で確認できました。
そのため、まずはLLCを設立し、規程の統一や共同調達による費用削減、共同運航推進や営業力強化による収入拡大をめざすことで一致しました。
今後、九州の地域航空会社では、JAL、ANAの系列を超えた共同運航が行われる見通しです。また、共通の運航規程の整備などを通じて、コスト削減や販売強化を目指します。