JR西日本が、三江線の廃止を正式に表明しました。廃止時期は2017年9月がメドです。本州で100kmを超える鉄道路線が全線で廃止されるのは、JR化後初めてのことです。
輸送密度は全国最低水準
三江線は広島県三次市と島根県江津市を結ぶ108.1kmのローカル線です。1975年に全線開通しましたが、過疎化やマイカーの普及などの影響で利用者はおよそ30年前の9分の1に落ち込み、赤字が続いています。
1日1キロ当たりの乗客数を示す輸送密度は2014年度に50人となっており、公表されている各社数字を見る限り、全線を通じての輸送密度としては全国最低の水準です。
写真:江津市ホームページ
9月中にも廃止届
JR西日本は、2015年10月に、沿線の自治体に対し廃止も含めた検討を申し入れており、協議が続けられてきました。
2016年9月1日には、沿線6市町の首長、議会議長でつくる三江線改良利用促進期成同盟会の臨時総会が島根県美郷町で開かれ、JR西日本米子支社の松岡俊宏支社長が出席しました。
松岡支社長は、大量輸送の鉄道の特性が発揮できていないことや、利用促進の取り組みにもかかわらず、利用者の減少に歯止めがかかっていないこと、自然災害リスクの高まりなどを理由として挙げ、三江線を全線で廃止することを表明しました。
JR西日本は、2016年9月末までに廃止を国に届け出ることもあわせて示しました。廃止届から最短で1年で廃止することができますので、廃止時期は早ければ2017年9月となります。ただ、松岡支社長は、廃止期日について、代替交通機関の検討によっては前後する可能性もあるとしています。
沿線自治体も廃止をおおむね受け入れる方向で、美郷町の景山良材町長は「残念だが受け止めざるをえない。今後の交通プランを検討したい」などと話したとのことです。
第三セクターは負担が大きすぎ
これまでの会議で、第三セクター化の検討も行われてきました。第三セクター化の年間運行費も試算され、約3億7000万〜8億5000万円に上ることが報告されています。地方自治体が毎年負担するには大きすぎる金額で、現実的ではありません。
JRとしても、利用者数からみれば、三江線の廃止はやむを得ないという判断になったのでしょう。
ただ、三江線は2013年8月の豪雨被害で全線が不通になり、約10億円をかけて2014年7月に復旧したばかりです。そのときに、地元自治体などは約4億8000万円を負担しています。
巨額の税金を投じて復旧してから、わずか3年で廃止になるわけで、廃止判断をするなら、豪雨被害の後でもよかったのではないか、という印象は残ります。(鎌倉淳)