山陰新幹線

新大阪~鳥取~松江~新下関

山陰新幹線は、大阪市から鳥取県鳥取市、島根県松江市を経て、山口県下関市に至る新幹線です。全国新幹線鉄道整備法における基本計画路線と位置づけられています。

詳細なルートは未決定で、着工の予定はいまのところなく、開業予定時期も未定です。

山陰新幹線の概要

山陰新幹線は、大阪から鳥取県、島根県を経由して山口県に至る新幹線の基本計画路線です。おおざっぱなルートとしては、新大阪駅から福知山線・山陰本線に沿う形で新下関駅に至ります。

1973年に「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」に盛り込まれました。しかし、現在に至るまで建設へ向けた動きはなく、具体的なルートや途中駅などは一切未定です。

建設する場合、新大阪駅から福知山市、豊岡市、鳥取市、倉吉市、米子市、松江市、出雲市、大田市、江津市、浜田市、益田市、萩市、長門市を経由して新下関駅に至り、山陽新幹線と合流する形になるでしょう。

山陰新幹線
画像:山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議ウェブサイトより

山陽新幹線の新下関駅は2面3線ですが、将来的に1線増設できる構造になっており、山陰新幹線との接続が考慮されています。ただ、山陰新幹線の建設準備として目にするものはこの程度で、現時点ではまったくの構想段階にすぎません。

3段階建設案

沿線自治体では、山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議を結成して建設運動を進めています。2018年2月に行われた同会議による「山陰新幹線の早期実現を求める松江大会」資料(京都大学藤井聡教授作成)によりますと、山陰新幹線と伯備新幹線(中国横断新幹線)の整備を3段階で目指すとしています。

第1段階として、北陸新幹線・大阪~東小浜間を「山陰新幹線との共用区間」とみなし整備します。第2段階として、山陰新幹線の東小浜~鳥取~米子間と、伯備新幹線(中国横断新幹線)の岡山~米子~松江~出雲間を整備します。第3期として残りの区間(出雲市~下関市)を整備するとしています。

また、区間によっては単線整備や、山形新幹線のようにミニ新幹線で整備したうえで、フル規格化を目指すという方式も検討するとしています。

藤井氏の『山陰新幹線の意義とプロセス』(2019年)によりますと、の「北陸新幹線共用方式」で整備した場合、京都~西舞鶴が36分、新大阪~西舞鶴が59分、京都~豊岡が63分、新大阪~豊岡が85分、京都~鳥取が63分、新大阪~鳥取が82分、新大阪~松江が131分になるとしています。

山陰新幹線の第1段階の整備は、北陸新幹線として実現の見通しが立っています。したがって、今後の建設運動の焦点になるのは第2段階の「小浜~鳥取~米子」です。

藤井氏の試算によれば、新大阪~鳥取間の建設費は全線フル規格で約9000億円、単線で約6900億円。新大阪~米子間は複線で約1兆6000億円、単線で約1兆1800億円です。

山陰新幹線
画像:『「⼭陰新幹線」の意義と実現プロセス』(藤井聡、2019)より


 

山陰新幹線の沿革

1970年の全国新幹線整備法制定後、1973年11月15 日に「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」に山陰新幹線が盛り込まれました。いわゆる「基本計画路線」の一つです。

ただ、その後建設に向けた具体的な動きはほとんどありませんでした。2010年代になり、整備新幹線の完成が視野に入ってくると、ようやく沿線自治体に整備新幹線への格上げを狙った動きがみられはじめます。2013年には沿線自治体で構成する山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議が発足。新幹線整備へ向けての調査を実施するなど、建設運動を開始しました。

その後は、毎年会合を実施したり、陳情をおこなっていますが、建設へ向けた具体的な進捗はありません。


 

山陰新幹線のデータ

山陰新幹線データ
営業構想事業者 JR西日本
整備構想事業者 鉄道・運輸機構
路線名 山陰新幹線
区間・駅 大阪市~鳥取市~松江市~下関市
距離 約550km
想定輸送密度
総事業費
費用便益比
累積資金収支黒字転換年
種別 第一種鉄道事業
種類 新幹線鉄道
軌間 1,435mm
電化方式 交流25,000V
単線・複線 未定
開業予定時期 未定
備考 全国新幹線整備法

山陰新幹線の今後の見通し

山陰新幹線の総延長は約550km。新幹線の基本計画路線では、羽越新幹線に次ぐ長さです。ただ、羽越新幹線が上越・北陸新幹線との共用区間が部分開業しているのと比べて、山陰新幹線の開業区間はゼロ。したがって、未開業の新幹線基本計画路線として、山陰新幹線は最長距離となります。

推進市町村会議では、建設費がかかりすぎる大阪近郊を北陸新幹線と共用することで建設せずに済ませ、小浜市付近から舞鶴市、豊岡市、鳥取市へと向かうルートをたどることを想定。単線区間を容認し、ミニ新幹線も活用するという現実策を提案しています。

また、米子・松江エリアでは、東小浜ルートは迂遠です。そのため、山陰新幹線よりは中国横断新幹線(伯備新幹線)の誘致に力を入れることになるでしょう。したがって、山陰新幹線を本当に作るとしても、まずは東小浜~鳥取間となります。

東小浜~鳥取に限っても、全線フル規格で作るとなると1兆円規模の建設費が見込まれます。一方、費用を節約してミニ新幹線にしても速度向上効果は限られます。どちらも費用対効果が悪そうで、効果的に整備する方法が思い浮かばず、事業着手は当面難しいというほかありません。