JR北海道が2016年度(2017年3月期)の全路線の営業損益、営業係数を公表しました。JR北海道がこれらの数字を公表するのは、3度目のことです。前年同様、鉄道路線は札幌圏を含め全路線が赤字でした。
JR北海道25区間で公表
これは、2017年11月7日に明らかにされたものです。JR北海道の路線を25区間に分けた、その営業損益、営業係数の2016年度分です。営業係数とは、100円稼ぐためにかかる費用のことです。
ここでは、JR北海道が2017年に公表した数字に基づいて営業係数ランキングを作成しました。2016年度の成績で、営業損失と営業係数は管理費を含めた数字です。( )内は2015年度です。営業損失の単位は百万円です。
順位 | 路線名 | 区間 | 営業係数 | 営業損失 |
1 | 根室線 | 富良野~新得 | 2,636(1,854) | 888(979) |
2 | 札沼線 | 医療大学~新十津川 | 2,609 (2,213) | 367(351) |
3 | 日高線 | 苫小牧~鵡川 | 1,827(802*) | 440(443*) |
4 | 日高線 | 鵡川~様似 | 1,757 (1,476*) | 886 (1,100*) |
5 | 石勝線 | 新夕張~夕張 | 1,681 (1,181) | 166(150) |
6 | 根室線 | 滝川~富良野 | 1,210(1,010) | 1,275(1,183) |
7 | 室蘭線 | 沼ノ端~岩見沢 | 1,137(965) | 1,267(1,117) |
8 | 留萌線 | 深川~留萌 | 987(1,342) | 671 (683) |
9 | 留萌線** | 留萌~増毛 | 715(2,538) | 122 (177) |
10 | 宗谷線 | 名寄~稚内 | 696 (618) | 2,672 (2,541) |
11 | 函館線 | 長万部~小樽 | 640 (573) | 2,324 (2,168) |
12 | 釧網線 | 東釧路~網走 | 590 (561) | 1,497(1,617) |
13 | 根室線 | 釧路~根室 | 542(517) | 1,038 (1,076) |
14 | 宗谷線 | 旭川~名寄 | 419(384) | 2,204 (2,109) |
15 | 石北線 | 上川~網走 | 395(332) | 3,039 (2,835) |
16 | 富良野線 | 富良野~旭川 | 381(363) | 1,018(956) |
17 | 石北線 | 新旭川~上川 | 368(296) | 861 (733) |
18 | 根室線 | 帯広~釧路 | 338 (250) | 3,869 (3,288) |
19 | 函館線 | 函館~長万部 | 214(206) | 5,586 (4,969) |
20 | 室蘭線 | 室蘭~苫小牧 | 184 (156) | 2,830(1,882) |
21 | 石勝・根室線 | 南千歳~帯広 | 176 (127) | 3,407 (1,686) |
22 | 函館線 | 岩見沢~旭川 | 170 (147) | 3,960 (2,865) |
23 | 北海道新幹線 | 新青森~新函館北斗 | 146(–) | 5,406 (–) |
24 | 室蘭線 | 長万部~東室蘭 | 143 (115) | 1,315(444) |
25 | 札幌近郊 | 小樽・医療大学~ 岩見沢・苫小牧 |
113 (105) | 5,467 (2,175) |
*日高線は苫小牧~鵡川を今年度より算出。不通区間が生じているため、( )内は、2015年度の数字。
**留萌線(留萌~増毛)は、2016年12月5日廃止
根室線富良野~新得間がトップ
営業係数でトップだったのが、根室線富良野~新得間の2,636。2016年の台風10号による被害で、東鹿越~新得間が不通となっており、復旧していません。
現在は富良野~東鹿越間のみ鉄道運行となっており、営業費用は前年度に比べて10%ほど減ったものの、営業収入が5,600万円から3,500万円へと約40%も減ってしまったため、営業係数が跳ね上がりました。ただし、費用が減ったため、収支は10%ほど改善し、赤字額は8億8800万円となっています。
続いて札沼線の医療大学~新十津川間が営業係数2,213で続きます。この区間の輸送密度は1日66人と、JR北海道で最低です。営業収益は年間1,500万円に過ぎず、1日あたり4万円ほどしか稼げていません。それに対し、営業費用が3億8200万円に達しており、営業係数が高くなっています。
赤字額最大は函館線
赤字額が最も大きかったのは函館線の函館~長万部間で、前年度比12%増の55億8600万円となりました。北海道新幹線の利用者が流れ込んで収入は増えましたが、線路などの修繕費も増加し、赤字が拡大したとのことです。
続いて、札幌圏の赤字が54億6700万円で続きます。営業収入は微増でしたが、老朽化した高架橋や線路の修繕費などがかさみ、営業費用は7%増。このため、54億円という巨額赤字となりました。
札幌圏では輸送密度は4万人を超える区間が多いのですが、線路の維持費用が重くのしかかり、利益をあげられていない様子がうかがえます。
北海道新幹線の営業係数は146
実質的に開業初年度となった北海道新幹線も、厳しい結果です。新青森~新函館北斗間で営業損失は54億600万円。116億円という大きな収益がありましたが、170億円もの費用がかかり、大幅赤字という結果でした。営業係数は146となっています。
とはいえ、新幹線に関しては、将来的には収支は改善していくとみられます。
全体をみると、営業係数が高い線区の赤字額が大きいわけではなく、営業係数が比較的良好な主力路線の赤字額が大きいことがわかります。
利用者が少なく営業係数の高い路線を廃止したところで、それだけでJR北海道の経営が好転するわけではないことを示しているといえます。そこがJR北海道の経営問題の難しい点でしょう。(鎌倉淳)