横浜市営地下鉄ブルーライン新百合ヶ丘延伸

あざみ野~新百合ヶ丘

横浜市営地下鉄ブルーラインは、あざみ野-湘南台を結ぶ40.4kmの路線です。あざみ野から先、新百合ヶ丘まで約6.5kmを延伸する計画があります。2019年1月23日に、横浜市と川崎市が事業化を決定しました。開業目標は2030年です。

横浜市営地下鉄ブルーライン延伸の概要

横浜市営地下鉄ブルーラインの延伸計画は、あざみ野-新百合ヶ丘間の約6.5kmです。途中すすき野付近を経由します。

ブルーラインの延伸計画の目的として、以下のような点が挙げられています。

・横浜市と川崎市の拠点を結び、広域的な首都圏の鉄道ネットワークの一翼を担う路線になる。
・東京都心方面と神奈川県央部を結ぶ鉄道路線を短絡し、災害等による輸送障害発生時の代替経路が 確保される。
・川崎市北部・多摩地域と横浜・新横浜を乗り換えなしでつなぐことにより、新幹線駅(新横浜)や 空港(羽田)へのアクセスが向上する。

2020年1月21日の横浜市記者発表によりますと、ブルーラインの新百合ヶ丘延伸が実現すれば、あざみ野-新百合ヶ丘間が約10分で結ばれます。新百合ヶ丘-新横浜は約27分となり、現在の町田経由に比べて8分ほど短縮します。

ルートは東側、中央、西側の3案がありましたが、東側ルートに決定しています。あざみ野-嶮山付近-すすき野付近-ヨネッティー王禅寺-新百合ヶ丘というルートです。

途中駅は3駅です。途中駅の予定地は、「嶮山」があざみ野ガーデンズ付近、「すすき野」がすすき野2丁目交差点付近、それとヨネッティー王禅寺付近です。

横浜市営地下鉄ブルーライン新百合ヶ丘延伸
画像:横浜市報道発表より

 

事業費と開業予定

2014年度から横浜市が事業化に向けて本格的な調査をしており、2019年1月23日に横浜市と川崎市が建設に向け合意。『横浜市高速鉄道3号線の延伸に関する覚書』を締結しました。2020年1月21日に正式ルートが決定しました。

乗車人員は 1日あたり79,000人で、概算事業費は1,720億円、累積資金収支は 34年目で黒字転換すると試算されています。

覚書締結後、環境アセスや都市計画決定などに進む予定で、建設には10年程度を要し、開業目標は2030年とされました。

しかし、その後、建設の動きは停滞しています。

2024年05月21日の横浜市議会下水道河川・水道・交通委員会で、市側は、「高速鉄道3号線延伸事業の推進は、昨今の建設物価の高騰や新型コロナウイルス感染症の影響による鉄道需要の減少など新たな課題への対応に時間を要している状況」と説明しています。事業費が高くなり、需要予測は低くなっていて、事業計画の見直しが必要になっていることを示唆しています。

市側は「課題の解消に向けて引き続き取り組むとともに、早期の事業着手に向けた調査・設計の深度化や関係機関との協議などを進めてまいります」とも述べており、事業化へ向けた検討は進められているようです。

横浜市営地下鉄ブルーライン延伸の沿革

横浜市営地下鉄ブルーラインがあざみ野まで開業したのは1993年。その後、2000年の運輸政策審議会答申第18号で、あざみ野-すすき野付近が「2015年までに開業することが適当」、すすき野付近-新百合ケ丘が「2015年までに整備着手することが適当」と位置付けられました。

しかし、計画はなかなか前に進みませんでした。その理由として、新百合ヶ丘駅が川崎市にあり、横浜市が勝手に延伸を決めることができなかったからです。答申18号で「すすき野」が分界点となっているのは、すすき野までが横浜市という事情がありました。

一方の当事者である川崎市は、2000年当時、川崎縦貫鉄道(川崎市営地下鉄)の新百合ヶ丘駅へ乗り入れ構想を抱えていました。そのため、川崎市はブルーラインの乗り入れに消極的だったのです。

しかし、川崎縦貫鉄道計画は、事業性に難があり頓挫。2011年度に両市間で『新たな交通体系検討に向けた横浜市と川崎市の連携協力に関する覚書』が結ばれ、横浜市が南武線高架化に協力する見返りに、川崎市はブルーラインの新百合ヶ丘延伸に協力することとなりました。

横浜市は2014年度から事業化に向けた調査を本格化。2015年には、両市が連携して交通政策審議会に提案を行っています。

その結果、2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』で、ブルーラインのあざみ野-新百合が丘延伸が「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として盛り込まれています。

横浜市では、2018年度までに事業化に向けた基礎調査を終了し、建設の可否を判断するとし、2019年1月23日に事業化を正式決定。川崎市と『横浜市高速鉄道3号線の延伸に関する覚書』を交わすに至りました。2020年1月21日にルートが正式決定しました。

横浜市営地下鉄ブルーライン延伸のデータ

横浜市営地下鉄ブルーライン延伸データ
営業構想事業者 横浜市交通局
整備構想事業者 横浜市
路線名 ブルーライン
区間・駅 あざみ野~新百合ヶ丘、途中3駅
距離 約6.5km
想定利用者数 約79,000人/日
総事業費 1,720億円
費用便益比 1.53
累積資金収支黒字転換年 34年
種別 第一種鉄道事業
種類 普通鉄道
軌間 1435mm
電化方式 直流750V第三軌条
単線・複線 複線
開業予定時期 2030年
備考 地下高速鉄道整備事業費補助

※データはおもに『横浜市高速鉄道3号線の延伸(あざみ野~新百合ヶ丘)の事業化判断について』(2019年1月、横浜市・川崎市)より。東側ルートを参照。

横浜市営地下鉄ブルーライン延伸の今後の見通し

横浜市は、2014年にまとめた「横浜市における鉄道を軸とした交通体系について」で、ブルーライン延伸について「広域的な交通利便性の向上が期待できる」「事業としての採算性が比較的高い」という理由を挙げて「優先度の高い路線」と認定しました。横浜市には、他に横浜環状線などの鉄道建設計画がありますが、ブルーラインの新百合ヶ丘延伸を最優先として明示した形です。

懸案だった川崎市との関係も解決し、ブルーライン延伸を阻む問題はほぼ解決しました。両市の協力により、着工から開業へ向けた道筋は整っています。

ただ、覚書締結後、事業着手に向けた動きが停滞しているのは気がかりです。市議会での答弁から推測するに、事業費の高騰と需要予測の低減により、事業計画の見直しを余儀なくされているようです。

開業目標は2030年とされていますが、2024年現在でも環境アセスの着手にいたっておらず、目標通りの開業は絶望的です。これから順調に事業が進んだとしても、開業は2030年代半ばにずれ込みそうです。