リニア中央新幹線

品川~名古屋~新大阪

リニア中央新幹線は、東京・品川駅から名古屋駅を経由して新大阪駅を結ぶリニアモーターカーによる新幹線計画です。品川~名古屋間が建設中で、開業予定は2027年とされてきましたが、実際には2030年代半ばになりそうです。

名古屋~新大阪間の開業は、最短で名古屋開業の10年後とされていますが、詳細なルートや着工予定は決まっておらず、開業予定時期も未定です。

リニア中央新幹線の概要

リニア中央新幹線は、中央新幹線という新幹線の計画路線にリニアモーターカーを走らせるものです。最高設計速度は505km/hで、完成すれば、営業速度が世界最速の陸上交通機関となります。

リニア中央新幹線は、東京・品川駅を起点に、甲府市付近、飯田市付近、中津川市付近を経由して、名古屋駅に至ります。全体ルート図は以下のようになっています。

リニア中央新幹線
画像:中央新幹線環境影響評価書


 

リニア中央新幹線の駅位置

リニア中央新幹線では、途中、神奈川県駅(橋本駅)、山梨県駅(甲府市南部)、長野県駅(飯田市上郷飯沼)、岐阜県駅(美乃坂本駅)の4駅を設けます。

東京駅は品川駅の地下に設けます。

リニア品川駅
画像:中央新幹線環境影響評価書

神奈川県駅は橋本駅地下に建設し、JR横浜線・相模線、京王相模原線と接続します。

リニア神奈川県駅
画像:中央新幹線環境影響評価書

山梨県駅はアイメッセ山梨の北側付近に作り、JR線との接続はありません。

リニア山梨県駅
画像:中央新幹線環境影響評価書

長野県駅は、国道135号線の北条交差点付近で、飯田線元善光寺駅の近くです。ただし、元善光寺駅とは接続しません。

リニア長野県駅
画像:中央新幹線環境影響評価書

岐阜県駅は美乃坂本駅に並行して作り、JR中央線と接続します。

リニア岐阜県駅
画像:中央新幹線環境影響評価書

名古屋駅は東海道線と交差する形で地下に設けます。

リニア名古屋駅
画像:中央新幹線環境影響評価書

開業予定と総事業費

リニア中央新幹線の品川~名古屋間の開業予定は2027年とされてきましたが、工事に遅れが生じており、2030年代半ばになりそうです。

完成後は、品川~名古屋間を約40分で結ぶ予定です。総工費は9兆300億円と見積もられていましたが、10兆5000億円に上振れています。

名古屋~新大阪間の計画

名古屋~新大阪間には、途中、三重県駅(亀山市)、奈良県駅(学研都市地区)の3駅を設けます。駅の詳細の位置は未定です。

新大阪まで完成後、品川~新大阪間は最短67分で結ばれる予定です。

リニア中央新幹線は、全国新幹線鉄道計画では「基本計画路線」とされていました。JR東海が全額自社負担で建設の意思を表明したことから、2011年に整備計画が策定され、着工に至っています。ただし、いわゆる「整備新幹線」には含まれません。


 

リニア中央新幹線の沿革

全線建設決定まで

1970年の全国新幹線整備法制定後、1973年11月15日に中央新幹線の基本計画が決定しました。東京都から甲府市、名古屋市、奈良市を経由して大阪市に至る路線です。

しばらくは具体化しなかったのですが、1987年にリニアモーターカーの新実験線建設予定区間の公募が始まると、1988年に地元自治体などによる「リニア中央エクスプレス建設促進期成同盟会」が結成され、中央新幹線へのリニアモーターカーの誘致が始まります。

1989年に、将来的な中央新幹線への転用を考慮して山梨県が実験線に選ばれると、リニア中央新幹線が実現へ向けて動き出します。

実験線は一部区間18.4kmが先行開業し、1997年に本格的な実験が始まりました。この頃から、JR東海は中央新幹線を「中央リニアエクスプレス」と称して、建設へ向けたキャンペーンを展開します。

2005年3月に、国土交通省超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会により実用化のめどが立ったとの評価を受けると、JR東海は2006年9月25日に、独自資金で山梨リニア実験線42.8kmの全線を建設することを発表しました。

2007年12月25日には、中央新幹線を超電導リニア方式で、こちらも全額自社負担で建設することを発表しました。山梨リニア実験線は、2008年5月30日に着工し、2013年8月29日から全線で走行試験が開始されています。


 

ルート決定まで

山梨以西のルートについては、「木曽谷ルート」「伊那谷ルート」「南アルプスルート」の3つが候補に上がり、JR東海は南アルプスルートで建設方針を固めます。長野県がこれに強く反対しましたが、最終的に2011年5月に交通政策審議会中央新幹線小委員会が最終答申をし、国の整備計画として南アルプスルートが確定しました。

2013年9月18日に、JR東海は詳細なルートや駅位置を公表。2014年10月17日に、国土交通省が中央新幹線の工事実施計画を認可、12月17日に品川~名古屋間の起工式が行われました。

名古屋~新大阪間に関しては、当初は2045年開業とされていましたが、国の財政投融資を活用することで、2027年の品川~名古屋間開業後に、連続して工事に着工する方針が固まり、順調にいけば2037年の開業とされました。

水問題と事業遅延

しかし、2017年以降、川勝平太・静岡県知事が大井川の水量減少を懸念してトンネル工事を認めない姿勢を見せ、工事は停滞。2024年4月に、JR東海が2027年開業が間に合わないことを正式に認めました。

静岡県以外でも工事の遅れが生じており、一部区間は完成が2031年度になることが明らかになっています。静岡県区間の工期は10年程度を見込んでいるため、2025年に着工したとしても、開業は順調にいって2035年ごろになりそうです。

名古屋~新大阪間の工事は、名古屋開業後10年程度はかかるので、新大阪開業は早くても2040年代半ばになりそうです。


 

リニア中央新幹線のデータ

リニア中央新幹線データ
営業構想事業者 JR東海
整備構想事業者 JR東海
路線名 リニア中央新幹線
区間・駅 品川~名古屋(途中4駅)
名古屋~新大阪(途中2駅)
距離 285.6km(品川~名古屋)
約152km(名古屋~新大阪)
想定輸送密度
総事業費 10兆5000億円
費用便益比
累積資金収支黒字転換年
種別 第一種鉄道事業
種類 超電導磁気浮上式鉄道
軌間
電化方式 交流33,000V
単線・複線 複線
開業予定時期 2030年代(品川~名古屋)
2040年代(名古屋~新大阪)
備考 財政投融資

リニア中央新幹線の今後の見通し

リニア中央新幹線は品川~名古屋間で着工しています。反対運動やゼネコン談合事件に加え、静岡県の水問題の解決が長引き、全体的に工事に遅れが出ています。開業時期は順調にいって、2030年代半ばというところでしょう。

名古屋~新大阪間に関しては、名古屋開業後、新大阪開業に向けた工事が始まることになっていて、工期は最低10年を見込みます。そのため、早くても2040年代半ば。2050年代にずれ込むことがあるかもしれません。