相鉄いずみ野線延伸

湘南台~慶應大学SFC~倉見

相模鉄道いずみ野線は、二俣川~湘南台を結ぶ鉄道路線で、平塚方面まで延伸する計画があります。このうち、湘南台~倉見間が2016年の国土交通省交通政策審議会答申198号に盛り込まれ、とくに湘南台~慶應大学間3.3kmの延伸が先行して検討されています。

湘南台~慶應大学SFC(湘南藤沢キャンパス)間に単線を敷き、途中駅を一つ設ける構想です。現時点で事業化のメドは立っておらず、開業予定時期も決まっていません。

相鉄いずみ野線延伸の概要

相鉄いずみ野線は平塚まで延伸される計画があり、実際、相鉄は平塚までの免許も取得しています。当初の計画では湘南台駅から茅ヶ崎市北部を通過し平塚駅へと向かう予定でした。

その後、JR相模線倉見駅に東海道新幹線の新駅(相模新駅)を建設する計画が浮上し、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)ができたこともあり、湘南台~慶應SFC~倉見~平塚というルートが有力となりました。

このうち、事業化が計画されているのは湘南台~倉見間で、さらに湘南台~慶應SFC間を「先行区間」と位置づけて検討を進めています。

相鉄いずみ野線延伸
画像:国土地理院地図を改変


 

湘南台~慶應SFC間については、地元自治体や相鉄、慶應大学による「いずみ野線延伸の実現に向けた検討会」が、2010年度から調査を開始して、2012年6月11日に「とりまとめ」を発表しています。

それによりますと、総延長は3.3kmで、単線鉄道を敷設し、途中1駅を設置。オフピーク時に毎時3本、ピーク時に5本を運転するとしています。所要時間は5分で、相鉄・JR東急直通線を経由して慶應SFCから渋谷まで56分としました。

延長区間の経路は、湘南台駅から高倉遠藤線の地下を通り、藤沢厚木線(県道43号)の交点付近(イトーヨーカ堂付近)に途中駅(A駅)を設置。慶應大学の入口付近に終点(B駅)を設けるとしています。その先には車両基地を設けます。ほぼ全線が地下ですが、慶應大学駅付近は高架となります。


 

1日当たり利用者数は約25,800人、概算建設費は約436億円と試算されました。事業スキームは都市鉄道利便増進事業を用いた上下分離で、鉄道施設を第三セクターが保有し、相模鉄道が運行事業者となります。

2016年の答申時の検討では、概算事業費400億円、費用便益比0.4~0.3、収支採算性は発散という結果でした。

沿線自治体は2017年に慶應大、相鉄などによる「いずみ野線延伸検討協議会」を結成し、事業化へ向けた協議を開始しています。その後の検討で、総事業費は600億円程度に膨らむことが、藤沢市で報告されています。

交通政策審議会の答申では、需要の創出につながる新たなまちづくりの取組を進めることや、事業性について関係者による十分な検討が求められました。そのため、藤沢市では、新たなまちづくりとして、慶應大学周辺での土地区画整理事業などの実施を検討しています。

現時点で事業化のメドは立っておらず、開業予定時期は明らかではありません。

相鉄いずみ野線延伸の沿革

1985年の運輸政策審議会答申第7号で、それまでいずみ野止まりだった相鉄いずみ野線の湘南台までの延伸が盛り込まれ、平塚までの延伸も検討することになりました。

答申に従う形で、1990年にいずみ野~いずみ中央間が開業、1999年にいずみ中央-湘南台間が開業しています。続く2000年の第18号答申では、湘南台から相模線方面への延伸が「今後整備について検討すべき路線」と位置づけられました。

2004年には、神奈川県などが「いずみ野線延伸検討部会」を設置。相模線倉見駅に新幹線駅を誘致し周辺を開発する「ツインシティ」構想にあわせ、いずみ野線を倉見まで延伸しようという計画です。2007年3月に「とりまとめ」が公表されました。


 

それによりますと、湘南台~ツインシティ(倉見)間の8kmに、途中3駅を設置します。そのうち1駅が慶應大学駅で、湘南台~慶應大学駅間に1駅、慶應大学駅~ツインシティ駅間に1駅をそれぞれ設けます。湘南台~ツインシティ間の所要時間は、鉄道で約12分とされました。

しかし、事業採算性に難があることがわかり、2010年に「いずみ野線延伸の実現に向けた検討会」を設立し、第一期として慶應義塾大学SFC付近までの区間に限り、検討をしなおしました。その検討結果「とりまとめ」が2012年に公表され、事業採算性を確保できるという結論を得ています。

2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」では、湘南台~倉見間の延伸が「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として答申されました。

2017年には、沿線自治体と慶應大、相鉄などによる「いずみ野線延伸検討協議会」が結成されています。

相鉄いずみ野線延伸のデータ

相鉄いずみ野線延伸データ
営業構想事業者 相模鉄道電鉄
整備構想事業者 未定
路線名 未定
区間・駅 湘南台-慶應大学(慶應SFC)
距離 3.3km
想定利用者数 25,800人/日
総事業費 436億円
費用便益比
累積資金収支黒字転換年
種別 未定
種類 普通鉄道
軌間 1067mm
電化方式 直流1,500V
単線・複線 単線
開業予定時期 未定
備考 都市鉄道利便増進事業

※データはおもに『いずみ野線延伸の実現に向けた検討会とりまとめ』(2012)より。

相鉄いずみ野線延伸の今後の見通し

相鉄いずみ野線の延伸は、2012年の「とりまとめ」により、実現への期待が高まりました。ただ、答申198号の検討結果によれば、費用便益比は0.4程度と低く、「事業性に課題」「まちづくりや広域交通の拠点整備の取組」などを求められました。

これを受け、藤沢市では終端駅周辺のまちづくり計画などを進めて、事業性を高める動きをみせています。ただ、その後の市議会や都市計画審議会の議事録を見ていると、延伸区間は採算面で難があるようで、一筋縄ではいかない様子もみてとれます。

慶應大学という有力大学の通学需要が見込めるというのが、いずみ野線延伸の強みで、拠り所です。しかし、少子化が急激に進むなか、慶應といえど将来的にキャンパスを維持できるのかという不安を抱く関係者もいるようです。

一方で、藤沢市長は、いずみ野線延伸に「不退転の決意」で望むと述べていて、やる気はあるようです。

仮に相鉄いずみ野線が慶應SFCまで開業したら、その列車はJR埼京線や東急東横線、目黒線に直通していくでしょう。となると、慶應SFC~日吉~三田という直通列車が実現する可能性は高く、慶應大学にはメリットの大きい路線となりそうです。

しかし、現実には、事業着手や開業時期は見通せないというのが現状でしょうか。