上越新幹線は、東京都と新潟市を結ぶ計画の路線です。大宮~新潟間は開業済みで、すべての列車が東北新幹線に乗り入れて上野駅/東京駅まで走っていますので、事実上全線完成しているといっていいでしょう。
ただ、東京都内の本来の起点は新宿駅とされていて、新宿~大宮間が未開業区間として残されています。この区間の具体的なルートや開業予定時期などは決まっていません。
上越新幹線新宿延伸の概要
上越新幹線は、大宮駅~新潟駅間269.5 km(営業キロ303.6 km)が開業済みです。すべての列車が東北新幹線の東京駅または上野駅発着で、東京駅~新潟駅方面を直通運転しています。
本来の上越新幹線の起点は「東京都」です。埼玉県さいたま市ではありません。そのため建設当初から、上越新幹線は「都心乗り入れ」が検討されてきました。東京都内の上越新幹線の発着駅については、1970年代にさまざまな議論があり、新宿駅がターミナルとなる予定でした。
ただ、東北・上越新幹線が開業した1982年当時は、東京~大宮間の新幹線の線路容量が逼迫していないとして、東北・上越両新幹線が同区間を共用することになり、新宿~大宮間は作りませんでした。以来、40年以上が経ちますが、いまだに新宿~大宮間は、工事計画すらできていません。
北陸新幹線、北海道新幹線と、JR東日本の新幹線路線が延伸するにつれ、東京~大宮間の新幹線の線路容量の問題が浮上し、新宿~大宮間の新幹線建設が根強く話題に上ります。実際に何度も検討されましたが、数千億円が見込まれる建設費がネックとなり、実現に至っていません。
上越新幹線新宿延伸の沿革
上越新幹線は、全国新幹線鉄道整備法に基づき建設する初の新幹線鉄道として、1971年1月に、東北新幹線(東京都~盛岡市)とともに東京都~新潟市間の基本計画が決定しました。同年4月に整備計画が決定され、10月に工事実施計画が申請されました。
当時の計画では、東北新幹線は東京駅に、上越新幹線は新宿駅にそれぞれターミナルを設置し、それぞれ大宮駅に至る路線を建設することが想定されていました。しかし、当時は、東京~大宮間を両新幹線で線路を共用しても容量が足りると予測されたうえ、都心乗り入れは巨費を要するため、大宮以南はとりあえず東北新幹線のみ建設することになりました。
このとき、東北・上越新幹線の都心乗り入れについては、現在の埼京線に並行する「A新幹線ルート」と、東北本線に並行する「B新幹線ルート」の2案がありました。このうち、「A新幹線ルート」が埼京線と同時に建設され、東北新幹線として実現します。上越新幹線の都心乗り入れルートは、東北新幹線と並行する「A新幹線ルート」も検討されましたが、最終的に「B新幹線ルート」が有力だったようです。
「B新幹線ルート」は、東北貨物線を廃止して、その跡地に建設するものです。大宮駅から東北貨物線をたどり、赤羽から池袋を経て新宿に至る形で、現在の湘南・新宿ラインのルートに近い形です。東北貨物線は、武蔵野線の開業後に貨物列車が減少することから、新幹線用地に転用できるという皮算用でした。
東北新幹線は、大宮~盛岡間が1982年6月23日に先行開業し、1985年3月14日に上野~大宮間、1991年6月20日に東京~上野間がそれぞれ開業します。
一方、上越新幹線は1985年11月15日に大宮~新潟間が開業したものの、新宿~大宮間については、国鉄の経営悪化や分割民営化が議論されるなか、棚上げされます。上越新幹線の建設用地として想定されていた東北貨物線も、湘南新宿ラインとして通勤列車が運転されるようになり、いまさら新幹線に転用するのは困難になっていました。
その後、1988年に長野新幹線(北陸新幹線)の建設が決まった段階で、東京駅のホームが逼迫することから、上越新幹線の新宿駅乗り入れ計画が再検討されました。このときは、上記の「B新幹線ルート」を地下でたどる案が検討されています。しかし、建設費が7,000億円に達することから断念され、東京駅の新幹線ホームを増設することになりました。
2004年12月の政府与党申し合わせで、北海道新幹線新青森~新函館間の着工と北陸新幹線長野~金沢間のフル規格着工が決定すると、再び新宿~大宮間の新幹線計画が浮上します。このときは、自民党内で検討され、建設費6,000億円強と試算されました。
しかし、運営するJR東日本が建設に積極的な姿勢をみせなかったこともあり、新宿乗り入れ案は実現しませんでした。
今後、北海道新幹線の札幌延伸や、北陸新幹線の大阪方面への延伸が行われると、東京~大宮間の線路容量はさらに厳しくなります。2016年には、当時の麻生太郎財務相が「東京~大宮間がいっぱいだ。もう一本(線路を)引くのを計算しないと話は成り立たない」述べるなど、この区間の建設構想は、いまも根強く残っています。
上越新幹線新宿延伸のデータ
営業構想事業者 | 未定(JR東日本) |
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整備構想事業者 | 未定 |
路線名 | 上越新幹線 |
区間・駅 | 新宿~大宮 |
距離 | 27.4km(在来線営業キロ) |
想定輸送密度 | — |
総事業費 | — |
費用便益比 | — |
累積資金収支黒字転換年 | — |
種別 | 未定(第一種鉄道事業) |
種類 | 新幹線鉄道 |
軌間 | 1,435mm |
電化方式 | 交流25,000V |
単線・複線 | 複線 |
開業予定時期 | 未定 |
備考 | 全国新幹線整備法 |
上越新幹線新宿延伸の今後の見通し
整備新幹線の議論が湧き上がるときに、浮かんでは消えるのが、上越新幹線の新宿~大宮間の建設構想です。東北・北海道・山形・秋田・上越・北陸の新幹線を、東京~大宮間の複線だけで対応するには無理がある、という指摘は、古くからありました。
しかし、本当に東京~大宮間の新幹線がパンクするなら、上越・北陸新幹線の一部列車を大宮発着にすればいいだけの話、という冷めた指摘もあります。実際、東北・上越・北陸新幹線は、大宮からの利用客も多いので、それで何とかなるのかもしれません。
建設費が6,000億~7,000億円規模の新線というのは、事業化に向けて強く運動する組織がなければ実現しませんが、その役割を期待されるJR東日本にも熱意が見受けられません。地元の埼玉県や東京都にとっては人ごとですし、東北・上越新幹線の沿線自治体も、費用負担をしてまで建設を求めることはないでしょう。
こうしたことから、建設への議論はなかなか進みません。一方で、必要性はたしかに認められる路線なので、今後もしばらくは「未成線」として話題に浮かんでは消える、ということを繰り返しそうです。