北陸新幹線の敦賀以西のルート論争が事実上決着しました。与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)の検討委員会は、福井県小浜市から南下して京都を経由する「小浜・京都ルート」を採用することで一致し、中間報告をまとめました。ただ、京都~新大阪間のルート決定は持ち越しました。
試算結果が間に合わず
与党検討委員会は2016年12月14日に、敦賀~京都間について、小浜付近を経由してJR京都駅に直結する「小浜・京都ルート」の採用を求める中間報告を取りまとめました。
このうち、京都~新大阪間のルートについては、国土交通省の新たな試算結果が間に合わなかったこともあり、結論を持ち越しています。
奈良県は通過を拒否
京都~新大阪間に関しては、東海道新幹線の北側を通る「北回りルート」と、京都府南部を通る「南回りルート」があります。
検討委は当初、南回りルートで関西文化学術研究都市の精華・西木津地区を経由することを想定していましたが、奈良県が費用負担を嫌いこれを拒否。それを受けて、学研都市の京都府域を通って新大阪駅と結ぶルートを調査するよう、国交省に新たに指示しています。
この調査結果が間に合わなかったため、京都~新大阪間のルート決定は持ち越しとなった模様で、年度内には最終決定する見通しだそうです。
合理的なのは北ルート
京都~新大阪間のルートは、建設費の面からも、所要時間の面からも北回りが合理的で、運営主体のJR西日本も北回りを主張しています。ただ、北回りルートは東海道新幹線と併走するため、コースを変え京都と奈良の県境付近に駅を設けるという南ルート案が浮上しています。
南ルートは、「京都~新大阪に別線を作る理由付けのためのルート」に見えますし、京都府に都合のいいルートです。検討委の西田昌司参院議員が京都府選出であり、あまりに政治的すぎるため、採案となる可能性は低い、と筆者はみています。
麻生財務相の発言意図は?
ところで、麻生太郎財務相が、北陸新幹線にルート決定に関して、気になる発言をしています。
産経新聞12月13日付によりますと、「北陸新幹線の延伸ルートの方針が固まったことについて『良い話だと思う』と評価」したうえで、「東京に関してはいっぱいなんだから、新宿から(大宮を結ぶ路線を)引くとかさ。そういったものも入れて計算しないと(いけない)。元の元が詰まっているのだから」と持論を展開したとのことです。
麻生氏の思いつきの発言なのか、財務官僚の意図が含まれているのかはわかりませんが、至極当然の指摘です。
新宿~大宮は在来線営業距離で28.3km(埼京線)、新大阪~京都は同39.0kmです。建設するとすればどちらも大深度で、数千億円の事業費がかかるとみられます。京都~新大阪間にもう一本新幹線を敷く予算があれば、新宿~大宮に新幹線を引くことができそうです。
「新宿~大宮」と費用対効果を比較しては?
新宿~大宮間は、整備新幹線の枠組みには入っていません。その意味では、整備新幹線である北陸新幹線のほうが建設は優先されるべきなのでしょう。
しかし、そもそもの新幹線整備計画では、北陸新幹線の想定ルートは小浜から大阪へ至るとされていただけで、京都市を通ることは記されていません。それが政治的な決定で京都経由になり、建設費が膨れあがるのだとしたら、京都~新大阪間が「整備新幹線」として建設が優先される理由に乏しいのでは、とも思います。
今後、北海道新幹線と北陸新幹線が延伸され、リニアが新大阪開業を迎えれば、「新宿~大宮」の容量不足は、「京都~新大阪」以上になる可能性が高いでしょう。ならば、両区間を比較したうえで、費用対効果が高い方を先に建設する、という考えがあってもいいのではないでしょうか。北陸新幹線が、京都暫定開業になるかもしれませんが。(鎌倉淳)