格安航空会社LCCの誕生が相次いだ2012年。あまり知られていなかった「LCC」という言葉自体、かなりポピュラーになりました。
では、そのLCCに関して、利用者はどのような視点で見ているのか? 気になる調査が発表されました。インターネット調査会社の株式会社マクロミルが行った「LCC(格安航空会社)に関する調査」です。調査手法はインターネットリサーチ。調査期間は 2012 年 8 月 27 日(月)~9 月 4 日(火)。対象は1 都 3 県に住む 20 才以上の男女で、有効回答数は 1,000 名です。
8割近くが料金重視
調査結果概要は、以下の通り
【1】 航空会社を選ぶポイント、77%が「料金」を重視
航空会社を選ぶ際のポイントを尋ねたところ、77%の人が「料金」と回答しました。続いて「安全性」が 63%、「発着地の利便性」が 53%、「航空会社のブランド」が 33%でした。
【2】 LCC 利用者の 72%が「満足」
LCC(格安航空会社)を利用したことがあるかを尋ねたところ、利用したことがある人は 7%でした。実際に利用した LCC の満足度を聞いたところ、「満足している」(非常に満足している+やや満足している)と答えた人は 72%でした。満足している理由としては“料金が安くて安全確実に目的地にたどり着けたから”“あらかじめ広報されていた内容の通りだったから”などのコメントがありました。
【3】 LCC 利用で“運賃が安ければ許容できるものは、「ドリンクサービスが有料」
LCC を利用する際、「運賃が安ければ許容できるもの」は何かを尋ねたところ、1 位は「ドリンクサービスが有料」で 56%となりました。続いて 2 位「新聞・雑誌・機内誌が有料」49%、3 位「荷物を自分で収納する」30%でした。
【4】 今後、“LCC は日本で定着すると思う”7 割
今後、LCC は日本で定着すると思うかを尋ねてみたところ、「定着すると思う」(定着すると思う+どちらかというと定着すると思う)と答えた人は 70%でした。理由を尋ねたところ、低価格に加え、安全性を兼ね備えれば定着するという見方の人が多いようです。
と、ここまでは、わりと妥当というか、想像の範囲内の回答です。が、この調査結果の詳細を眺めると、少し気になる点が見えてきます。
レガシーキャリアの施策は意味がない?
まず、航空会社を選ぶポイントですが、重視するものの上位が「料金」「安全性」「発着地の利便性」。一方、「航空会社のブランド」は33%、「マイレージサービス」が24%、「機内サービス」は19%、「客室乗務員の接客」は17%です。この結果を素直に受け止めるなら、大手航空会社(レガシーキャリア)が力を入れているサービスは、軒並み「あまり意味がない」ということになります。
次に、LCC 利用で“運賃が安ければ許容できるもの”については、「ドリンクサービスが有料」56%、「新聞・雑誌・機内誌が有料」49%で、半分の人が機内サービスの有料化には理解を示している人が多いのが伺えます。この調査では回答が3つまでなので、多くの人はこの2つの項目のどちらかには「マル」を付けたのでしょう。
そのあと、「荷物を自分で収納」「客室乗務員の服装」「ヘッドフォンが有料」が30%前後で並んでいます。さらに、「インターネットでしか予約できない」と「客室乗務員の接客が簡易」が20%程度で続きます。これらは、いずれも機内サービスの簡素化にかかわることですので、それに関して利用者は許容している人が多いことがうかがえます。
さらに、「毛布のサービスが有料」「座席が狭い」「預ける荷物が有料」を許容する人は10%程度。これらもサービスの簡素化・有料化の範囲に入るのですが、ドリンクサービスなどに比べると、「できれば簡素化して欲しくないサービス」ということなのでしょう。
問題はそのあとで、「発着時間の遅延」は2%、「発着地の利便性が低い」は1%となっています。つまり、たとえ運賃が安くても許容できない、というのが「遅延」と「空港の利便性」ということなのです。「いくら安くても不便で時間の読めない交通機関は使いたくない」という時間に厳しい日本人の微妙な心情が浮かび上がってきます。
遅延の多いLCCの将来は厳しい?
翻って日本のLCCを見てみると、ピーチ航空は遅延は少なく、拠点としている関西空港の利便性は伊丹に劣るものの、大阪中心部までは列車の本数も多く、所要時間の差は伊丹と10分~20分程度で、それほど大きな差はありません。
しかし、ジェットスター・ジャパンとエアアジア・ジャパンは、これまで遅延が頻発しているうえに、拠点としている成田空港へは列車の本数も少なく、利便性は羽田よりだいぶ劣ります。
この結果をみると、今のままでは、ジェットスター・ジャパンやエアアジア・ジャパンの将来は厳しくなるかもしれません。
また、成田よりも利便性が大きく劣る茨城空港は、LCCの就航地としては厳しいかもしれません。地方拠点空港でも、市街地から遠い中部や広島は、高速バスや新幹線との対抗で苦戦しそうです。
最後の問いとして、「今後、LCC は日本で定着すると思うか」という問いに対しては、7 割が「定着すると思う」(定着すると思う+どちらかというと定着すると思う)と答えています。“価格が安いのはやはり魅力的だから”“安い料金で安全ということが証明されれば、安い方がいいに決まっている。安全性をもっとアピールすれば定着すると思う”という声が多く聞かれたとのことです。
成田空港のアクセスを改善することは可能ですし、LCCが遅延をなくすことも不可能ではありません。安全性をたかめるのは当然です。こうしたことを続けていけば、LCCに将来性があることを、利用者は素直に感じているのでしょう。