東京メトロ半蔵門線松戸延伸

押上~松戸

東京メトロ半蔵門線は渋谷~押上間を結ぶ地下鉄ですが、これを松戸方面まで延伸する計画があります。半蔵門線は東京11号線と表記されるので、「東京11号線延伸」とも呼ばれます。

東京11号線は、かつて深川扇橋(清澄白河付近)止まりの計画でしたが、1985年の運輸政策審議会答申第7号で、計画区間が錦糸町~押上~松戸へ延長されました。これにより、半蔵門線松戸延伸計画が国のお墨付きを得た形となりました。

答申に従って、半蔵門線は2003年に押上まで開業しています。しかし、押上~松戸間について着工への具体的な動きはありません。それでも2016年国土交通省交通政策審議会答申198号には、押上~四ツ木~松戸間が盛り込まれ、計画自体は生き残っています。

東京メトロ半蔵門線松戸延伸の概要

東京メトロ半蔵門線(東京11号線)は、渋谷~押上間を結ぶ地下鉄です。これを四ツ木を経て松戸まで延伸しようとうのが、半蔵門線の松戸延伸計画です。

並行して東京メトロ有楽町線(東京8号線)の亀有方面への延伸構想もあります。このふたつの地下鉄の延伸構想について、沿線となる江東区、墨田区、葛飾区、松戸市などでは、「地下鉄8・11号線促進連絡協議会」を結成して建設を促しています。

それらに掲載された地図を見ると、半蔵門線延伸は押上~四ツ木~金町~松戸という経路で、金町~松戸間はJR常磐線に沿う形となっています。住吉~押上~四ツ木間は8号線(有楽町線)と11号線(半蔵門線)が線路を共用し、四ツ木で8号線が亀有方面、11号線が松戸方面へと分岐する構想です。

ただし、東京メトロは自力で建設する意思を示しておらず、現時点では正式決定した路線計画はありません。

半蔵門線松戸延伸
画像:江東区ウェブサイトより

東京メトロ半蔵門線松戸延伸の沿革

地下鉄半蔵門線(東京11号線)は、1978年8月1日に渋谷~青山一丁目間で開業しました。その後路線を延ばし、2003年3月19日に押上まで延伸開業。この時点で、東京メトロは、半蔵門線を「全線開業」と表現しています。

したがって、東京メトロとしては、半蔵門線は渋谷~押上間で完成という認識を持っていて、これを延伸する計画はありません。それでも、半蔵門線の松戸延伸が議論されるのは、運輸省・国土交通省の答申に記載されて続けているからです。

最初が1985年の運輸政策審議会答申第7号です。その次にあたる2000年の運輸政策審議会答申第18号では「東京11号線の松戸延伸」を「目標年次(2015年度)までに整備着手することが適当である路線」と位置づけました。また、「必要に応じ、松戸から千葉県北西部方面への延伸の可能性を検討する」とも記しています。

2004年に営団地下鉄が民営化され東京メトロになると、同社は副都心線を最後に新線建設を行わない方針を表明します。しかし、2015年7月10日、東京都は『広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫』を公表。そのなかで、半蔵門線松戸延伸を「整備について検討すべき路線」のひとつとして残しています。

これを受けた2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』では、半蔵門線松戸延伸について「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」と位置づけました。

同年7月に交通政策審議会が公表した『鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果』によれば、総事業費は3800億円。想定輸送密度は35,000人程度で、費用便益比は0.3、累積資金収支は黒字転換しないという結果になっています。

東京メトロ半蔵門線松戸延伸データ

東京メトロ半蔵門線松戸延伸データ
営業構想事業者 未定
整備構想事業者 未定
路線名 未定
区間・駅 押上~四ツ木~金町~松戸
距離 未定(約13km)
想定輸送密度 34,200~35,700
総事業費 3800億円
費用便益比 0.3
累積資金収支 発散
種別 未定
種類 普通鉄道
軌間 1067mm
電化方式 1500V
単線・複線 複線
開業予定時期 未定
備考 未定

※総事業費などは『鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果』(2016年、交通政策審議会より)

東京メトロ半蔵門線松戸延伸の今後の見通し

延伸沿線自治体で構成する「地下鉄8・11号線促進連絡協議会」では、まずは豊住線(地下鉄8号線豊洲~住吉間)の建設を第一段階として実現し、第二段階として8号線(有楽町線)の野田延伸と、11号線(半蔵門線)の松戸延伸につなげようという考え方を取っています。そのため、半蔵門線松戸延伸は、まずは豊住線が実現してから、ということになりそうです。

答申第198号では「事業性に課題があり(中略)事業性の確保に必要な需要の創出に繋がる沿線開発の取組等を進めた上で、事業主体を含めた事業計画について十分な検討が行われることを期待」と、やや厳しい表現で書かれています。要約すれば「現状では作っても赤字だし、東京メトロも手を挙げないだろうから、どこが運営するか決めて、沿線の再開発も考えてから事業計画を練ってください」というような内容です。

答申後に公表された試算でも、輸送密度が3.5万人程度と、東京の地下鉄としては物足りない数字で、費用便益比は0.3程度と厳しい内容でした。

押上~松戸間は鉄道空白地域というわけではなく、並行して京成押上線、京成金町線、JR常磐線が走っています。半蔵門線を松戸まで延伸すれば、これらの路線で利用者の減少が見込まれ、経営にも影響するでしょう。人口増加時代なら「混雑緩和」の名目が立ちますが、これからの人口減少時代では、並行路線の利用者減少が問題になりかねません。

そうした状況を勘案すれば、半蔵門線の松戸延伸が近い将来に実現する可能性は低いと判断せざるを得ません。