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阪急なにわ筋・新大阪連絡線

阪急なにわ筋・新大阪連絡線

阪急電鉄の十三~新大阪間の鉄道新線計画が、阪急新大阪連絡線です。また、十三~大阪(うめきた)間の新線計画が、阪急なにわ筋連絡線です。なにわ筋連絡線は、JR・南海のなにわ筋線に乗り入れて、関西空港まで列車が走る構想です。 両路線は計画の生い立ちは異なりますが、将来は一体的な計画になるとみられます。そのため、このページでは、両路線を一体的に「阪急なにわ筋・新大阪連絡線」として扱います。 阪急なにわ筋・新大阪連絡線の概要 現在の阪急電鉄は新大阪駅への路線を持っていませんが、十三~新大阪間の2.1kmに新線を建設する計画があります。これが「新大阪連絡線」です。 新大阪連絡線を大阪駅(うめきた)まで延伸し、なにわ筋線とつなげるのが、「なにわ筋線」です。十三~大阪間の2.5kmです。 阪急新大阪連絡線となにわ筋連絡線は、一体として運用されることが見込まれています。すなわち、新大阪~十三~北梅田間約4.6kmの新線です。そこで、ここでは「阪急なにわ筋・新大阪連絡線」として紹介します。   想定ルート なにわ筋連絡線も新大阪連絡線も、ルートは未定です。ただ、新大阪連絡線は古くから建設計画があったので、一部で線路用地が確保されています。山陽新幹線の新大阪駅から新神戸方にかけて、線路の北側に空き地がありますが、それが新大阪連絡線の線路用地です。 したがって、新大阪連絡線の想定ルートは、この空き地を活用するとみられます。とはいえ、一部は新幹線の引き上げ線として使われていて、高架が張りだしていることもあり、いまさら阪急に転用できません。そのため、阪急新大阪連絡線は、用地の地下を走ることになりそうです。阪急宝塚線との交点付近で南に折れて、十三駅地下に収まる形になるでしょう。 なにわ筋連絡線は、十三駅から国道176号線の地下を南下し、うめきたエリアのJR大阪地下駅(北梅田)に合流する形になるとみられます。   この路線は阪急電鉄としては初の1,067mmという狭軌での建設を予定しています。これにより、なにわ筋線との直通運転を実施し、新大阪から十三、北梅田、南海本線を経て関西空港への乗り入れが行われる予定です。 阪急新大阪連絡線、なにわ筋連絡線とも、事業化へ向けたスケジュールなどは未発表です。なにわ筋線の開業予定が2031年春なので、それより早くなることはありません。大阪~十三~新大阪の一括開業を目指すのか、それとも大阪~十三間で先行開業するのかなども含めて未定です。 費用便益比と採算性 2018年4月に発表された『近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークに関する調査結果』では、なにわ筋連絡線の建設費は約870億円、輸送人員は1日約9.2万~10.2万人、費用便益比は1.7~1.8、累積黒字化は24~31年目と試算されました。新大阪連絡線の建設費は約590億円で、輸送人員1日約5.5万人、費用便益比は1.4、27年目の累積黒字化です。 同じ試算で、なにわ筋連絡線と新大阪連絡線を同時に整備した場合、建設費は約1,310億円とされました。輸送人員は、なにわ筋連絡線が1日約11.4~13.1万人、新大阪連絡線が約4.7~5.6万人です。費用便益比は1.7~1.9で、13~16年目に累積黒字化します。 阪急なにわ筋・新大阪連絡線の沿革 新大阪連絡線の沿革 阪急電鉄は新大阪駅への路線を持っていませんが、かつて、阪急京都線を新大阪経由にする計画がありました。東海道新幹線の建設が決定したのを受けて、阪急京都線を十三~新大阪~淡路と新線経由にする構想を打ち立てたのです。これが「新大阪連絡線」で、ほかに新大阪~神崎川(阪急神戸線)を結ぶ構想もありました。 阪急は、新大阪連絡線について1961年に事業免許を取得し、用地の買収や準備工事に着手しました。国鉄もこれに対応し、東海道・山陽新幹線の高架橋脚には、新大阪連絡線の開業に備えて橋脚を斜めに配置するなどの準備がなされています。用地に関しては、阪急宝塚線との分岐付近から新大阪駅まで、新幹線の北側に並行して東西に細長く用地買収が行われました。 当時の計画では、阪急京都線の特急や急行を新大阪経由に移し、崇禅寺回りは普通列車専用とする予定でした。しかし、実際には、新大阪連絡線はなかなか進展しませんでした。 1989年の運輸政策審議会答申第10号では、十三~淡路間が「2005年までに工事を着手することが適当な区間」とされました。下図のように、新大阪から十三を経てなにわ筋線に流れ込む経路がすでに描かれています。   西梅田・十三連絡線への展開 しかし、答申後、大きな動きはありませんでした。2002年12月6日に、阪急電鉄は新大阪~淡路間と神崎川~新大阪間の免許廃止申請を提出し、2003年3月1日に両区間が正式に廃止となりました。これにより、免許が有効なのは十三~新大阪間(2.350km) のみとなりました。 一方、2004年10月の近畿地方交通審議会答申第8号では、「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として、「大阪市交3号線延伸 西梅田~北梅田~十三 2.9km(大阪市交3号線西梅田駅から阪急十三駅へ延伸する路線)」が盛り込まれました。これは、四つ橋線を十三駅まで延伸することで阪急各線と接続させるものです。ただし、新大阪連絡線(十三~新大阪)は盛り込まれませんでした。 2006年5月には、阪急ホールディングス(当時)の角和夫社長が阪神電気鉄道との経営統合に関連して「新大阪、十三、北ヤード、西梅田をつなぐ路線も可能」とコメント。この頃、新大阪から梅田エリアへつながる路線構想について、阪急で検討が進められていたようです。 2006年12月8日には、阪急電鉄・大阪市・国土交通省が都市鉄道等利便増進法に基づく大阪市営地下鉄四つ橋線の西梅田~十三間の新線(西梅田・十三連絡線)に関する原案を固めたとの報道がありました。報道した朝日新聞によりますと、建設主体を鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行い、阪急と大阪市交が営業を担当するとしています。新大阪連絡線との相互乗り入れの可能性についても報道されました。   2008年4月10日には、国土交通省による『「速達性向上施策における事業スキームの検討に関する調査」結果 - 西梅田・十三連絡線(仮称)の事業実現化方策に係る深度化調査 - 』が発表されました。 これによりますと「西梅田・十三連絡線」(西梅田~十三)の建設費が約950億円、「西梅田・十三連絡線+新大阪連絡線」(西梅田~十三~新大阪)の建設費が1,350億円とされ、新大阪まで建設した場合、1日17万人の需要を予測しました。費用便益比は2.9で、累積資金収支は第三セクターが整備主体の場合で33年目に黒字化、鉄道・運輸機構の場合は22年目に黒字化という結果でした。 これは「四つ橋線の新大阪乗り入れ」という事業で、採算面では良好な結果となりましたが、技術面では、四つ橋線を延伸する場合、阪神電鉄の線路が障害となり、西梅田駅から北梅田方向へそのまま北進することはできません。阪神電鉄の下を交差する場合は大工事になるため、実現性には疑問符が付けられました。 なにわ筋線への接続へ 2008年に橋下徹が大阪府知事に就任し、なにわ筋線の建設に前向きな姿勢を見せると、西梅田・十三連絡線は、なにわ筋線との接続へと方向性が変化していきます。2014年度に策定された大阪府の 公共交通戦略」では、「今後、事業実施の可否について、個別に検討が必要な路線」として、⻄梅⽥十三新大阪連絡線が「新大阪アクセス」として盛り込まれました。 2017年5月23日には、JR、南海、阪急、大阪府市の5者の間で、なにわ筋線建設を進めていくことで一致。なにわ筋線計画に阪急が加わり、「阪急なにわ筋連絡線」の計画が、初めて公式に明らかにされました。 このときのプレスリリースでは、「北梅田駅北側で阪急十三方面に分岐する路線(なにわ筋連絡線)について、国と連携しながら整備に向けた調査・検討を進めます」とされました。新路線に「なにわ筋連絡線」という仮称が与えられ、本格的に検討されることになったわけです。 ただ、その後、なにわ筋連絡線に関して目立った動きはみられません。2019年の大阪府「公共交通戦略」改定でも「今後、事業実施の可否について、個別に検討が必要な路線」の表記は変わりませんでした。 阪急の首脳からは、なにわ筋線との同時開業(2031年春)を目指すといったコメントが報道で伝えられたりしていますが、2024年時点で着工に至っておらず、工事期間を考えれば難しいでしょう。 阪急なにわ筋・新大阪連絡線のデータ 阪急なにわ筋・新大阪連絡線データ 営業構想事業者 ...
阪急大阪空港線

阪急大阪空港線

阪急電鉄の曽根駅~大阪空港駅間約4.0kmの鉄道新線計画が、阪急大阪空港線です。阪急宝塚線の曽根駅から、大阪空港(伊丹空港)まで線路をつなぐ構想です。 阪急大阪空港線の概要 阪急宝塚線曽根駅付近から分岐して、大阪空港に至る鉄道新線を建設する計画があります。これが阪急大阪空港線です。 ルート詳細は明らかではありませんが、曽根駅の北で宝塚線から分岐し、府道99号線の地下を西へ進み、阪神高速道路に沿って大阪空港ターミナル付近の地下に新駅を作るルートが基本線と考えられます。   曽根駅には引上線がありますので、分岐部はそれを転用する構想とみられます。また、曽根駅~岡部駅間には、高架化する際に残された地上線用地が残っており、そこを使えば地下に潜るスペースを確保できそうです。距離は約4kmです。 阪急大阪空港線が実現すれば、梅田~大阪空港間が乗り換えなしで移動でき、所要時間は現行の蛍池乗り換え(大阪モノレール利用)より、約6分短縮します。 概算事業費と費用便益比 2018年4月に公表された、国土交通省の『近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークに関する調査』結果によりますと、車両費を含まない概算の建設費は約700億円と見積もられています。 予想される輸送人員は1日2万5,000人。費用便益比は1.4とまずまずですが、収支採算性では40年間で黒字転換する可能性は低いとされました。そのため、実現には「採算性の向上策の検討が必要」と指摘されています。 阪急大阪空港線の沿革 大阪空港(伊丹空港)への鉄道路線建設構想は古くからありました。阪急宝塚線と大阪空港ターミナルは、直線距離で1㎞を切る部分もあり、新線建設として、そう困難な距離でありません。阪急のほかにも、JR伊丹駅からJR宝塚線を分岐させてつなぐという構想もありました。 しかし、今に至るまで実現していません。理由として、伊丹空港は騒音問題などを抱えて廃港が取りざたされてきたことが大きいです。廃港しないとしても、増便の余地が限られているため、鉄道を敷いても利用者増が期待できないという理由もあります。それに加え、鉄道事業者間の利害調整の難しさもありました。 そうした状況下で、2017年に北梅田と関西空港をつなぐなにわ筋線の建設が決定し、阪急も「なにわ筋接続線」を建設する方向が固まりました。その関連路線として、梅田・十三と伊丹空港を直結する大阪空港線プロジェクトも動き出します。 阪急は、梅田・十三と直結する大阪空港線の建設の検討を開始。阪急の意向を受けて、国土交通省も、なにわ筋線関連路線の1つとして調査を実施しました。その結果、2018年4月に『空港アクセス鉄道ネットワーク調査』が公表され、上記の試算が明らかにされました。 2021年度に公表された阪急阪神ホールディングスの長期ビジョン(2040年に向けて)では、「検討・協議中の路線」として、大阪空港線が記されています。一方、中期経営計画には盛り込まれておらず、現時点で建設に向けた具体的な動きもありません。 2022年3月の豊中市議会では、都市基盤部長が「大阪空港線につきましては、これまで阪急電鉄、大阪府、豊中市の3者で勉強会を行い、需要や効果、技術面などについて意見交換を行ってきました。現在、阪急電鉄が引き続き検討を進めていると聞いておりますが、具体化の際には、阪急電鉄をはじめ、国、府、空港関係者等と協議・調整を進めてまいりたいと考えております」と答弁。 鉄道会社と行政の意見交換にとどまる段階で、具体化へ向けて動き出している段階ではないことを示唆しました。 阪急大阪空港線のデータ 阪急大阪空港線データ 営業構想事業者 阪急電鉄 ...
大阪メトロ夢洲駅

大阪メトロ中央線夢洲延伸・森之宮旅客化

大阪メトロ中央線は、コスモスクエア駅から長田駅まで17.9kmを結ぶ路線です。コスモスクエア~夢洲間3.2kmを延伸する工事が進められています。そのほか、森之宮検車場への側線を旅客化する計画もあります。 大阪メトロ中央線延伸の概要 夢洲延伸 大阪メトロ中央線の延伸計画区間は、コスモスクエア~夢洲間の3.2kmです。海底トンネル「夢咲トンネル」を挟むため途中駅はありません。 開業予定は2025年1月19日です。 運行計画は未定ですが、現状の中央線で使われている第三軌条集電方式の車両がそのまま乗り入れ、6両編成で運転します。現在の中央線のコスモスクエア発着の列車が、ほぼ全て夢洲発着になる予定です。現在の中央線ダイヤに即すと、ラッシュ時は約3~5分間隔、日中は7分30秒間隔(毎時8本)で運転されることになります。 夢洲駅は1面2線の島式ホームが配置されます。   中央線の夢洲延伸(コスモスクエア~夢洲)は、北港テクノポート線(コスモスクエア~夢洲~舞洲~新桜島)の南ルートと位置づけられています。鉄道の単独事業ではなく、港湾整備事業によりインフラ外部を整備し、インフラ部を開発者負担と合わせて整備する形です。 建設費用は「夢咲トンネル」などに444億円が執行済みで、南ルート分の残事業費が250億円とされてきました。この250億円が今回の延伸で直接的にかかる費用です。ただし、2022年の事業再評価時に上振れし、346億円となりました。 費用便益比は、2018年度再評価時に、南ルートの残事業分で5.88と算出され、2022年再評価時には3.97となっています。 森之宮側線客化 森之宮検車場の新駅計画は、森ノ宮駅から検車場までの側線(引き込み線)を営業線にして旅客化し、検車場北端付近に新駅を設けるものです。営業距離は1.1km程度です。 検査場付近に再開発計画があり、2025年には大阪公立大学が森之宮キャンパスを開設します。大阪メトロも商業施設の建設を検討しています。新駅を設け、中央線が乗り入れることで、再開発エリアのアクセス向上を図ります。開業は2028年春の予定です。 新駅のデザインも、すでに公表されています。卵形の曲線的なデザインが特徴的です。駅舎内部は開放的な雰囲気です。   中央線は、万博開催時までに夢洲まで延伸し、開催中は最小運行間隔を現行の3分45秒から2分30秒にまで短縮して輸送力を強化します。そのため、夢洲延伸で3編成、輸送力増強で10編成、計13編成を増備する計画です。増備した13編成を留置するため、森之宮検車場の既存の保守施設を移転または撤去し、留置線を整備します。 増備した車両は、万博終了後に改造のうえ、他路線へ転用します。転用後、留置線を撤去して、その跡地に新駅を設置します。留置線に出入りするための側線を営業路線にするため、線路設備や信号設備を強化します。こうした段階を踏んで、2028年春に新駅が開業する見通しです。   大阪メトロ中央線延伸の沿革 大阪南港のコスモスクエアのある人工島を咲州、その北にある島を夢洲、さらに北にある島を舞洲といいます。これらの人工島をつなぐ鉄道を敷く構想は、1983年に「テクノポート大阪計画」が発表されたころから具体化し始めたようです。大阪湾岸を大規模開発する計画で、アクセス路線として、当時の地下鉄中央線の終点だった大阪港と、「ニュートラム」の終点だった中ふ頭とを結ぶ路線計画が浮上します。 1989年の運輸政策審議会第10号答申では、大阪港~海浜緑地(コスモスクエア)~中ふ頭間が「南港テクノポート線」として、2005年までに整備することが適当な路線として盛り込まれました。そのほか、海浜緑地(コスモスクエア)~北港南(夢洲)~北港北(舞洲)間が「北港テクノポート線」として、2005年までに整備に着手することが適当な路線とされました。「北港テクノポート線」は、さらに北港北から此花方面が「今後路線整備について検討すべき方向」として盛り込まれています。   この時点では、大阪港~コスモスクエア~中ふ頭をすべて新交通システム「ニュートラム」で建設する構想でした。しかし、1990年代に入ると、南港と北港の開発を目指す大阪市が、大阪港~コスモスクエア間について地下鉄中央線の延伸とする方針に変更。「北港テクノポート線」の海浜緑地(コスモスクエア)~北港北(舞洲)間を、それにつながる地下鉄と位置づけました。 背景として、大阪市のオリンピック誘致がありました。1991年に、大阪市は2008年オリンピックの招致を開始。夢洲を選手村予定地とし、舞洲を会場予定地とする計画で、アクセス路線として地下鉄中央線を大阪港からコスモスクエアを経て、夢洲、舞洲まで延ばすという構想になったのです。 コスモスクエア~中ふ頭間については、ニュートラムの延伸とされました。1997年12月に、大阪港~コスモスクエア間の地下鉄と、コスモスクエア~中ふ頭間のニュートラムが開業。ただし、このときの事業主体は、いずれも第三セクターの「大阪港トランスポートシステム(OTS社)」で、大阪市営ではありませんでした。 1998年には、「北港テクノポート線」の計画は新桜島までに拡大されます。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の誘致が決まったことを受けたもので、新桜島駅はUSJの北側に隣接する位置に予定されました。新桜島駅には、JR桜島線の延伸が想定されていて、JRが桜島~新桜島間に約1kmの新線を建設する計画となっていました。 OTS社は、2000年7月19日にコスモスクエア~夢洲~舞洲~新桜島間7.5kmの第一種鉄道事業者の許可を申請。建設費は1870億円です。2000年度着工、招致を目指すオリンピックが開催される2008年の開業を目標としていました。実際に2000年10月に、コスモスクエア~新桜島間の事業許可を取得し、咲洲と夢洲と結ぶ道路併用の「夢洲トンネル」(現夢咲トンネル)の着工に漕ぎ着けます。 ところが、2001年のIOC総会で大阪はオリンピック招致に失敗。しかし、トンネル工事はそのまま続き、道路部だけ2009年に開通することになります。一方、オリンピックが実現しなかったことで夢洲の開発は頓挫し、アクセスとなる地下鉄も不要になり、北港テクノポート線計画は凍結されてしまいます。2004年10月8日に策定された近畿地方交通審議会答申第8号では、北港テクノポート線は「事業中路線」の扱いで、特記されませんでした。 この答申第8号では「中期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として京阪中之島線を中之島駅から西九条駅を経て新桜島および夢洲方面へ延伸する案が示されました。下記は建設中の夢洲トンネルの概要図で、北港テクノポート線は新桜島駅から先へ伸びています。この時点では、すでにJR桜島線への直通ではなく、京阪中之島線への乗り入れを想定していたようです。 一方、大阪港~コスモスクエア~中ふ頭の運営を担っていたOTS社は、開業後、たちまち経営難に陥ってしまいました。2005年7月には、大阪港~コスモスクエア~中ふ頭間の運営を大阪市交通局に移管。これにより、大阪港~コスモスクエア間が大阪市営地下鉄中央線に編入されました。 凍結されていた北港テクノポート線計画が再び動き出したのは、2014年ごろからです。夢洲において統合型リゾート(IR)の誘致が決まり、さらに2025年の万国博覧会の大阪招致を目指すことが決まったため、コスモスクエア~夢洲間について、アクセス路線として延伸が再検討されることになったのです。民営化した大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)も中期経営計画で、中央線の夢洲延伸について2024年度の開業を目標と設定しました。 そして、2018年には、実際に2025年万博の開催地が大阪で決定したため、中央線の夢洲延伸が正式に決まったのです。 これにより、大阪メトロ中央線は、2024年度までにコスモスクエア~夢洲間3.2kmの延伸が行われることになりました。整備事業者はOTSで、大阪メトロは運行を担う第二種鉄道事業者となります。 北港テクノポート線という枠組みで考えると、夢洲~舞洲~新桜島間の延伸計画が残ります。この区間については、現時点で建設に向けて決定したことはありません。JR西日本が桜島線延伸による建設に意欲をみせ、中期経営計画に盛り込まれた時期もありましたが、新型コロナ化で雲散霧消し、現在は同社の経営計画に記載はありません。 森之宮新駅については、2022年12月に大阪メトロが公表しました。森之宮検車場周辺では再開発が予定されていて、そのアクセス線となります。 留置線に出入りするための側線を営業路線にするため、線路設備や信号設備を強化します。こうした準備を経て、2028年春に新駅が開業する見通しです。 大阪メトロ中央線延伸のデータ 大阪メトロ中央線延伸データ 営業構想事業者 大阪市高速電気軌道(大阪メトロ) ...
大阪メトロ今里筋線

大阪メトロ今里筋線延伸

大阪メトロ今里筋線は、井高野駅から今里駅まで11.9kmを結ぶ路線で、地下鉄8号線とも呼ばれます。2006年12月24日に開業した地下鉄路線で、今里駅から湯里六丁目まで6.7kmを延伸する計画があります。 大阪メトロ今里筋線延伸の概要 大阪メトロ今里筋線の延伸計画区間は、今里~湯里六丁目の6.7kmです。今里筋の真下を南北に走る路線となります。 延伸区間では、今里駅含め全7駅が予定されており、中川二丁目、大池橋、杭全、今川二丁目、中野町、湯里六丁目の6カ所の新駅が設けられます(いずれも仮称)。杭全駅はJR関西本線の東部市場前駅との乗り換え駅になります。また、湯里六丁目駅にバスターミナルを設置します。   現状の今里筋線で使われているリニアモーター駆動式中量規模地下鉄がそのまま走ります。ワンマン運転の4両編成が朝ラッシュ時4分~5分間隔、夕ラッシュ時が5分間隔、昼間が10分間隔で運転されます。車庫は既設の鶴見北車庫を使用します。 2014年に公表された「『大阪市交通事業の設置等に関する条例』に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について」によりますと、2017年度着工、2025年度開業として、開業5年後の輸送人員が1日あたり31,744人、輸送密度が18,042人キロと見込まれました。開業15年後には、輸送人員が1日あたり27,903人に減るとの想定も示されました。 延伸にかかる総事業費は1,363億円と見込まれました。収支予測は厳しく、開業40年目の累積最大欠損は712億円にのぼり、30年の費用便益比は0.92というものでした。新線加算運賃を60円とし、需要が1日あたり3,000人増える方策を施して、年間11.5億円の追加補助をした場合に、費用便益比がようやく1を超える(1.01)という試算です。「延伸しても採算が取れない」という結論と表現していいでしょう。 今里筋線には、このほか、井高野~正雀・岸辺1.8kmへの延伸構想もあります。ただ、構想の域を出ておらず、具体化していません。 大阪メトロ今里筋線延伸の沿革 今里筋線の建設計画は、1982年2月の「大阪を中心とする鉄道網整備構想について」(大阪府・大阪市)において、構想路線に位置づけられたのが最初です。1989年5月の運輸政策審議会第10号答申では、「今後路線整備を検討すべき区間」として、上新庄~太子橋今市~湯里六丁目間が盛り込まれました。 これを受け、1989年11月の「大阪市交通事業の設置等に関する条例」にも今里筋線計画が盛り込まれ、1996年12月には、大阪市交通局の次期整備路線を井高野~湯里六丁目間とすることが、議会で了承されました。このうち、井高野~今里間が、2000年3月に着工し、2006年12月に開業しています。 残る今里~湯里六丁目間については、2004年10月の近畿地方交通審議会答申第8号で「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」と位置づけられました。それを受けて、井高野~今里間の開業後、速やかに建設できるよう準備が進められ、2006年度中の着工・2016年度の開業予定とされました。2005年8月には、今里~湯里六丁目間の建設に向けて、地下鉄建設の補助金が国の予算概算要求に盛り込まれています。 しかし、当時の大阪市長の関淳一が、再選の選挙に向けて延伸凍結を公約。再選後、同年11月の大阪市都市経営会議で、市の財政が厳しいことなどから補助採択要望の取り下げを決定。事実上、延伸計画を凍結します。 橋下市政下での結論 その後、橋下徹市政下で、2013年に設置された大阪市鉄道ネットワーク審議会が、大阪市営地下鉄の計画4路線について検討。2014年に『「大阪市交通事業の設置等に関する条例」に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について』というとりまとめを答申しました。 そのなかで今里筋線延伸に関して、「収支採算性は累積欠損を解消できず、費用対効果もB/Cが1を下回る」などという結果を示し、採算が取れないと結論づけました。 これに対し延伸実現を求める自民党市議団が、大阪市営地下鉄民営化関連議案に賛成する条件として今里筋線延伸区間でのBRTの実験実施を求めました。2015年に就任した吉村洋文市長がこれを受け入れ、地下鉄民営化後、2019年4月から、今里線延伸予定区間を中心としたBRT(いまざとライナー)運行が社会実験として行われています。 社会実験は5年間の予定でしたが、新型コロナ禍を挟んだことから2年間を延長。2026年ごろまで続けられる予定です。 社会実験2024年2月の発表では、いまざとライナーの2023年12月時点の利用者数は1日約3,000人。1便あたりの利用者数は21.3人でした。   大阪メトロ今里筋線延伸データ 大阪メトロ今里筋線延伸データ 営業構想事業者 大阪市高速電気軌道(大阪メトロ) 整備構想事業者 未定 路線名 今里筋線 区間・駅 今里~湯里六丁目 距離 6.7km 想定輸送密度 18,042人 総事業費 1293億円(民営) 費用便益比 0.87(民営) 累積資金収支黒字転換年 発散 種別 未定 種類 普通鉄道 軌間 1435mm 電化方式 直流1500V 単線・複線 複線 開業予定時期 未定 備考 -- ※データは『「大阪市交通事業の設置等に関する条例」に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について』より 大阪メトロ今里筋線の今後の見通し 大阪の地下鉄未成線のなかで、比較的実現可能性が高かったのが、この今里筋線今里~湯里六丁目間です。実際、関淳一市長が計画凍結をしなければ、2016年に開業していたかもしれません。 しかし、大阪の地下鉄路線で唯一大阪環状線内に入らず、御堂筋線にも接続しない路線だけあって、建設しても、採算面で苦戦したのは間違いありません。実際、今里筋線の既開業区間の利用状況は厳しく、年間約40億円の赤字を計上しています。 延伸区間についても、2014年の答申で、採算が取れないとの結論が出ています。大阪の地下鉄は2018年4月に民営化されたこともあり、今後、湯里六丁目延伸の実現はかなり困難とみられます。 井高野~正雀・岸辺方面の延伸については、大阪市域を外れ吹田市にかかる話なので、さらに実現へのハードルが高そうで、現時点で、実現の見通しはありません。
大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸

大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸

大阪メトロ長堀鶴見緑地線は、大正駅から門真南駅まで15.0kmを結ぶ路線で、地下鉄7号線とも呼ばれます。1990年に京橋駅~鶴見緑地駅間が開業。1996年に心斎橋駅まで、1997年に大正駅、門真南まで、それぞれ延伸しました。 さらに、大正駅から鶴町まで5.5kmを延伸する計画が残されています。 大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸の概要 大阪メトロ長堀鶴見緑地線の延伸計画区間は、大正~鶴町の5.5kmです。大正駅から大正通を南下し、大運橋で西に折れ、鶴町4丁目付近に至ります。 延伸区間では、大正駅含め全7駅が予定されています。大正駅~大正区役所付近までが地下構造、鶴町4丁目までは高架構造が想定されています。終点近くの鶴浜に車庫用地が確保してありますが、既設の鶴見検車場で対応可能なため、仮に開通しても車庫が作られない可能性が高そうです。 現状の長堀鶴見緑地線線で使われているリニアモーター駆動式中量規模地下鉄が導入され、ワンマン運転の4両編成が朝ラッシュ時3分~3分40秒間隔、夕ラッシュ時が3分30秒間隔、昼間が7分間隔で運転されます。   2014年に公表された「『大阪市交通事業の設置等に関する条例』に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について」によりますと、2017年度着工、2025年度開業として、開業5年後の輸送人員が1日あたり34,694人、輸送密度が15,802人キロと見込んでいます。開業15年後には、輸送人員が1日あたり30,494人に減るとの想定も示されました。 延伸にかかる総事業費は1190億円と見込まれています。収支予測は厳しく、開業40年目の累積欠損は764億円にのぼり、30年の費用便益比は1.26というものでした。費用対効果はB/Cが1を上回りますが、「収支採算性は累積欠損を解消できない」としています。 事業化のためには、利用者の増加や加算運賃が必要との結論で、建設に後ろ向きの表現となりました。 大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸の沿革 長堀鶴見緑地線の建設計画は、1982年2月の「大阪を中心とする鉄道網整備構想について」(大阪府・大阪市)において、構想路線に位置づけられたのが最初です。 1989年5月の運輸政策審議会第10号答申では、鶴町~大正間が「2005年までに整備に着手することが適当である区間」とされ、大正~長堀通~京橋~鶴見緑地間が「2005年までに整備することが適当である区間」とされています。大正~鶴見緑地間は、答申期限より早く1997年に開業しています。 しかし、鶴町~大正間の整備は進みませんでした。2004年10月の近畿地方交通審議会答申第8号で「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」と位置づけられたものの、具体的な事業化計画にまで至っていません。 2011年に市長に就任した橋下徹は、大阪市営地下鉄の計画路線4路線について検討するために、2013年に大阪市鉄道ネットワーク審議会を設置。2014年に「『大阪市交通事業の設置等に関する条例』に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について」というとりまとめを答申しました。 長堀鶴見緑地線の鶴町延伸に関して「収支採算性は累積欠損を解消できないことから、事業化のためには、例えば約1割の需要増と新線区間の加算運賃に加え、毎年の運営費補助の導入が必要である」としています。他の未着手3路線とあわせて「事業化はきわめて厳しい」と表現し、事業化への道筋は立っていません。 大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸データ 大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸データ 営業構想事業者 大阪市高速電気軌道(大阪メトロ) 整備構想事業者 未定 路線名 長堀鶴見緑地線 区間・駅 大正~鶴町 距離 5.5km 想定輸送密度 15,802人キロ 総事業費 1190億円(民営) 費用便益比 1.26(民営) 累積資金収支黒字転換年 発散 種別 未定 種類 普通鉄道 軌間 1435mm 電化方式 直流1500V 単線・複線 複線 開業予定時期 未定 備考 -- ※データは『「大阪市交通事業の設置等に関する条例」に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について』より 大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸の今後の見通し 2014年に公表された大阪市鉄道ネットワーク審議会の答申によりますと、大阪市の地下鉄未着手路線4線で、もっとも費用対効果が高いのが、長堀鶴見緑地線の大正~鶴町延伸です。 コスト削減をしないで建設する「基本ケース」でも、費用便益比が1.21となっており、今里筋線の延伸よりも数字は良好でした。大正区役所付近から南を高架にするなどの工夫で建設コストを削減すれば、費用便益比は1.92と高くなります。 それでも、40年後の累積欠損は522億円に達するという試算になっており、黒字化は容易ではありません。将来的な人口減少を勘案すれば、採算を取るのは難しく、延伸は凍結されたままです。 2020年には鶴浜の車庫用地が商業・業務機能や交流機能などが導入できるように地区計画が変更となりました。こうしたことからも、長堀鶴見緑地線の鶴町延伸の実現は見通せません。
京阪中之島線延伸

京阪中之島線九条延伸

京阪中之島線は、中之島~天満橋間の3.0kmを結ぶ路線です。中之島からさらに延伸し、九条、西九条、新桜島方面へ延伸する計画があります。 京阪中之島線延伸の概要 京阪中之島線は2008年10月に開業した、比較的新しい鉄道路線です。これを九条駅まで延伸し、大阪メトロや阪神なんば線と接続させる計画があります。 夢洲にIR(統合リゾート)できることを前提にしたもので、九条駅で中央線と接続し、京都と夢洲IRを1度の乗り換えでつなぐことを狙っています。 延伸計画の詳細は明らかではありません。途中駅を設けるかも不明です。中之島~九条間の直線距離は2km程度なので、途中駅を設けるほどの距離ではありませんが、新駅を作るとすれば、西区川口付近になるでしょう。 さらに、西九条や桜島方面への延伸計画もありますが、構想段階にとどまります。   京阪中之島線延伸の沿革 京阪中之島線の計画がオーソライズされたのは、1989年の運輸政策審議会答申第10号です。天満橋駅から渡辺橋を経て玉江橋(中之島)までの区間が、「2005年までに整備に着手することが適当である区間」とされました。この区間は、2003年5月に着工、2008年10月に完成しています。 開業前から中之島以西への延伸計画があり、2004年の近畿地方交通審議会答申第8号では、「中期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として中之島駅から西九条駅を経て新桜島および夢洲方面へ延伸する案が示されています。(下の地図の10の路線) この案では、中之島駅から堂島川をくぐり、上船津橋北詰、中央市場北口、中央市場西口の交差点の地下を通り、西九条と千鳥橋を経て、桜島二丁目交差点の新桜島駅に至る約7.3kmの経路が想定されていました。西九条駅~千鳥橋駅間は阪神なんば線と並走することから、将来的に阪神なんば線への乗り入れも構想に入っていたようです。 しかし、2008年に開業した中之島線の利用状況が思わしくないこともあり、新桜島への延伸計画は進展しませんでした。   転機が訪れたのは、大阪府がIR(統合リゾート)誘致に本腰を入れ初めてからです。2014年に大阪府市IR立地準備会議が「夢洲への鉄道アクセスの技術的検討」について報告。そのなかで、中之島~新桜島~夢洲まで整備した場合、約11kmで3,500億円の概算事業費がかかると試算しました。(新桜島~夢洲間は北港テクノポート線)。   2017年7月には、京阪ホールディングスの加藤好文社長が、中之島駅から南西に進んで地下鉄中央線の九条駅につなげる構想を公表。2018年2月には、加藤社長らが、2024年に予定されている夢洲のIR開業に合わせて九条駅まで延伸し、その後、西九条駅まで延ばす構想を明らかにしました。 2018年11月に関西万博の夢洲での開催が決まると、大阪市営地下鉄中央線のコスモスクエア~夢洲間の延伸が決定的になり、中之島線を九条駅まで伸ばせば、夢洲へのアクセスが確保されるメドも立ちました。 2020年からの新型コロナ禍で停滞したものの、2023年4月に夢洲IRが国から正式認可。同年7月に、京阪も社内で検討委員会を立ち上げ、九条延伸へ向けた検討を本格化、2030年秋までの開業を目指す方針を明らかにしました。 ただこの時点では、IR事業者に解除権が残されていたため、2023年度末までに、結論をいったん先送りしました。IRが2024年9月に解除権を放棄する方針を示したことから、京阪中之島線延伸計画も再始動へ向け動き出しそうです。 なお、加藤社長は、中央線との直通運転も検討するとも発言していますが、給電方式が異なることや、九条駅での線路接続が技術的に困難なことから、実現性は低いと見られています。 京阪中之島線延伸のデータ 京阪中之島線延伸データ 営業構想事業者 京阪電鉄 整備構想事業者 未定 路線名 中之島線 区間・駅 中之島~九条 距離 約2km 想定利用者数 -- 総事業費 -- 費用便益比 -- 累積資金収支黒字転換年 -- 種別 未定 種類 普通鉄道 軌間 1,435mm 電化方式 直流1500V 単線・複線 複線 開業予定時期 未定 備考 -- 京阪中之島線延伸の今後の見通し 京阪中之島線の既存区間の利用者は、想定の2割程度と低迷しています。なにわ筋線が開業し、中之島駅ができれば、京阪中之島線の利用者の一部がなにわ筋線に流出するとみられており、さらに利用者が減る可能性も指摘されています。 こうした状況から、京阪電鉄としては、中之島線の利用者を増やすため、「西側のアクセス」を早急に確保したいと考えているようです。九条駅へ延伸案は、中之島駅から2kmあまりと近く、道路下の空間を線路用地に使えるため、早く、安く作れそうです。 とはいえ、京阪電鉄が自力で作ることはできず、上下分離のスキームにより、行政の補助金を受ける必要があります。 開業時期は2030年度とされていましたが、判断先送りの影響もあって見通せません。費用便益比などの数字も明確でなく、本当に着工できるのかも定かではありません。実現する場合でも、早くても2030年代前半になるでしょう。
JR桜島線延伸

JR桜島線夢洲延伸

JR桜島線は、西九条駅から桜島駅まで4.1kmを結ぶ路線です。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへのアクセス路線として知られ、「JRゆめ咲線」とも呼ばれます。 これを舞洲を経て夢洲まで約6km延伸する計画があります。北港テクノポート線計画とのかかわりにも触れながら解説します。 JR桜島線延伸の概要 JR桜島線の延伸構想は、桜島駅~舞洲駅~夢洲駅の約6kmです。2014年にまとめられた『夢洲への鉄道アクセスの技術的検討の報告』によりますと、ユニバーサルシティ駅西付近から地下化し、桜島駅を地下化。北西の舞洲へ地下路線で進み、さらに南西へ折れて夢洲に達するというルートです。 桜島駅~夢洲駅間の途中駅は舞洲駅のみです。大阪駅~舞洲駅の所要時間は約22分。概算整備費は1700億円と見積もられました。建設期間は、標準工期で11年、短縮工期で9年と考えられています。 整備主体や開業予定、運転計画などは未定です。JR西日本は、2022年度までの中期経営計画で「夢洲アクセス検討」を掲げ、IR(統合型リゾート)が実現した場合に、整備を検討する姿勢を明らかにしました。 しかし、新型コロナ禍を経て消極姿勢に転換。2025年までの中期経営計画では、桜島線の延伸にかかわる記載はなくなりました。したがって、現時点では、JR桜島線沿線は構想段階にとどまり、実現の見通しは立っていません。   JR桜島線延伸の沿革 オリンピックとUSJ ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの西にある島を舞洲、その南西にある島を夢洲といいます。これらの人工島をつなぐ鉄道を敷く構想は、1983年に「テクノポート大阪計画」が発表されたころから具体化し始めたようです。 1989年の運輸政策審議会第10号答申では、海浜緑地(コスモスクエア)~北港南(夢洲)~北港北(舞洲)間を結ぶルートが「北港テクノポート線」として、2005年までに整備に着手することが適当な路線とされました。さらに北港北から此花方面が「今後路線整備について検討すべき方向」として盛り込まれました。 1991年に大阪市はオリンピックの招致活動を開始。舞洲が会場予定地、夢洲が選手村予定地とされました。北港テクノポート線はそのアクセス鉄道としての役割が付与されることになります。当初の構想は、桜島線の延伸ではなく、地下鉄中央線を大阪港からコスモスクエアを経て、夢洲、舞洲まで延ばすというものでした。 1998年になり、北港テクノポート線の計画は新桜島までに拡大されます。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の誘致が決まったことを受けたもので、新桜島駅はUSJの北側に隣接する位置に予定されました。   オリンピック招致の失敗 新桜島への接続路線として、JR桜島線の延伸が計画されました。桜島線は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの整備計画にあわせて、1999年に安治川口~桜島間のルートを変更、桜島駅を移設しています。移設された桜島駅は新桜島駅への延伸を考慮した形となり、大阪市はJR西日本に新桜島駅まで約1kmの延伸を要請しています。 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは2001年7月に無事開業したものの、大阪オリンピックの招致は2001年7月のIOC総会で失敗。北港テクノポート線計画は凍結となり、JR桜島線の新桜島駅延伸も立ち消えとなりました。 一方で、京阪中之島線の新桜島駅延伸計画が浮上。玉江橋(現中之島)~西九条~千鳥橋~新桜島間として建設するルートです。2004年の近畿地方交通審議会答申第8号で、「中期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として記載されました。 まとめると、2000年代前半までの大阪北港への計画路線としては、大阪市内からJR桜島線と京阪中之島線を新桜島駅まで建設し、その先は北港テクノポート線が舞洲、夢洲を経てコスモスクエアをつなぐルートとなっていたわけです。   IR誘致 しかし、オリンピック招致失敗の後、大阪湾岸の開発が停滞したこともあり、これら鉄道計画は全く進展しませんでした。状況が変わったのは、2008年に大阪府知事に橋下徹が就任してからです。 大阪府知事就任後、橋下知事は、大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)の再建問題に絡み、JR桜島駅からニュートラムのトレードセンター前駅まで約4kmの延伸を検討。2009年9月の各社報道によれば、舞洲や夢洲に寄らず、桜島駅からトレードセンターへ海底地下路線で直結するルートが考えられていたようです。 この計画は具体化しませんでしたが、 その後、大阪府市が夢洲に統合型リゾート(IR)の誘致を進めるにあたり、鉄道アクセスとしてJR桜島線の延伸が改めて検討されました。 2014年9月には、IR立地準備会議「夢洲への鉄道アクセスの技術的検討の報告」で、JR桜島線の延伸計画の概要が明らかにされました。桜島駅~舞洲駅~夢洲駅の約6kmのルートで、新桜島駅を経由しません。報告ではこのルートのほか、舞洲へは「京阪中之島延伸案」も検討されました。つまり、JR桜島線で確定した話にはなっていません。 また、2014年1月に公表された大阪府の『公共交通戦略』には「JR桜島線延伸については、まずは、夢洲、咲洲、舞洲地区の開発の具体化を⾒極める」と記されるにとどまり、具体的な方向性を示すに至りませんでした。   中期経営計画記載と削除 2018年4月には、JR西日本が2022年度までの中期経営計画で、「夢洲アクセスの検討」を記載。2018年11月には、2025年大阪万博が夢洲で開かれることが決定し、JR桜島線延伸の機運は高まりました。 ただし、JR西日本の来島達夫社長は、万博開催のみでの延伸はせず、IR誘致決定が路線延伸の前提という姿勢を見せました。 2019年の大阪府『公共交通戦略』改訂版では、「夢洲まちづくりの主体が夢洲の段階的な土地利用の状況に応じた鉄道整備を検討」という記述に変わりました。IRの展開次第で鉄道整備の検討を促す記述になっています。 その後、新型コロナウイルス感染症の流行を経て、JR西日本の経営状況が悪化。桜島線延伸は議論の俎上にのぼらなくなります。2023年4月に発表された2025年度までの中期経営計画では「夢洲アクセスの検討」の記載はなくなり、「万博アクセス」と表現されるのみになっています。夢洲延伸への前向きな表現が消えたように感じられ、実現は見通せなくなりました。 北港テクノポート線計画という視点で見ると、コスモスクエア~夢洲間3.0kmについては、大阪メトロ中央線が建設することが決まっています。しかし、夢洲~舞洲~新桜島間の計画は残されたままで、JR桜島線の延伸によって実現するかは定かではありません。 JR桜島線延伸のデータ JR桜島線延伸データ 営業構想事業者 JR西日本 整備構想事業者 未定 路線名 桜島線(ゆめ咲線) 区間・駅 桜島~舞洲~夢洲 距離 約6km 想定利用者数 -- 総事業費 -- 費用便益比 -- 累積資金収支黒字転換年 -- 種別 未定 種類 普通鉄道 軌間 1,067mm 電化方式 直流1500V 単線・複線 複線 開業予定時期 未定 備考 -- JR桜島線延伸の今後の見通し JR桜島線の舞洲・夢洲延伸は、夢洲IRの実現が決定することが前提でした。2023年4月にIRが正式決定したことで、その前提は充たされました。 しかし、新型コロナ禍による社会情勢の変化や、JR西日本の経営状況の悪化を受け、延伸実現は見通しづらくなりました。夢洲でのまちづくりなどが成功し、多くの利用者が見込まれる状況になり、初めて実現に向け動き出す形となりそうです。 新桜島~舞洲~夢洲の路線計画は、もともとは北港テクノポート線の枠組みとして構想され、地下鉄中央線を大阪港から延伸する形が想定されていました。この案については、梅田から北港への利便性に難があるため、おそらくは採用されないとみられます。
大阪モノレール延伸

大阪モノレール瓜生堂延伸

大阪モノレール線(本線)は、大阪空港駅から門真市駅まで21.2kmを結ぶ路線です。1990年に千里中央~南茨木間が開業し、1997年に大阪空港~門真市間が開業しました。 現在、門真市~瓜生堂間(仮称)の8.9kmの延伸に着手していて、2033年ごろに開業する予定です。 大阪モノレール延伸の概要 大阪モノレール本線の延伸計画区間は、門真市~瓜生堂の8.9kmです(未設駅は仮称、以下すべて)。途中、松生町、門真南、鴻池新田、荒本の4駅を設置します。軌道は中央環状線に沿って建設しますが、荒本駅付近のみ東側にせり出し、東大阪市道上を走り、東大阪市役所に隣接する形で駅を設けます。終点瓜生堂の北には、中央環状線の未利用地を使って車庫を設置します。 門真南駅では地下鉄鶴見緑地線と接続。鴻池新田ではJR学研都市線と接続。荒本駅では近鉄けいはんな線と接続。瓜生堂では近鉄奈良線と接続します。瓜生堂に近鉄の駅はありませんが、モノレール延伸にあわせて設置される予定です。また、荒本~瓜生堂間に車両基地を設けます。 延伸開業後、門真市~瓜生堂間は17分、瓜生堂~大阪空港は55分で結ばれます。開業後の運行系統や本数について明確な資料はみつかりませんでしたが、既存の大阪モノレール本線の全列車が瓜生堂まで乗り入れるとみられます。 開業予定は2029年度とされていましたが、2024年4月に、4年の延期を発表。2033年頃に後ろ倒しとなりました。   総事業費と費用便益比 延伸区間の需要予測は1日5万3000人(全区間1日16万9000人)です。事業費は事前評価時に1,050億円、2022年の再評価時に1,113億円、2024年の再々評価時に1,864億円と見積もられました。このうちインフラ部が1,442億円、インフラ外部が422億円です。 インフラ部分については、国が791億円、大阪府や東大阪市などの自治体が651億円負担し、車両などのインフラ外部422億円を大阪高速鉄道が負担します。 費用便益比は、2024年の再々評価時に1.23(30年)~1.42(50年)です。 大阪モノレール延伸の沿革 大阪モノレールは、伊丹空港と堺の工業地帯を結ぶという構想の路線です。そのため、現在着手している延伸区間は、当初構想の範囲内です。 1989年の運輸政策審議会答申第10号では、大阪国際空港~門真間が「2005年までに整備することが適当である区間」、門真~茨田~荒本・堺方面と大阪国際空港~伊丹付近~武庫之荘方面が「今後路線整備について検討すべき区間・方向」として示されました。 2004年の近畿地方交通審議会答申第8号では、「京阪神圏において、中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として、門真市~瓜生堂のみが盛り込まれ、延伸区間が絞られました。しかし、財政状況が厳しいなか、大阪モノレールの既存区間の経営状況を見極めるということで、計画は凍結状態になってしまいます。   公共交通戦略の位置づけから合意へ 建設へ向け動き出したのは、2012年6月。大阪府戦略本部会議が大阪モノレール延伸を検討することを決めます。2013年4月から事業化に向けた検討を開始し、2014年1月に『大阪府公共交通戦略』で「今後、事業実施の可否について、個別に検討が必要な路線」と位置付けました。 その後、事業負担割合について自治体との協議に移り、2015年7月に東大阪市と合意。着工への環境が整いました。2016年1月15日に行われた大阪府の戦略会議で、大阪モノレール延伸の事業化を意思決定。2019年度の着工、2029年度の開通を目指すとしました。 2019年3月にに都市計画決定、軌道法特許取得、2020年3月に都市計画事業認可取得、同4月に軌道法工事施行認可取得と進み、着工に至っています。 当初、松生町駅の設置予定はありませんでしたが、2021年3月には、門真市~門真南間に松生町駅を設置することで、大阪府、門真市、守口市、大阪モノレールが合意しました。 事業は順調に進んでいるように見えましたが、2024年4月に、事業費の増加と開業時期の後ろ倒しを発表。2029年度の開業が2033年度ごろになる見通しになりました。事業費はインフラ部が約786億円が約1,442 億円になるという、大幅な増額でした。 その他の区間 大阪モノレールには、瓜生堂~堺間の建設計画が残っています。2017年6月には、堺市、八尾市、松原市が、連盟で大阪府に対し、「大阪モノレール計画の堺方面へ延伸に関する要望書」を提出しました。しかし、建設についての議論は進んでいません。 なお、大阪モノレールには、彩都線の彩都西~山手台車庫駅の延伸計画もありましたが、2017年1月に計画中止が決まっています。2019年3月19日に正式に計画廃止となりました。   大阪モノレール延伸のデータ 大阪モノレール延伸データ 営業構想事業者 大阪高速鉄道 整備構想事業者 大阪府(インフラ部)大阪高速鉄道(インフラ外部) 路線名 大阪モノレール線 区間・駅 門真市~瓜生堂(5駅新設) 距離 約8.9km 想定利用者数 約53,000人 総事業費 約1,442億円(インフラ部) 費用便益比 1.23~1.42 累積資金収支黒字転換年 -- 種別 軌道事業 種類 跨座式モノレール 軌間 -- 電化方式 直流1500V 単線・複線 複線 開業予定時期 2033年度頃 備考 社会資本整備総合交付金(インフラ部) ※データはおもに『事業再々評価書』(2024年度)より。 大阪モノレール延伸の今後の見通し 2016年度に事業化が決定し、2020年に事業着手しており、導入空間もほぼ確保されています。開業予定は2033年度ごろと後ろ倒しされましたが、門真市~瓜生堂間がいずれ開業することは間違いありません。 大阪モノレールは、さらに堺市方面への建設計画も残っています。しかし、瓜生堂~堺間に事業化に向けた動きはまだなく、建設のメドは立っていません。また、彩都線延伸は、2017年に計画断念が決まっています。
近鉄けいはんな線延伸

近鉄けいはんな線延伸

近鉄けいはんな線は、長田駅から生駒駅を経て学研奈良登美ヶ丘駅まで18.8kmを結ぶ路線です。学研奈良登美ヶ丘駅から、新祝園駅または高の原駅まで延伸する計画があります。 近鉄けいはんな線延伸の概要 近鉄けいはんな線の延伸は、学研奈良登美ヶ丘~高の原間と、同~新祝園間の計画があります。近畿地方交通審議会答申第8号(2004年)では、両線並記で記載されました。 2018年の精華町の調査報告書では、新祝園ルートで鉄道案とLRT案を挙げ、高の原ルートでは鉄道案のみを挙げています。報告書を基に、概要をみてみます。   高の原延伸(鉄道) 高の原延伸案は、近鉄けいはんな線をそのまま延伸します。計画区間は、学研奈良登美ヶ丘~高の原間の3.8kmです。途中駅として、乾谷を設けます。 けいはんな線と同じく第三軌条方式で、運行速度は100km/h。概算事業費は約350億円、1日16,700人の利用者を想定します。 新祝園延伸(鉄道) 新祝園延伸鉄道案は、近鉄けいはんな線を新祝園に延伸します。計画区間は、学研奈良登美ヶ丘~新祝園間の6.2kmです。途中駅として、精華光台、学研中央、祝園ニュータウンの3駅を設けます。 こちらも第三軌条方式で、運行速度は100km/h。概算事業費は約570億円、1日25,200人の利用者を想定します。   新祝園延伸(LRT) LRT案は、近鉄けいはんな線と直通しませんので、正確には同線の延伸ではありません。計画区間は学研奈良登美ヶ丘~新祝園間の7.0kmです。 途中駅として、鹿の台口、光台5丁目、光台4丁目、光台3丁目、けいはんなプラザ、国会図書館前、けいはんな記念公園、精華台3丁目、精華台2丁目、畑の前公園、精華町役場前の11駅を設けます。 運行速度は20km/h。基本的には道路上に軌道を敷設するため、概算事業費は約140億円と廉価です。1日12,000人の利用者を想定します。 2ルート3案のいずれも費用便益比や採算性の試算は公表されていません。事業着手の予定はなく、開業予定も決まっていません。運行計画なども未定です。 近鉄けいはんな線延伸の沿革 近鉄けいはんな線(生駒以東)は、「京阪奈新線」と呼ばれ、1982年に国土庁が発表した「関西学術研究都市基本構想」に端を発します。この構想で、生駒~高の原間と、途中で分岐して精華・西木津方面へ向かう路線が示されました。 1989年の運輸政策審議会答申第10号『大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について』では、「京阪奈新線」について、生駒~高の原間が「2005年までに整備することが適当な区間」、分岐して祝園付近までと高の原~木津方面までが「整備について検討すべき路線」として盛り込まれました。 その後、近畿運輸局、奈良県、京都府、近鉄が参加する「京阪奈新線整備研究会」が調査を実施し、1995年に中間報告を公表。全線整備での事業収支採算性確保が厳しいため、「段階的な整備も一つの有効な方策」としました。 翌1996年6月13日の近畿地方交通審議会答申第5号『奈良県における公共交通機関の維持整備に関する計画について』では、「早期に事業化を図るため、第一段階として、生駒駅から登美ヶ丘付近まで整備することが適当であり、引き続き高の原までの残る区間についても前記答申(運輸政策審議会答申第10号)の趣旨に沿って、できる限り早期に整備する必要がある」とされました。 これを受け、生駒駅~学研奈良登美ヶ丘駅間の事業化が決定。2000年に着工し、2006年3月に開業します。しかし、利用者数は伸び悩み、2010年の事後評価総括表によれば、生駒~登美ヶ丘間の開業5年目の1日あたりの利用者数は、25,000人(2009年)にとどまりました。5年目の想定利用者数が1日84,000人だったので、3割程度にすぎません。 登美ヶ丘以遠については、2004年の近畿地方交通審議会答申第8号『近畿圏における望ましい交通のあり方について』で、「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として、「登美ヶ丘~高の原」「登美ヶ丘~学研中央~祝園NT~新祝園」の両区間が並記されました。 しかし、開業区間の利用状況が思わしくないこともあり、延伸は事実上凍結されています。 新祝園ルートの延伸先にあたる京都府精華町が建設運動をしており、「京阪奈新線新祝園ルート」の実現に向けて調査などを進めています。 近鉄けいはんな線延伸のデータ 近鉄けいはんな線延伸データ 営業構想事業者 近畿日本鉄道 ...
札幌市電延伸

札幌市電延伸

札幌市電(路面電車)は、西4丁目やすすきのを起点にして市内を循環しています。これをさらに、札幌駅方面を含む都心地域や、桑園地域、創成川以東地域へ延伸する計画がありました。 2022年9月21日に、札幌市長が延伸断念を市議会で表明し、計画は中止しています。 札幌市電延伸の概要 札幌市では、2010年に「札幌市路面電車活用方針」を定め、市電の延伸について検討しています。延伸先の候補としては都心地域、創成川以東地域、桑園地域の3箇所が挙げられました。このうち、都心地域の一部(西4丁目~すすきの間)については、2015年12月10日に開業し、市電のループ化が実現しています。 札幌市ではさらなる延伸に意欲を見せ、調査を実施。2022年9月に調査をとりまとめ、2023年3月公表しました。それによると、市電延伸ルートは9案ありました。都心地域、都心地域+創成川以東地域、桑園地域の各3ルートずつです。   もっとも多くの利用者が見込めたのは、「都心ルート3+創成川以東ルート」です。西4丁目から札幌駅前通を札幌駅まで走り、東へ転じて新幹線札幌駅前から西2丁目を南下。北3条通りに入り、苗穂駅に至る案です。 下図の緑のラインです。 このルートの場合、1日6,910人の利用者を見込みます。整備費は144億円、30年後の累積欠損金は34億円という試算になりました。 その他のルートでは、30年後の累積赤字が、都心ルートで18億~48億円、都心を含む創成川以東への延伸で34億~73億円、桑園地域で29億~39億円と試算しました。 延伸の課題 延伸は基本的には既存道路上に軌道を敷設します。札幌市街地に多い一方通行道路では、道路中央に軌道を設置すると自動車の車線変更ができなくなるという事情から、軌道を歩道側に設置するサイドリザベーション方式を想定します。 道路沿線には駐車場出入口や地下への出入口、地上機器がありますので、サイドリザベーションでの停留場の配置においては、これら施設を回避する必要があります。 停留場以外でも、沿線施設や駐車場の出入を制限することになります。ループ化区間(西4丁目停留場~すすきの停留場)では駐車場の出入口設置がもともと制限されていたので、このような課題はありませんでしたが、延伸区間の沿道では制限されていません。沿線施設等の出入口の支障は、抜本的な解決方法がなく、沿線の土地利用に制限が生じます。 そのほか、軌道設置によって車線数が減少し、道路混雑が悪化することが見込まれるほか、冬期間の堆雪スペースや、タクシー・荷さばきを行うためのスペースが不足し、経済活動にも影響を及ぼすことがことが想定されました。 採算面でも厳しい数字となっていて、30年間の累積損失は赤字が見込まれます。延伸した場合、更に収支が悪化し、既存線の経営への影響も懸念されます。 検討のとりまとめでは、こうした課題を列挙したうえで「路面電車の延伸を行うことは極めて困難である」という結論を示しました。報告を受け、秋元克広札幌市長は、延伸断念を表明。市電の延伸計画は中止となっています。 札幌市電延伸の沿革 札幌市電は1971年~1974年にかけて多くの路線が廃止され、西4丁目~石山通~すすきの間の袋状の路線を残すのみとなっていました。 この区間に関しても、利用者の減少から経営の悪化が予測されたため、2001年度以降に廃止も含めた検討がされています。 2003年度には「路面電車を存続させるために、経営の効率化や車両更新等の設備投資の内容、料金改定などの課題の整理」をおこなうとし、最終的に2005年2月に路面電車の存続を決定しました。このとき、「都心のまちづくりの中で、路面電車を積極的に活用するため、路線のループ化などについて早急に検討を開始する」としています。 2005年8月、まちづくりの中で市電を活用する方法について学識経験者や札幌市幹部が話し合う「さっぽろを元気にする路面電車検討会議」が発足。2006年9月に報告書を公表しています。 報告書では「『札幌駅周辺』『大通』『すすきの』の3地区を結ぶために、路面電車を延伸する必要がある」とし、「東西方向への面的な広がりを持たせることが望ましい」「JR札幌駅に路面電車を接続することや、基幹となる地下鉄3路線の都心各駅やバスターミナルと路面電車を結び、公共交通のネットワークを形成することで、都心内・沿線への集客機能と回遊性を高めることが望ましい」と指摘しました。   2010年3月には、市電活用に向けた「札幌市路面電車活用方針」を公表。路線延伸の実現可能性を検証し、将来の需要見込みから「都心地域」「創成川以東地域」「桑園地域」の3地域を検討地域としています。検討地域の再開発による新規需要も推計し、結果をまとめました。 その後、2012年1月には、西4丁目~すすきの間の札幌駅前通上を複線で接続する方針が固まったと報じられ、それを含めた「札幌市路面電車活用計画」が4月に公表されました。路線のループ化は、2015年12月に実現しています。利用者が乗降しやすいように、線路を道路の歩道側に敷設する「サイドリザベーション方式」が採用されました。 札幌市路面電車活用計画では、今後の展開として「札幌駅方面への延伸ルートに関する具体的な検討を進めるとともに、『創成川以東地域』『桑園地域』についても(中略)延伸の検討を行っていきます」としました。 この検討結果が2022年9月にまとまり、2023年3月に公表されました。内容の概略は上述のとおりです。検討結果を受け、延伸には多くの課題があり、採算も取れないことから、中止が正式に決まりました。   札幌市電延伸データ 札幌市電延伸データ 営業構想事業者 札幌市 整備構想事業者 札幌市 路線名 未定 区間・駅 西4丁目~札幌駅~苗穂駅など 距離 7.0km 想定利用者数 6,910人/日 総事業費 144億円 費用便益比 -- 累積資金収支黒字転換年 発散 種別 軌道事業 種類 軌道 軌間 1067mm 電化方式 直流600V 単線・複線 未定 開業予定時期 事業中止 備考 -- ※データは『札幌市路面電車の延伸検討結果』(2023)の「都心ルート+創成川以東」を抽出。 札幌市電延伸の今後の見通し 札幌市電の延伸は、2022年9月に秋元市長が正式に断念を表明したことで、実現不可能となりました。 秋元市長は「レールや架線がない仕組みも含めて交通環境に影響が少ない交通システムを検討していきたい」としており、路面電車以外の新たな交通システム導入の検討がされています。

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