2020年の東京オリンピックが決定しました。オリンピックは、都市が大きく変わる契機になります。現在の東京を支える交通インフラには、1964年の五輪にあわせて整備されたものが少なくありません。首都高速道路や多くの幹線道路は1964年前後に整備されましたし、東京モノレールや新幹線なども当時の開業です。
では、2020年までに、東京でどのような新しい交通インフラが整備される可能性があるのでしょうか。
といっても、2020年はわずか7年後。今から計画を立てて新しいものを建設する時間はありません。必然的に、現在決まっている計画の前倒しが主となります。
まず、道路に関しては、首都高速中央環状線、東京外郭環状道路(外環道)、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)のいわゆる3環状道路の整備が大きなテーマです。3環状のうち中央環状線は2015年にも開業予定で、圏央道も2016年までに多くの区間で開業します。
焦点は、外環道の大泉JCTから東名JCTまでの区間です。現在建設中ですが、東京オリンピックの開催決定で、2020年までに完成するのが確実になったといえます。現状でも2020年を目標に建設されていますが、オリンピック招致が決定したために、この目標が守られる可能性はきわめて高くなりました。一方、東名JCT以南の世田谷区・大田区を縦断する部分の開通のメドは立っていません。この区間を2020年度までに整備するのは絶望的でしょう。
圏央道の千葉県の大栄JCT~松尾横芝IC間も注目です。成田空港に近い区間であり、この区間が開業すれば成田空港から東京湾アクアラインへのアクセスが改善します。オリンピックを機会に事業化される可能性が高まりました。まだ未着工ですが、7年後の完成は不可能ではなさそうです。
鉄道に関しては、いわゆる「都心直結線」の整備も話題にあがります。都心直結線は、成田空港から丸の内を経て羽田空港に至る新鉄道で、安倍内閣の成長戦略に盛り込まれています。4000億円ともいわれる多額の建設費がネックとなっていますが、オリンピックとなれば予算が増えるかもしれません。ただ、現時点で調査段階ですので、2020年までに完成するのは相当難しいといえます。
都内の新たな地下鉄計画としては、有楽町線の延伸計画があります。これは、有楽町線豊洲駅~半蔵門線住吉駅間の5.2キロを結ぶもの。途中、東西線の東陽町駅にも接続します。収益性に難があり、構想段階からなかなか前進しない計画でしたが、オリンピックが湾岸中心で行われることもあり、事業化される可能性が出てきました。今後7年で建設するのは困難ですが、都心直結線よりは実現性がありそうです。
また、焦点となっている東京メトロと都営地下鉄の一元化には進展があるかもしれません。東京の地下鉄が2社に分かれていることは、外国人旅行者にはわかりにくく、これまでも不評でした。外国人観光客が多く来日するオリンピックに合わせるという名目で、メトロ・都営の一元化が一気にすすむ可能性はおおいにあるでしょう。
地下路線の工事の前倒しは難しいですが、地上区間は土地さえあれば前倒しがしやすいです。その意味で、実現可能性が高いのは東京モノレールの浜松町~新橋間の延伸です。JR東日本がかねてから意欲を示していますので、オリンピックを機会に延伸が実現する可能性はあります。また、ゆりかもめの豊洲~勝どき間の延伸も、オリンピックのメイン会場近くの臨海区間を縦断する路線なので、着工の可能性はありそうです。ただ、ゆりかもめは都営路線で、東京都はオリンピック関連で新規鉄道路線は必要ないとの立場です。したがって、ゆりかもめの延伸は不透明です。
現在建設中の新幹線は、東京と直接関係ない場所ばかりです。ただし、新幹線は東京と地方を結ぶ基幹インフラなので、オリンピックをきっかけに予算増が図られる可能性はあります。北陸新幹線の敦賀延伸の2025年度開業予定などは、前倒しされる可能性はあるでしょう。北海道新幹線の2035年札幌開業予定についても、そもそも前倒しが考慮された計画になっていますので、オリンピックを機会に一気に建設という可能性がなくはありません。札幌はオリンピックのサッカー種目の開催地の一つです。
中央リニアに関しては、どうがんばっても2020年には間に合いません。部分開業を期待する声もありますが、JR東海の現在の姿勢からして、開業前倒しはあり得ないでしょう。
都心交通では、都営バスの24時間化が拡大される可能性が高そうです。都バスの深夜運行は2013年12月から渋谷~六本木間で試験運行が開始されます。オリンピックが決まったことで、こうした深夜運行は徐々に拡大されていくでしょう。24時間路線が山手線内の主要区間に広がる可能性は高いと言えます。
航空に関しては、羽田・成田両空港の発着枠増加が期待できそうです。すでに、エプロンの新設工事が進められています。現在の発着枠は両空港あわせて約68万回ですが、これを2014年度中に約75万回まで引き上げることはすでに決まっています。さらにどこまで増やせるかが焦点です。
羽田空港については、C滑走路の延伸が実施されますので、羽田からの長距離路線の拡充が見込まれます。そのC滑走路の外側にE滑走路を増設する案があります。オリンピック実施決定で、E滑走路は急速に現実感が高まってくるかもしれません。E滑走路の効率的な運用には飛行ルートの見直しも必要で、これまでは建設には懐疑的な意見も多かったのですが、オリンピックを大義名分に懸案の飛行ルート見直しが行われるかもしれません。具体的には東京上空の飛行です。東京上空の飛行が解禁され、E滑走路が建設されれば、羽田空港の発着容量は飛躍的に増えるでしょう。ただし、滑走路の増設には巨額の費用がかかりますので、そう簡単な話ではありません。